研究テーマ
・研究の概要および目的
我々上野研究室では、分裂酵母(S.pombe)のテロメアに関係するタンパク質の新しい機能の発見を目指しています。分裂酵母は単細胞生物ですが、テロメアも含めて人と共通な部分が数多く見つかっていますので、分裂酵母の研究で得られた情報を人のテロメア研究に生かせる可能性があります。また、分裂酵母の遺伝子の塩基配列の解析はほぼ終了していますし、遺伝子破壊やタンパク質の過剰発現を容易に行えるという実験上のメリットもあります。このような理由から当研究室では、分裂酵母のテロメアについて研究を始めました。
染色体のDNAが紫外線や酸化ストレスなどで損傷すると、老化や癌化を引き起こすことがあります。しかしそれを防止するために細胞にはDNA修復機構が備わっています。最近DNA修復に関係するいくつかの蛋白質がテロメア維持にも関係することが分かってきました。そこで私のグループでは特にDNA修復とテロメア維持の両方に関係する蛋白質の機能解析を精力的に行い、いくつかの新しい事実を発見しました。
テロメアは細胞の寿命や癌と密接に関係していますので、将来的には、分裂酵母のテロメア研究によって得られた知識を利用して、細胞の寿命をコントロールしたり、寿命のない癌細胞に寿命を与える技術の開発を目指しています。
数年前からは、染色体を含む核内動態の研究も始めました。細胞の中では、様々な複合体が動いています。これらの動きが生命現象にどのように寄与するのかは、ほとんど分かっていません。上野研究室では、最新の高解像度顕微鏡を用いて、核内動態のライブ観察とその定量的解析を行い、新しい生命現象の発見を目指しています。
・現在の研究プロジェクト
上野研究室では、分裂酵母を用いて染色体の研究を行い、その成果を、新しいがんの治療や予防法の開発につなげることを目指している。また、染色体に関する画期的な新規生命現象の発見も目指している。
現在は、以下のプロジェクトなどを行っている。
(1)がんの特徴を持たせた酵母を用いたがんの弱点探索
環状染色体を持った分裂酵母の弱点の探索、解析
(2)酵母の研究で見つけたがんの弱点候補についてのヒト細胞を用いた検証
環状染色体を持つ患者由来のヒト培養細胞を用いた解析
(3)一細胞解析によるクロマチン動態の制御機構の解明
セントロメアやテロメア、核膜、核小体の動きに影響を与える因子の解析
(4)染色体の制御に関与する生理活性物質の探索と解析
ブロッコリーの生理活性物質の作用機構の解明
(5)テロメア維持に関与する遺伝子の探索と解析
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