英語文化論基礎演習T

2010年度(平成22年度)前期

★対象:国際文化学科3年生(平成20年度以前入学生)

★テキスト:なし(授業用のハンドアウト)

★授業の目標:英語教育、英語学習、英語コミュニケーションについて客観的に考えられる視点を養成すること

★授業の内容:

  授業で扱う分野 具体的な内容
第 1 回 英語教育原論 ●英語教育学、第2言語習得論、応用言語学とは何か
●英語教育の目的
●実用論と教養論
●国際語としての英語(話者の分類(母語としての英語、第2言語としての英語、外国語としての英語)、国際補助語としての英語、英語帝国主義、英語化と土着化、世界の諸英語、標準英語、国際コミュニケーションに求められる母国語話者と非母国語話者の姿勢)
第 2 回 英語教育史 ●日本人と外国語(中国語、ポルトガル語、オランダ語)
●日本人と英語(江戸時代、明治時代、大正時代、昭和時代、平成時代、フェートン号事件、英語教育廃止論)
第 3 回 母語習得と第2
言語(外国語)習得
●母語の習得過程(言語取得の基礎条件、喃語期(鳩音、喃語、喃語期後半)、一語期(全体句)、二語期、多語期(電報文)、英文法の習得過程(動詞の過去形の習得過程(過剰一般化)、疑問文の習得過程、否定文の習得過程)、意味の習得過程(過剰拡張、中間レベルの語を最初に習得すること、反意語の習得)、英文法の習得過程)
●第2言語習得過程(形態素の習得順序の研究(Dulay & Burt (1974) のモデル、Krashen & Terrell (1983) のモデル))
●日本人英語学習者の英語習得過程(形態素の習得順序の研究(Shirahata (1988)、教科書による文法項目の提示順と形態素の習得順序の違い))
第 4 回 第2言語(外国語)
習得と脳科学
●脳科学の研究法
●脳の基本構造
●優位半球の大脳皮質における大まかな機能局在(シルヴィウス裂溝、ウェルニッケ野、ブローカ野、角回、縁上回)
●生得的言語習得能力と言語遺伝子(普遍文法(原理、パラメータ)、FOXP2)
●母国語習得と優位半球
●第2言語(外国語)習得と脳
第 5 回 第2言語(外国語)
習得のメカニズム
●言語能力と言語運用
●中間言語
●第2言語知識の表象形態(習得と学習(暗示的知識、明示的知識、インターフェイスの立場、自動化、反インターフェイスの立場)、項目学習と体系学習(再構築)、U字型発達)
●第2言語習得モデル(普遍文法に基づいたモデル(原理とパラメータ、根本的相違仮説、普遍文法の間接利用、不変文法の直接利用)、モニター・モデル(習得・学習仮説、モニター仮説(モニター)、自然順序仮説、インプット仮説(理解可能なインプット、i+1)、情意フィルター仮説)、アウトプット仮説に基づいたモデル(理解可能なアウトプット、仮説検証)、認知的モデル(言語形式への気づき、インテイク)、コネクショニスト・モデル)
●(補足)その他の第2言語習得モデル(言語普遍性における有用性の階層、競合モデル、多次元モデル、文化変容モデル、社会文化理論)
第 6 回 第2言語(外国語)
習得と個人的要因
●第1言語の第2言語習得への影響(行動主義心理学による転移の問題(正の転移、負の転移)、対照分析仮説、誤答分析(errorとmistake)、創造的構築仮説、第1言語の役割の再評価(回避、学習速度、文法の習得順序、過剰産出、学習者による第1言語と第2言語の違いの認識)、中間言語間転移)
●文化変容モデル(社会的距離(結束、支配、結合、囲い込み)、心理的距離(カルチャー・ショック、言語ショック))
●年齢(臨界期仮説、複数臨界期仮説)
●言語適性(学習スタイル、適性処遇交互作用)
●動機づけ(道具的動機づけ、統合的動機づけ)
●不安
●性別(生物的性と社会的性)
●性格(外向性と内向性、リスク・テイキング、場依存と場独立、曖昧性の容認)
第 7 回 英語教授法T ●「教授法」の概念(Anthony (1963) による分類(approach、method、technique)、Richards & Rodgers (1986) による分類(approach、design、procedure)、英語教授法の分類(一般的な分類(言語構造を教えることを中心とした教授法、言語規則の発見学習をさせる教授法、心理学の知見を取り入れた教授法、ニーズ分析の結果を取り入れた教授法、第2言語習得理論の知見を取り入れた教授法、母国語の発達過程を参考にした教授法、言語を使った課題をこなすことを中心とした教授法、その他の教授法)、Long (1991) による分類(focus on forms、focus on meaning、focus on form)、ポスト・メソッド)
●シラバス(文法・構造シラバス、場面シラバス、概念・機能シラバス、手順シラバス、プロセス・シラバス)
●教授法(文法訳読式教授法、直接教授法、オーラル・メソッド(口頭導入)、段階的直接教授法(ベーシック・イングリッシュ)、陸軍特別教育プログラム、オーディオリンガル・メソッド(アメリカ構造主義言語学、行動主義心理学))
第 8 回 英語教授法U ●教授法(全身反応教授法、サイレント・ウェイ、サジェストペディア、(変形)生成文法に基づいた教授法、認知学習理論、コミュニティ・ランゲージ・ラーニング、人間性中心のアプローチ、概念/機能アプローチ(ニーズ分析、敷居レベル、ESP、EGP)、コミュニカティヴ・アプローチ、ナチュラル・アプローチ、聴解アプローチ、ドラマ・メソッド、ジャズ・チャンツ、内容中心教授法(イマージョン・プログラム、化石化)、タスク中心教授法(相互交流仮説、意味交渉))
第 9 回 発音の習得研究 ●母国語における音声発達(知覚誘引効果)
●第2言語(外国語)学習における発音の習得(化石化、マックガーク効果、外国語訛り、母語同一化音声処理(知覚同化モデル)、母語同一化音声処理と年齢、音声処理の個人差)
●音声の学習法の例
●飲酒と食事と発音の関係を調査した研究
第10 回 文字の習得研究 ●母国語における文字の習得過程(音声との関係、後天的学習、文字への関心の芽生え、お絵かきから文字へ)
●文字の処理(二重経路モデル)
●第2言語(外国語)学習における文字の習得(文字体系の違い、鏡文字、不自然な習得過程)
●文字の学習法(4線ノート、つづりの有意味化、色彩の利用、フォニックス、ホール・ワード法)
●子供用の詩における文字の工夫(具象詩)
第11 回 語彙習得研究 ●単語とは何か(何をもって1語とするか(辞書の見出し語、ワード・ファミリー)、英語母国語話者の語彙サイズ、日本人英語学習者の語彙サイズ)
●単語を知っているとはどういうことか(受容語彙と発表語彙、語彙知識)
●語彙習得プロセス(母国語話者の語彙習得プロセス、第2言語(外国語)の語彙習得プロセス、受容語彙と発表語彙の質的相違、すぐ覚えられる単語と覚えられない単語、何回出会えば単語は覚えられるか)
●単語の学習(意図的学習(キーワード法、日本語訳、ワードサーチ、意図的学習の難点)、偶発的学習(未知語の推測練習、語注の活用、辞書活用、文脈からの推測、偶発的学習の難点))
第12 回 記憶
心的表象
●記憶(記憶の種類(宣言的記憶(意味記憶、エピソード記憶)と手続き記憶、メタ記憶、自伝的記憶、フラッシュバルブ記憶)、記憶範囲、注意、文脈効果、スキーマ(スクリプト、ゲシュタルト、プロトタイプモデル)、記憶のモデル(二重貯蔵モデル(感覚登録器(感覚記憶(エコイックメモリー、アイコニックメモリー))、短期貯蔵庫、長期貯蔵庫)、処理水準、作動記憶(音韻ループ、視空間スケッチパッド、中央実行系))、忘却(減衰説、干渉説、検索失敗説、抑圧説))
●心的表象(表層的記憶、命題的テキストベース、状況モデル/メンタル・モデル)
第13 回 リスニング研究
リーディング研究
●リスニング研究(リスニング能力、リスニング・モデル(Levelt (1993) の聴解モデル)、リスニング・プロセス(ボトムアップ処理、トップダウン処理、リスニング方略)、リスニング学習(積極的リスニング、スキーマの活性化、トップダウン処理を意識した学習、ボトムアップ処理の質を高める学習、リスニングの認知プロセスを重視した学習、ディクテーション(部分ディクテーション、絵描写ディクテーション、ディクトグロス)、多聴))
●リーディング研究(リーディング能力、リーディング・モデル(ボトムアップ・モデル(読みの1秒間モデル)、トップダウン・モデル(心理言語学的推測ゲーム)、相互作用モデル(Rumelhart (1977) による相互作用モデル、Stanovich (1980) による相互作用補完モデル、Just and Carpenter (1987) によるリーダー・モデル))、読解方略(優れた読み手の読解方略、ショートサーキット仮説(言語能力閾値))、読解レベル(literal comprehension、inferential comprehension、critical or evaluative comprehension、appreciative comprehension)、リーディング学習(逐語読み、和訳先渡し、直読直解、速読(スキャニング、スキミング、WPM、修正WPM)、スキーマの活性化、精読、多読、情報転移、音読(コーラス・リーディング、バズ・リーディング))、ジャンル固有のリーディング(文学作品のリーディング、マンガのリーディング(形喩や音喩など)))
第14 回 スピーキング研究
ライティング研究
●スピーキング研究(スピーキングの種類(informational speaking、interactional speaking)、スピーキング能力、スピーキング・モデル(Levelt (1993)のモデル)、スピーキング学習(パターン練習、オーラル・プレゼンテーション、オーラル・インタープリテーション、ストーリー・テリング、シャドウイング))
●ライティング研究(ライティングの種類(informational writing、interactional writing、creative writing)、ライティング能力、ライティング・モデル(Hayes & Flower (1980) のモデル、Hayes (1996) のモデル)、ライティング・プロセス、ライティング方略、ライティング学習(制限作文から自由作文への段階的アプローチ、自由英作文アプローチ、パラグラフ・パタン・アプローチ、コミュニカティヴ・ライティング、プロセス・ライティング、要約、日記、対照修辞学、書き写し、和文英訳))
●4技能すべてを考慮に入れたモデル(Levelt (1993) のモデル)
第15 回 コミュニケーション
 能力研究
言語テスト研究
●コミュニケーション能力研究(BICSとCALP、コミュニケーション能力モデルの歴史(Chomsky (1965) などによる言語能力と言語運用、Hymes (1972) によるコミュニケーション能力、Canale & Swain (1980) によるコミュニケーション能力モデル、Canale (1983) によるコミュニケーション能力モデル、Widdowson (1983) によるコミュニケーション対応力モデル、Taylor (1988) によるコミュニケーション実力モデル、Bachman (1990) による言語コミュニケーション力モデル、Bachman & Palmer (1996) による言語力モデル、Celce-Murcia et al (1995) によるコミュニケーション能力モデル、Byram (1997) による異文化間コミュニケーション能力モデル)、ラージCカルチャーとスモールcカルチャー、コミュニケーション方略(回避、言い換え、意識的転移、その他の援助、身振り・手振り)、用法と使用、コミュニケーション・タスク(インフォメーション・ギャップ・タスク、ジグソー・タスク、問題解決タスク、方針決定タスク、意見交換タスク、ロール・プレイ、シミュレーション))
●言語テスト研究(テストの種類(言語適性テスト、診断テスト、クラス分けテスト、到達度テスト、熟達度テスト(クローズ・テスト)、主観テスト、客観テスト、個別項目テスト、統合的テスト、スピード・テスト、パワー・テスト、利害関係の小さいテスト、利害関係の大きいテスト)、テストの条件(妥当性、信頼性、実用性)、構成概念、言語テストの仕組み、波及効果)



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