教授
櫻井直樹

助教
中川直樹

aaaaaaaaaaaaaaaaaa櫻 井 直 樹


 1950年8月19日(水)、大阪府河内市(現東大阪市)生まれ、寅年、しし座、AO型。中学1年の時に、「友の会」を作った羽仁もと子の創設した東京ひばりが丘にある自由学園に入学。東京出身者のグループからの「価値観の違いによる」いじめに会い、関西地区出身者で団結したが、あえなく挫折、

 中学2年の夏休みに退学した。以来東京アレルギーになってしまった。中学は伊丹市立西中学に編入。最初の3ヶ月は、私の口から出る東京弁に、皆から大笑いされたが、いじめに会わず、無事卒業。転校後3ヶ月でしっかり関西弁に戻った。
 高校はカトリック系イエズス会の六甲高校に編入。編入したときは、高1の数学がすでに終わっていた。それでいまだに、数Ⅰに劣等感がある。
 大学は東京大学の入試が大学紛争で中止された1969年、大阪大学を受けるつもりであったが、大阪市立大学の物理学科を志望して受験。発表当日、自分の名前の下に「生物」と書いてある意味が分からず、同姓同名かと思ったが、受験番号が同じなので、どうやら第3志望名に「生物」と書いたらしいと思ったが、書いた記憶はなかった。物理学科に入れなかったが、もう一年受験勉強するのはコリゴリだったので、即入学を決定。父親(元大阪教育大学物理学教授)に報告すると、「そうか・・。」、としばらく下を向いていたが、「生物学はこれからの学問だから20年後には発展するだろう。」と私の決断を認めてくれた。最初の1年は大学が封鎖されていたので、講義がなく、それで「教養」のない大学生活を送った。それでも毎日大学に通い、「討論会」、「デモ」に参加する一方で、マージャンとパチンコに明け暮れた。たくさんの授業料を払ってこれらの遊びは卒業した。
 大学4年生の時に増田研究室に入った。植物を引っ張ってその性質を調べている面白い人が居るとの情報が理由。山本良一先生であった。不況の折、学部を卒業するときには元から大学院修士を目指したが、博士課程に行こうとした時、歳を重ねるということは、自分の可能性が狭まっていくことだと実感した。修士ではレタス下胚軸のジベレリンによる伸長に及ぼすデヒドロコニフェリルアルコールの作用。博士に入る直前、アメリカからネビンス教授が6ヶ月増田研に来た。そこで博士課程に入って、テーマを細胞壁に変えた。博士論文の題目は「オーキシンによる細胞壁のゆるみに関する生理学的生化学的研究」。
 1978年博士課程修了後、もちろんすぐには研究職がないので、学術振興会のポスドクを2年勤めた。それでも職がないので、19801月、アイオワ州立大学のネビンス先生のところにポスドクで行った。明日アメリカに出発という日に、大阪市大の増田研究室に広島大学から倉石先生が来た。増田先生とお話をされた後、流し場で最後の洗いものをしている私に挨拶をして出ていかれた。その6ヵ月後に広島大学に採用が決まった。アメリカで2年研究して日本に職がなければ、日本に帰ってギターの先生か、高校の先生になろうと思っていた。しかし運良く渡米して6ヶ月で広島大学に採用が決まった。向こうにいた、同じ境遇のポスドクの人たちに送別会をしてもらった。自分だけが日本に職を得て帰ることを本当に申し訳ないと思う気持ちで一杯だった。


 広島大学総合科学部に助手として1980年8月1日に採用。1989年10月助教授、1993年4月教授。教授になる直前の1993年2月2日に倉石先生が肝炎の治療での漢方薬とインターフェロンの混用で間質性肺炎となり急逝された。この原因は先生の死後2年経って新聞で厚生省が発表した。人の運命の予測の難しさを知った。その年の7月の人間ドックで、私の十二指腸のあたりに大きな腫瘍が見つかった。直径2センチ、「もし悪性なら助からない。あと6ヶ月の命」と思ったら、目の前が真っ暗になった。しかしたった3日後に、「これまで好きなだけ研究をし、人生プラスもあったがマイナスもあり、全部足せばプラスマイナスゼロだろう。運良くこの検査の3ヶ月前に、大きな保険にも入ったし、自分が死んでも、家族は何とかしていけるだろう。」と納得してしまった。自分のあきらめと悟りの早さに心底びっくりした。2週間後、超音波診断で腫瘍の中に水があることが分かり、腫瘍が良性であると判定された。5年後に腫瘍は消えていた。倉石先生の死、教授に昇任したプレッシャー。病は気から来ます。
 1991年から1年間、その頃はカリフォルニア大学デービス分校に移っていたネビンス教授の下で研究を行った。デービスの町の半径100キロ以内では、世界の料理用トマトの25%が生産されているので、ネビンス教授の学部ではトマトをしなければならないのに、ネビンス教授は全くトマトを材料にしていなかったので、いじめられていた(こういうことは世界中どこでもあります)。そこで、ネビンス教授は私に「応力緩和法でトマトのやわらかさを評価できないか?」と聞かれたので、できますよといってその研究を始めた。研究成果をPlant Physiologyに発表して、日本に帰ったある日、母から「アメリカで何をしてきたのか?」と聞かれた。トマトを切って、その断面に針を刺 し、応力緩和法でトマトがどのように軟らかくなるかを研究した、というと、「なんというしょうもない研究をしたのか!」といわれた。つづけて「そんな世界中の毎日トマトを切っているお母さんが知っていることを難しそうな言葉で説明するのは、研究のための研究、つまり税金の無駄だ。」と切り捨てられた。むちゃくちゃ腹が立ったが、言われてみればそのとおり、「よし、それならきらずにトマトの硬さが測れる技術を開発しよう。」と固く心に誓った。この後の経緯は研究紹介で。
1978年、アメリカから2年のポスドクを終えた山本先生から習ったビリヤードと高校からのギターが趣味。その他、道具を使ったスポーツは好き、例えば野球、ゴルフ、卓球、テニス、バドミントン、スキー。1994年から初めてバドミントで、肩凝り痛、背中痛が治った。一方、直接体を使うスポーツは苦手、例えばバレーボール、サッカー。新聞を見るときは必ず将棋の欄を見る。40をすぎてから、温泉が身体に効く身体になりました。広島県内のスーパー銭湯はほとんどすべて行ったが、ほとんど全てカルキ臭くてなかなかよい温泉にはめぐり合わない。広島にはもともと本当の温泉がほ とんどない。

大学の講義では以下の科目を担当している。
 教養  - 細胞科学、生物の世界、水の総合科学、生物学実験
 専門  - 植物生理学、環境科学実験C,D
 大学院 - 植物環境評価論

既出文献等一覧1970年以降の論文と総説、著書、国際会議発表、発明・特許)


中 川 直 樹
【学歴】
名古屋大学 農学部 食品工業化学 1987
名古屋大学 博士(含む博士課程後期)課程 農学研究科 生化学制御 1992
博士(農学)


【主な職歴】
理化学研究所 基礎科学特別研究員 (1992/04/01-1993/11/30)
広島大学総合科学部助手 (1993/12/01-)


【現在の専門分野】
植物生理学


【現在の研究課題】
「セルロース合成を栄養源の割り当て (allocation, partitioning) から考える」


 セルロースは植物の細胞壁の主成分であり植物の正常な生育に不可欠であるだけでなく、工業原料(製紙など)としても重要です。また、植物が作り出す大量のセルロースは、地球上の炭素循環においても大きな役割を果たしています。植物は、大量にセルロースを作り出すために、多くの栄養源を消費しています。しかし、植物にとって栄養源の量は限られていますので、すべてをセルロース合成に使用するわけにはいきません。植物には生育条件、環境ストレス、成熟段階、組織などに応じて、栄養源のどの程度をセルロース(細胞に強度を与え成長に必須だが、作るのにエネルギーを大量に消費し、しかも二度と分解されない)のために使うか、またはデンプンなどの貯蔵物質(分解されない限り成長の役には立たないが、栄養欠乏などの厳しい条件に陥った際には、ストレスに耐えるために役立つ)に使うかを決めるしくみがあると推測されています。このことに関しては Haigler (2001) や Delmer (2002) による総説が出版され、注目されています。しかし、そのしくみについてはよくわかっていません。
 我々が単離、分析しているシロイヌナズナの変異体 (css1) は、セルロース合成阻害剤による、根の形態の変化が起きにくいということを指標として見いだされました。さらにその性質を調べると、培地の糖の濃度の変化に対する、生育の感受性が高くなっていました。また、培地の糖、セルロースの割合が減っていました。この変化を引き起こす原因である遺伝子は、ミトコンドリアの遺伝子のイントロン(植物のミトコンドリアには、動物と異なりイントロンがあり、Group II イントロンと呼ばれる)のスプライスと関連のある遺伝子でした。実際に、NAD4という遺伝子 (電子伝達系の複合体Iのサブユニットをコードする) のスプライシングがおきにくくなっていました。ミトコンドリアに起きた異常が、ミトコンドリア外の様々な代謝や遺伝子発現に影響を及ぼすことは、retrograde (逆行) regulation と呼ばれています。今回の結果から、ミトコンドリアのスプライシングの欠損による複合体Iの異常が、retrograde regulation を通じて、基礎的な栄養源に対する応答に影響を与えていること、それによって栄養源のセルロース合成への分配が抑制されることが示されました。このことについては 2004年のシロイヌナズナシンポジウムや 2005 年の植物生理学会で発表し、現在(2005年6月)投稿中です。


【所属学会】
日本植物生理学会 , 日本植物学会 , 日本農芸化学会 , 植物化学調節学会


【研究室所在】
総合科学部 C棟 424号室


【電話番号】
0824-24-6515


【FAX番号】
0824-24-0758


【Eメールアドレス】
naka@hiroshima-u.ac.jp

【発表論文】

Takeda, H., Yoshikawa, T., Li, X.Z., Nakagawa, N., Li, Y.Q. and Sakurai, N.
Molecular Cloning of two exo-beta-glucanses and their in vivo substrates in the cell walls of lily pollen tubes.
Plant Cell Physiology 45[4] 436-444 2004

Takeda, H., Kotake, T., Nakagawa, N., Sakurai, N. and Nevins, D.J.
Expression and function of cell wall-bound cationic peroxidase in Asparagus somatic embryogenesis.
Plant Physiology 131[4] 1765-1774 2003

Nakagawa, N. and Sakurai N.
Cell wall integrity controls
expression of endoxyloglucan transferase in tobacco BY2 cells.
Plant and Cell physiology 42[2] 240-244 2001

Kume, A., Tsuboi, N., Natatani, N., Nakane, K., Sakurai, N., Nakagawa, N. and Sakugawa, H.
Measurement of ethylene emission from Japanese red pine (Pinus densiflora) under field conditions in NOx-polluted areas.
Environmental Pollution 111 389-394 2001

Kotake, T., Nakagawa, N., Takeda, K. and Sakurai N.
Auxin-induced elongation growth and expression of cell wall-bound exo-
and endo-beta-glucanases in barley coleoptiles.
Plant and Cell Physiology 41[11] 1272-1278 2000

Nakagawa, N. and Sakurai N.
Increase in the amount of celAl protein in Tobacco BY-2 cells by a cellulose biosynthesis inhibitor, 2,6-dichloro benzonitrile
Plant and Cell Physiology 39[7] 779-785 1998

Kotake, T., Nakagawa, N., Takeda, K. and Sakurai N.
Purification and Characterization of Wall-bound Exo-1,3-beta-D-Glucanase from Barley(Hordeum vulgare L. )Seedlings
Plant and Cell Physiology 38[2] 194-200 1997

Nakagawa, N., Kamiya, Y. and Imaseki, H.
Nucleotide sequence of an auxin-regulated l -aminocyclopropane -l -carboxylic acid synthase gene from Cucurbita maxima Duch.
Plant Physiology 109[4] 1995

Mori, H., Nakagawa, N, Ono T., Yamagishi, H. and Imaseki, H.
(1993)
Structural characteristics of ACC synthase isozymes and differential expression of their genes.
In Cellular and Molecular Aspects of the Plant Hormone Ethylene, Edited by J. C. Pech. Kluwer Academic Publishers, Dordrecht pp.1-6. (1993)

中川直樹 (1993)
植物ホルモンのシグナル伝達.
組織培養 19(10): 347-351

Nakagawa, N, Mori, H., Yamazaki, K. and Imaseki, H. (1991)
Cloning of a complementary DNA for auxin-induced 1-
aminocyclopropane-1-carboxylate synthase and differential expression of the gene by auxin and wounding.
Plant and Cell Physiology 32: 1153-1163.

Imaseki, H., Nakagawa, N, and Nakajima, N. (1990)
Wound-induced ACC synthase, an Immunochemical comparision of the wound-induced and auxin-induced enzymes.
In Plant Growth Substances 1988, Edited by R.P.Pharis Springer-Verlag, Heidelberg pp.113-121.

Imaseki, H., Nakagawa, N, Nakajima, N., Mori, H. and Yamazaki, K. (1990)
Wound Induction of 1-aminocyclopropane-1-carboxylate synthase and its regulation. Polyamines and Ethylene, Biochemistry, Physiology and Interactions.
American Society of Plant Physiologists pp.180-189.

Imaseki, H., Nakagawa, N and Nakajima, N. (1989)
Auxin- and Wound-induced expression of ACC synthase.
NATO ASI Series, Vol.H35. Cell Separation in Plants. Edited by D.J.Osborne and M.B.Jackson Springer-Verlag, Heidelberg pp.51-59.

Nakagawa, N, Nakajima N. and Imaseki, H. (1988)
Immunochemical difference of wound-induced 1-aminocyclopropane-1-carboxylate synthase from the auxin-induced enzyme.
Plant and Cell Physiology 29: 1255-1259.

Nakajima, N., Nakagawa, N and Imaseki, H. (1988)
Molecular size of wound-induced 1-aminocyclopropane-1-carboxylate synthase from Cucurbita maxima Duch. and change of translatable mRNA of the enzyme after wounding.
Plant and Cell Physiology 29: 989-998.