平成12年度泌尿器科学卒業試験
1)次の文章で
正しくないものを3つ選べ(3). 
 (1) 移植腎でない限り,骨盤内に腎臓が存在することはない.
 (2) 下大静脈)後尿管は,通常,左尿管に見られる.
 (3) 馬蹄腎の左右腎の長軸の延長線は,腎の下方にて交差する.
 (4) 完全重複尿管症例に膀胱尿管逆流症が発生する場合,通常下位腎所属の尿管に発生する.
 (5) 完全重複尿管症例においては,下位腎所属の尿管は高位腎所属尿管よりも内尿道口に近い部位に開口する.
2) 両側水腎症を来たす原因を3つ選べ(3).
 (1) 特発性後腹膜線維化症       (2) 精索静脈瘤       (3) 直腸癌            (4) 腹部大動脈瘤           (5) 腎細胞癌
3)発熱をきたすのはどれか(2)。
 (1) 急性腎盂腎炎           (2) 急性膀胱炎       (3) 亀頭包皮炎          (4) 急性前立腺炎           (5) 精巣上体(副睾丸)炎
a)1,2,3    b)1,2,5    c)1,4,5     d)2,3,4    e)3,4,5
4)尿の細菌学的検査について誤っているのはどれか(2)。
 (1) 乳幼児では膀胱穿刺により採尿することがある。
 (2) 男性では中間尿を採尿する。
 (3) 女性では中間尿または導尿により採尿する。
 (4) 一般細菌尿は新鮮尿を用いる。
 (5) 結核菌培養には蓄尿した尿を用いる。
5)次の文章で間違っているものを3つ選べ(3).
 (1) 膀胱鏡検査では尿道炎を起こす危険性が高い.
 (2) 排池性尿路造影法での排尿後立位像で,膀胱尿管逆流を診断できる.
 (3) 逆行性腎盂造影では膀胱鏡が必要である.
 (4) 経皮的順行性腎盂造影では超音波診断装置が必要である.
 (5) 排尿時膀胱尿道造影では主に膀胱機能を評価する.
6)血清前立腺特異抗原(PSA)について正しいものを2つ選べ(2).
 (1) 前立腺癌細胞が特異的に産生する.
 (2) PSAは蛋白分解酵素の一種であり,血清中ではその阻害物質との結合型として存在するものが多い.
 (3) 急性前立腺炎では高値を示すことはない.
 (4) 前立腺肥大症でも高値を示す場合がある.
 (5) 前立腺癌細胞内のPSAは一般的に高分化癌に比べ未分化癌においては高度に発現する.
7)次の文章で正しいものを3つ選べ(3).
 (1) 喫煙者には膀胱癌の発生頻度が高い.
 (2) BCGは膀胱上皮内癌の治療薬として膀胱内注入療法に用いられる.
 (3) 尿路上皮癌は女性よりも男性に発生頻度が高く,また,その主訴は無症候性血尿が多い.
 (4) 表在性膀胱癌を内視鏡的に治療することは再発頻度が高く,好ましい治療法ではない.
 (5) 腎盂癌では下部尿管を摘除することはない.
8)先天性副腎皮質ステロイド合成酵素欠損による副腎過形成のうち,最も多い原因を1つ選べ(2).
 (1) 21-hydroxylase障害             (2) 11b-hydroxylase障害
 (3) 3b-hydroxysteroid dehydrogenase障害     (4) 17 a-hydroxylase障害
9)尿路感染症について正しくないものを3つ選べ(3).
 (1) 尿路感染症の感染経路としては上行感染よりも血行感染が多い.
 (2) STD(性行為感染症)としての尿道炎の起炎菌として淋菌やクラミジアがあるが,これらの混合感染が多い.
 (3) 女性に多く見られる単純性,急性,細菌性膀胱炎では通常発熱は認められない.
 (4) 単純性急性細菌性腎孟腎炎では,午前中は平熱であるが午後に高熱を認める場合が多い.
 (5) 単純性尿路感染症とは尿路結石に感染を伴った場合である.
 (6) メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)はヒトの常在菌ではないので,医療者より患者に感染させることは  ない.
10)男性不妊と関係が深いものを2つ選べ(2).
 (1) 精素静脈瘤            (2) 流行性耳下腺炎      (3) 乳糜尿症          (4) 水腎症              (5) 膀胱尿管逆流症                     
11)次のうち正しい文章を3つ選べ(3).
 (1) 骨盤底筋群の弛緩は腹圧性尿失禁の主な原因となる.
 (2) 脳血管障害では反射性尿失禁が多い.
 (3) 笑った時の尿失禁は切迫性尿失禁である.
 (4) 前立腺肥大症では溢流性尿失禁となることがある.
 (5) 痴呆症例での尿失禁は機能性尿失禁であることが多い.
12)咳やくしやみをしたり、運動したりすると尿がもれる失禁タイプはどれか(2).
 a)切迫性尿失禁         b)溢流性尿失禁
 c)腹圧性尿失禁         d)機能性尿失禁
 e)反射性尿失禁
13)尿路結石の治療について誤ったものの組み合わせを選べ(3).
 1) 尿路結石の摘出のために現在最も広く行われている治療は,体外衝撃波結石破砕術である.
 2) 体外衝撃波結石破砕術にて摘出不可能な場合は,観血的(開腹)手術により摘出する.
 3) サンゴ状結石などの大きな腎結石は,体外衝撃波結石破砕術は適応とならないので,最初から経皮的内視鏡  下腎結石摘出術を行う.
 4) シスチン結石や尿酸結石は薬物治療にてある程度,溶解治療や予防が可能である.
 5) 尿路感染を合併する尿路結石は,まず尿路感染の治療を行い,次いで結石摘出を考慮する.
   a)1、2    b)2、3    c)2、4    d)3、4    e)1、5
14)前立腺肥大症について正しいものを3つ選べ(3).
 (1) 血中前立腺特異抗原は前立腺癌ほどではないが上昇する.
 (2) 経尿道的前立腺切除術を行うことがある.
 (3) 恥骨上前立腺摘除術を行うことがある.
 (4) 一般に前立腺全摘除術を行う.
 (5) 将来前立腺癌になりやすい.前癌状態の一種と考えてよい.
15)尿路性器腫瘍で誤っているものを1つ選べ(2).
 (1) 腎細胞癌は腺癌である.
 (2) 陰茎癌は扁平上皮癌である.
 (3) 尿管癌は移行上皮癌である.
 (4) 精巣腫瘍はセミノーマが多い.
 (5) 膀胱腫瘍は腺癌である.
16)精巣腫瘍について正しいのはどれか(2).
 (1) 卵黄嚢腫瘍は小児に多い。         (2) 悪性リンパ腫は高齢者に多い。
 (3) 胎児性癌では血清CEAが増加する。     (4) 奇形瞳は放射線感受性が高い。
 (5) 転移巣があっても高位精巣切除術を行う。
   a)1,2,3    b)1,2,5   c)1,4,5    d)2,3,4    e)3,4,5
17)前立腺癌について正しいものを1つ選べ(2).
  (1) 前立腺特異抗原は診断に役立たない.
 (2) 確定診断のための針生検は禁忌である.
  (3) 骨に転移することはまれである.
  (4) 骨に転移した場合骨形成性となることが多い.
  (5) 前立腺触診でstony hardであれば、前立腺癌の可能性は少ない.
18)前立腺癌の治療について正しいものはどれか(3).
 (1) 放射線療法は放射線感受性が低いため前立腺癌には適応にならない。
 (2) 根治的前立腺摘除術は前立腺と精巣を摘出する術式である。
 (3) 化学療法は進行前立腺癌に対し広く行われている。
 (4) 内分泌療法の副作用に血栓症がある。
  a)1,2,3      b)1,2      c)2,3     d)4のみ      e)すべて
19)左右の腎機能を区別して検査できるのはどれか(3).
(1)IVU (2)レノグラム (3)PSP排泄試験 (4)尿濃縮試験 (5)インジゴカルミン排泄試験
 a. (1), (2), (3)  b. (1), (2), (5) c. (1), (4), (5) d. (2), (3), (4) e. (3), (4), (5)
20)原発性アルドステロン症について下記の設問に答えよ(6).
 A)本症の 臨床症状を3つ記せ。
 1)                     2)                    
 3)                    
 B) 本症に特徴的な生化学的検査所見を3つ記せ。
 1)                     2)                    
 3)                    
21)尿検査について正しいのはどれか(3).
 (1)正常人尿のpHは8以上である。        (2)正常人尿比重は15℃で、1.015〜1.022である。
 (3)尿沈査の白血球数は強拡大(400倍)で算定する。  (4)尿酸塩結晶は酸を加えると溶ける。
 (5)扁平上皮細胞は正常尿では見られない。
 a. (1), (2), (4) b. (1), (3), (5) c. (2), (3) d. (3)のみ e. (1), (2), (3), (4)
22)無尿と尿閉の鑑別に有用な症状はどれか(3)
 (1)腸蠕動が亢進している。 (2)少量の尿失禁がある。 (3)肉眼的血尿がある。
 (4)下腹部が膨隆している。 (5)間欠的に血圧が上昇する。
 a. (1), (2)  b. (1), (3), (4)   c. (2), (3)   d. (2), (4)   e. (3), (4), (5)
23)精巣性女性化症(testicular feminizing syndrome)に関して、以下の文章で正しいものを( )内から選び、その語句を○印でかこめ(5).
  性腺は(1. 精巣、2. 卵巣)
  内性器は(1. 男性型、2. 女性型)
  外陰部は(1. 男性型、2. 女性型)
  身体的特徴は(1. 男性型、2. 女性型)
  本症の原因は(1. アンドロゲンの分泌減少、2. エストロゲンの分泌過剰、
                      3. アンドロゲン受容体の異常、4. エストロゲン受容体の異常)
24)腎細胞癌について正しい組み合わせはどれか(3)。
 (1)腎細胞癌の三大主徴は血尿、発熱、背部痛である。
 (2)腎細胞癌の血管造影像は、血管新生像、腎動静脈瘤および腫瘍の濃染が特徴である。
 (3)腎細胞癌には、発熱、高カルシウム血症、高血圧、多血症などのparaneoplastic syndromeを合併する症  例がある。
 (4)腎細胞癌を治癒に導く唯一の治療法は外科的摘除であり、腫瘍の下大静脈進展例にも積極的に手術を行う。
 (5)遠隔転移を有する進行腎細胞癌にインターフェロンなどの免疫療法が試みられているが、奏功率は15%  に過ぎない。
  a. (1), (2), (4)  b. (1), (3), (5)  c. (2), (3), (4)  d. (2), (4)  e. (2), (3), (4), (5)
25)前立腺癌について正しい組み合わせはどれか(3)。
 (1)血中前立腺特異抗原(PSA)値の上昇、直腸内前立腺触診による石様な硬結の触知、あるいは前立腺エコー  による低エコー域は前立腺癌を疑う所見である。
 (2)前立腺癌の頻度には人種差があり、アメリカ黒人に多く、日本人などのアジア民族には少ない。
 (3)肺、肝、リンパ節は前立腺癌遠隔転移巣の好発部位である。
 (4)前立腺癌はホルモン感受性であり、抗男性ホルモン療法が有効である。
 (5)進行期前立腺癌への有効な治療法はなく、たとえ遠隔転移が存在しても積極的に前立腺全摘除術を試みる。
  a. (1), (2), (4)  b. (1), (3), (5)  c. (2), (3), (4)  d. (2), (4)  e. (2), (3), (4), (5)
26)膀胱癌について正しい組み合わせに○印を付せ(3)。
 (1) 膀胱癌は約50%が移行上皮癌で、次いで扁平上皮癌、腺癌の順に多い。
 (2) 膀胱癌の好発部位は膀胱三角部から尿管口付近の膀胱底部で、膀胱頂部に発生する腫瘍は尿膜管腫瘍を疑う。
 (3) 無症候性肉眼的血尿は膀胱癌を示唆する重要な所見であり、まず膀胱鏡検査を施行する。
 (4) 膀胱上皮内癌は細胞接着性が弱く、尿細胞が陽性であることが多い。
 (5) 表在性膀胱癌は経尿道的腫瘍切除で膀胱温存も可能であるが、膀胱全摘および尿路変更術が標準的治療法である。 
  a. (1), (2), (4)  b. (1), (3), (5)  c. (2), (3), (4)  d. (2), (4)  e. (2), (3), (4), (5)
27)尿路上皮腫瘍の病因として正しい組み合わせに○印を付せ(3)。
 (1) アニリン色素工場と関連した膀胱癌の原因物質として、トリプトファン代謝産物が同定された。
 (2) 尿路結石や長期カテーテル留置などの慢性刺激によって扁平上皮癌の発生頻度が増加する。
 (3) サイクロフォスファミドの代謝産物であるアロクレインは尿路上皮に対する発癌性がある。
 (4) 尿路上皮癌の遺伝子変化として、9qの欠失、ras遺伝子の変異あるいはp53 遺伝子の変異が重要である。
 (5) フェナセチンの長期投与で腎盂腫瘍の頻度が増加する。  
  a. (1), (2), (4)   b. (1), (3), (5)  c. (2), (3), (4)  d. (2), (4) e. (2), (3), (4), (5)
28)精巣腫瘍について下記の問いに答えよ(2)。
 代表的な腫瘍マーカー(2つ)。1)             2)           
29)腎機能障害のある場合、避けるべき薬剤はどれか(3)。
 (1)アンフォテリシンB (2)アミノベンジルペニシリン (3)ゲンタマイシン (4)カナマイシン 
  a. (1), (3), (4) b. (1), (2) c. (2), (3) d. (2)のみ e. (1), (2), (3), (4)
30)無症候性肉眼的血尿に対する最も正しい方針の組合せはどれか(3)。
 (1) 安静と止血剤投与によって貧血の増悪を防止する。    (2) 血尿がおさまってから精査を進める。
 (3) まず全身的な出血傾向の有無を検査する。        (4) 血尿が高度のうちに膀胱鏡検査を行う。
 (5) 上記のいずれでもない。
  a. (1), (2) b.(2), (3) c. (1), (3), d. (3), (4) e. (5)
31)小児にみられる疾患について正しいのはどれか(3)。
 (1)停留精巣は生下時発見次第に固定術を行う。
 (2)水腎症は反対側が正常なら原則として腎摘除術を行う。
 (3)ウイルムス腫瘍ではVMAが上昇する。
 (4)精巣捻転症は直ちに整復術が必要である。
  a. (1), (3), (4) b. (1), (2) c. (2), (3) d. (4)のみ e. (1), (2), (3), (4)
32)抗生物質と副作用との組み合わせで正しいのはどれか(3).
 (1)ニューキノロン系抗菌剤 ---- 痙攣    (2)クロラムフェニコール -----  日光過敏症
 (3)ゲンタマイシン ---------- 腎障害   (4)セファロスポリン --------  聴神経障害
 (5)テトラサイクリン --------  歯牙の黄染
 a. (1), (2), (4) b. (1), (3), (5) c. (1), (4), (5)  d. (2), (3), (4) e. (3), (4), (5)
33)4歳女児、生後4ケ月で39℃以上の発熱のエピソードあり。近医で上気道炎と診断、治療されていた。同様な事がこれまで数回繰り返されている。今回、前日よりの38.5℃の発熱にて来院した。腹部超音波検査で軽度の右水腎症を認める。尿所見:蛋白(土)糖(-)、尿沈渣にて赤血球10-20/1視野、白血球20-30/1視野を認める。血液所見:赤血球415万、白血球12,000、血清生化学所見:尿素窒素18mg/dl、クレアチニン0.9mg/dl、CRP8.0mg/dl(正常0.3>)。診断確定に必要な検査はどれか(3)。
 (1) 腹部単純撮影             (2) 腹部造影CT
 (3) 排尿時膀胱尿道造影          (4) 膀胱部超音波検査
 (5) 膀胱鏡検査
34)30歳の男性。陰裏内容の腫大に気付き来院した。陰嚢の発赤や透光性はない。まず行うべきことはどれか(3)。
 (1) 陰嚢部の超音波検査          (2) 精液の検査
 (3) 陰嚢の穿刺              (4) 陰嚢の切開・ドレナージ
 (5) 精巣の生検
35)66歳男性。排尿困難を訴え受診した。直腸診で前立腺の右側に硬結を触れる。次に行う検査として診断に有用なものの組合せはどれか(3)。
 (1) 前立腺特異抗原(PSA)の測定   (2) 経直腸的前立腺超音波検査     (3) 尿細胞診       (4) 尿流動態検査          (5) 膀胱鏡
   a. (1), (2 )     b. (1), (5)      c. (2), (3 )     d. (3), (4)     e. (4), (5 )

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