当グループでは、プラズマと流体工学を活用したカーボンニュートラルな革新的エネルギー源の開発を行っています。それぞれについて、研究内容を紹介します。
「地上の太陽」を創る、エンジニアになろう。
~ 広島大学から、世界のエネルギーの常識を塗り替える! ~
いま、世界が最も熱い視線を注いでいる次世代エネルギー、それが「フュージョンエネルギー(核融合エネルギー)」です。海水から燃料を取り出し、二酸化炭素を出さずに、太陽と同じ仕組みで莫大なエネルギーを生み出す。
広島大学では、この夢のエネルギーを「理論」で終わらせず、「現実」にするための2つの実験装置を動かしています。ここは、手を動かし、装置を操り、未来のエネルギーを自らの手で形にする場所です。
1. 広島大学ヘリアック装置(HU-Heliac)
複雑な磁場を、確かな工学で支配する。
広島大学ヘリアック装置は、複雑な三次元構造を持つ磁場によってプラズマを閉じ込める立体磁気軸ステラレータ「ヘリアック」型の実験装置です。
- プロジェクトの狙い トカマク型とは異なる「定常運転」に適した磁場構造を学ぶことで、プラズマ物理の深い理解と、高度な精密機器の制御技術を習得します。
- 工学的学び 三次元的な磁場設計、真空技術、および高精度な計測システム(診断系)の開発を通じて、複雑なシステムを統合する「システムエンジニアリング」の基礎を養います。
2. 広島大学PHiX装置(PHiX)
トカマクの可能性を解き放つ、イノベーションの起点。
PHiX装置は、ステラレータ磁場を用いたプラズマ制御の新たな地平を切り拓くための挑戦的なプロジェクトです。 「Initiative(主導権)」の名が示す通り、学生一人ひとりが研究の主体となり、自ら課題を発掘・解決する力を重視しています。プラズマ物理とエンジニアリングの境界線上で試行錯誤を繰り返すことで、「実社会で通用するプロジェクト遂行能力」を備えた、次世代の核融合リーダーを育成します。
- 重点目標: ステラレータ磁場によるプラズマ安定化の研究、自律的な実験プロトコルの構築、高度なデータ解析スキルの養成。
宇宙を、その手で加速させろ。
次世代の鼓動、ECRプラズマスラスターが切り拓く「深宇宙」への航路。
宇宙開発の「心臓部」を創り出す
人類が火星やその先を目指すとき、最大の課題となるのは「エンジン」です。従来の化学燃料ロケットでは、遠く離れた惑星へたどり着くための燃費(比推力)に限界があります。
そこで私たちが研究しているのが、ECR(電子サイクロトロン共鳴)プラズマスラスター。電気の力で推進剤をプラズマ化し、超高速で噴射する革新的な推進機です。私たちは今、「半導体」と「永久磁石」を組み合わせ、世界を驚かせるエンジンの開発に挑んでいます。
ミッション:小型・高効率・長寿命の三冠王へ
宇宙機のエンジンには、過酷な環境に耐えるタフさと、エネルギーを無駄にしないスマートさが求められます。私たちの研究の鍵は、以下の2つの技術的ブレイクスルーにあります。
1. 半導体ベース・マイクロ波発振器の導入
これまでのプラズマ生成には、真空管(マグネトロン)などが使われてきましたが、重くて寿命が短いという欠点がありました。
- 革新点: 最新の半導体(GaNなど)を用いることで、発振器を圧倒的に小型・軽量化。
- メリット: 出力の精密な制御が可能になり、ミッションに合わせて「燃費重視」から「加速重視」まで自在に操れるようになります。
2. 永久磁石による「磁気ノズル」技術
プラズマを噴射する「ノズル」に、従来の金属ではなく磁力線を使います。
- 革新点: 強力な永久磁石を最適に配置し、目に見えない「磁気の壁」でプラズマを絞り込み、加速させます。
- メリット: プラズマが壁面に直接触れないため、エンジンが摩耗せず、数年以上にわたる長期間の宇宙航行が可能になります。
君たちの「好奇心」が、未来の推進力になる
この研究は、電気電子工学、プラズマ物理学、そして宇宙工学が交差する、まさに「最先端の総合格闘技」です。
- 理論を計算し、シミュレーションで設計する。
- 自らの手で回路を組み、磁石を配置する。
- 真空チャンバー内で、青白く輝くプラズマの「鼓動」を確かめる。
机上の空論ではありません。私たちが作っているのは、数年後に本物の宇宙へ飛び立ち、人類の領域を広げるための技術です。
プラズマの力で、負の遺産を「宝」に変える。
プラズマが切り拓く、カーボンニュートラルの極致。
プラズマ研究で、世界の「当たり前」を塗り替える
今、地球が直面している最大の課題、それは脱炭素社会(カーボンニュートラル)の実現です。
私たちの研究室では、物質の第4の状態である「プラズマ」を自在に操り、地球温暖化の原因となるCO2(二酸化炭素)や、温室効果の高いメタンガスを、価値ある資源へと生まれ変わらせる究極の化学プロセスを研究しています。
プラズマ科学:多体粒子系が織りなす「非平衡」の探究
私たちが対象とするのは、単なる「ガス」ではありません。電磁場を介して無数の電子とイオンが相互作用し、複雑な集団運動を見せる「電離気体」という物理系です。
プラズマ科学の真髄は、熱力学的平衡に縛られない「非平衡状態」をいかに制御するかという点にあります。この物理的極限状態をナノスケールで統制することで、本来は数千度の熱を要する安定分子の結合を、物理的な「衝撃」によって瞬時に断ち切る——。それが、私たちの挑む科学の最前線です。
物理学的アプローチ:エネルギーを「質」で統御する
熱化学が「温度(平均エネルギー)」に頼るのに対し、プラズマ科学は粒子の「分布(エネルギー・スペクトル)」を操作します。
- 電子エネルギー分布関数(EEDF)の制御: 重い分子は動かさず、電子だけを加速させる。この選択的なエネルギー投入により、CO2やCH4の分子結合を「狙い撃ち」して解離させます。
- 自己組織化による構造形成: プラズマという散逸構造の中で、炭素原子がいかにして自発的に規則正しい結晶(グラフェンやナノチューブ)へと組み上がるのか。その非平衡相転移のプロセスを物理的に解明します。
探究の柱:地球を救う「物理的ソリューション」
1. 分子結合の物理的解離(Hydrogen Production)
メタン(CH4)の強いC-H結合を、プラズマ内の高速電子による衝突解離で切断します。熱を介さず物理的に水素を取り出すこのプロセスは、従来の燃焼プロセスとは一線を画す「ゼロエミッション・エネルギー創出」の基盤です。
2. 位相制御による先端カーボン創生(Advanced Materials)
プラズマ界面で起こるシース電界の形成や、活性種の輸送プロセスを制御することで、原子1層レベルの精度でカーボン素材を「構築」します。これは、材料工学を物理学の視点から再構築する試みです。
- ダイヤモンドを凌ぐ強度を持つカーボンナノチューブ
- 驚異的な導電性を誇るグラフェン
これら、半導体や宇宙開発に不可欠な「先端ナノ材料」として結晶化させる研究を行っています。
研究の醍醐味:ミクロの物理で、マクロの地球を救う
プラズマの中では、電子が超高速で飛び交い、通常の化学反応では起こりえないエキサイティングな現象が次々と起こります。
- 実験の面白さ: 自分の手で装置を組み上げ、紫や青に輝くプラズマが発生した瞬間、そこは宇宙空間と同じエネルギーに満ちた実験場になります。
- 社会への貢献: 理論の構築からデバイスの試作まで、あなたの研究がそのまま「地球を冷やす技術」に直結します。
新入生・受験生へのメッセージ
「物理・化学を学んで、具体的にどう社会に貢献できるかわからない」
そう感じているなら、ぜひ私たちの門を叩いてください。
私たちが扱うのは、教科書の中の数式だけではありません。
プラズマという「光り輝く道具」を手に、負の遺産であるCO2を未来の素材へと変える。そんな、世界をあっと言わせる研究を一緒に楽しみませんか?
君の好奇心が、地球の未来を照らすエネルギーになる。
「燃料を燃やす」時代から、「燃料を創り出す」時代へ。
DD核融合が切り拓く、資源自給型「同位体経済」の夜明け
「トリチウムがない」という壁を、技術で突破する。
現在、世界中で研究が進んでいる「DT核融合(重水素-三重水素反応)」は、実現に最も近いと言われています。しかし、そこには巨大な課題があります。燃料の一つであるトリチウム(T)が地球上にほとんど存在せず、リチウム(Li)という限られた資源から「作る」必要があることです。
私たちが研究するDD核融合(重水素-重水素反応)は、その常識を根底から覆します。
燃料は「海水」だけ。トリチウムは「副産物」だ。
DD核融合の最大の特徴は、「燃料としてトリチウムを必要としない」ことです。
- 無限の燃料: 燃料は海水中に無尽蔵にある「重水素(D)」のみ。
- 自力で生む: 反応の過程で、自然界には存在しないトリチウム(T)とヘリウム3(3He)が自律的に生成されます。
つまり、DD核融合炉はエネルギーを生み出す「発電所」であると同時に、次世代の核融合燃料や希少資源を生成する「原子の錬金術プラント」なのです。
資源を「奪い合う」から「外販する」ビジネスモデルへ
これまでのエネルギー産業は、資源をいかに安く仕入れるかの勝負でした。しかし、DD核融合が軸となる「同位体経済」では、ルールが変わります。
- トリチウムを「種火」に: 生成されたトリチウムを貯蔵し、他のDT核融合炉へ供給する「燃料供給源」となります。
- ヘリウム3を「宇宙の鍵」に: 極めて希少な3Heを99.9%の純度で精製し、量子コンピュータや超高速宇宙ロケットの推進剤として市場へ供給します。
「エネルギーを作るほど、希少な資源が手に入る。」 この逆転の発想が、人類の経済圏を地球から月、そして深宇宙へと押し広げます。
君の手で、月面を「人類の最前線基地」に塗り替えろ。
このDD核融合炉から溢れ出すエネルギーと熱、そして同位体資源があれば、月面開発のコストは劇的に下がります。
- 月を焼いて酸素を作る: 炉の廃熱で月の砂から酸素を抽出。
- 夜を克服する: 太陽の昇らない14日間の極寒を、核融合の熱が守る。
- 地球への輸出: 月面で精製された高付加価値な同位体を地球へ、あるいはさらなる深宇宙へと送り出す。
22世紀を設計する。
私たちが求めているのは、計算が得意なだけの学生ではありません。「地球にしかない資源」に縛られた人類の限界を、物理と工学の力で拡張したいという野望を持つ学生です。
- プラズマ物理学で「人工太陽」を制御し、
- 極低温工学で「量子燃料」を仕分け、
- 宇宙システム工学で「同位体経済」をデザインする。
君が設計する1基のDD核融合炉が、22世紀の「標準」になる。
その第一歩を、この場所から踏み出しませんか。