僥倖と言うべきかむしろ奇跡と言うべきか、二年前、平凡社から
『科学と社会のインターフェイス』(自然叢書24)
を上梓することができた。著書出版のチャンスを与えて下さったうえ、なかなか原稿を
まとめきれない筆者を叱咤激励して刊行に漕ぎ着けて下さった担当編集者には本当に感
謝している。
ところで、人間というのは欲が深いもので、しばらくすると、もう一冊本を出せな
いだろうかと考えるようになった。前記著作刊行後に書いた原稿を中心に、これまで書
きためてきた原稿を編集すれば、少なくとも分量的には一冊の書物ができるというわけ
である。
そこで、しろうとの無鉄砲というか厚かましさで、『科学を読む/時代を読む』な
どと仮の書名を付けて、ワープロで整理・編集してみた。科学史上の具体例にそくして
科学と社会の相互作用を論じた章、科学観の変容と科学社会学の展開を論じた章、科学
論の観点から大学問題を論じた章などからなり、最後にここ十年の科学技術の動向をモ
ニターした論稿を配してみた。もちろん、書名や構成にこだわっているわけではない。
もし、この企画が何らかのかたちで日の目を見ることができれば、大学における「
科学史」「自然科学概論」「科学と社会」などの講義のテキストないし参考書としても
活用していただけるのではないかと考えている。しかし、前著の場合にあったような奇
跡的な出会いにめぐまれず、このワープロ原稿は未だに筐底に眠ったままになっている。
もう一つささやかな企画ないしは夢がある。これまで依頼されるままに書いてきた
書評・紹介原稿がかなりの量になった。専門の科学史・科学論にかかわるものが多いが
それ以外のものもある。これにこれまで手がけてきた翻訳書に付した「訳者あとがき」
などを加えて、『わたしのブックレビュー』と題してワープロで整理してみた。多少の
出費は覚悟で、小さな本を作り、人生の節目を記念して、お世話になった方々にお贈り
したいなどと考えているのだが、文字通り「夢」に終わってしまいそうである。