日本電子製 α400 型 NMR 装置を使用して,実際に NMR
を測定する方法について説明する。
1.試料調製
試料(1〜30 mg)をよく溶ける重水素化溶媒に溶かす。ただし,ポリペプチドを水溶液にして
NMR 測定する場合は,溶媒と交換しやすいプロトンを観測するために,軽水と重水の混合液(1:9 v/v など)に溶解させる場合もある。この試料溶液を
NMR試料管に,底から液面までの高さが
4.0〜4.5 cm になるように移す。これより多くても少なくても,測定時の分解能がよくならないので注意が必要。NMR 試料管として,歪みのほとんどない直径 5
mmΦ×長さ 18 cm のガラス製試料管が市販されている。
2.NMR 室での測定操作
NMR装置
NMR測定室に入ると,窓際に設置されたNMR装置が目に入る。窓際の金属製のタンクが超伝導磁石(SCM) である。断面図でわかるように,タンクには超伝導状態を維持するため,液体ヘリウムと液体窒素が充填されている。
液体ヘリウムは約2ヶ月ごとに,液体窒素は毎週充填する必要がある。ただし,液体窒素の方は,液体窒素自動供給装置によって
毎週決まった時間に自動的に充填が始まるようプログラムされている。自然蒸発するヘリウムガスはヘリウムガス回収装置によって,
低温センターへ自動的に送られて回収・再液化されている。
測定にあたっては,まず,試料溶液の入った NMR
試料管の外面をキムワイプ等でよく拭いて汚れを取り去ったのち,その NMR 試料管を専用のスピニングフォルダーに差し込む。差し込む長さは,専用のゲージで調整する。試料溶液の中心と観測中心を一致させるためである。NMR
試料管の底から2cm のところが,ゲージの中心に来るように合わせる。
スピニングフォルダーをキムワイプ等でよく拭いた後,SCM にセットする。すなわち、SCM上部に、試料管を差し込んだスピニングフォルダーを入れる。
SAMPL 画面
パソコンから制御を行う。モニター画面の左上に SAMPLというアイコンがある。
このアイコンを左クリックすると,SAMPL画面になるので,上から順番に”
slvnt”をクリックして溶媒を選択する。 その下にある”Auto set” をクリックすると、自動的に試料管がSCMの中心に入って回転し、
溶媒中の重水素シグナルを検出してLockがかかり、分解能調整まで進む。
測定条件の設定
次に,測定条件の設定を行う。画面左側上から2番目の アイコンACQUS
をクリックすると,条件設定画面になる。 1H NMR の測定では, EXMOD: NON、MENUF: NON
を選択することで標準のパラメータが設定される。 積算回数(標準:16回)を指定したのち,左下の "AGACM"
をクリックすると,測定が開始される。
画面左側上から3番目の アイコンUPDIS
をクリックすると,積算状況及び残り時間をモニターできる。
測定が完了すると,1D Pro画面が自動的に開く。開かない場合は、画面左側4番目の
アイコンをクリックすると開く。 測定したデータをメニューバーのFile→saveでハードディスクに保存する。
3.データ処理
データ処理は,1D Pro画面で行う。1D Pro画面は、上部に自由誘導減衰(FID) 信号、 下部にフーリエ変換後のNMRスペクトルが表示されている。
画面右下のAutoというアイコンをクリックすると自動でフェーズを補正してくれる。その下のOKをクリックすると、スペクトル画面になる。
レファレンス設定,積分曲線設定,ピークピック設定という手順で処理していく。
あとは,必要なところを拡大して,左上にあるプリンターのアイコンをクリックすれば,スペクトルがプロットアウトされる。
4.測定終了
測定及びデータ処理が完了すれば,SAMPL画面に戻って”Eject”をクリックし、試料管を取り出して,
NMR 測定操作は終了である。