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従来法の問題点

図 7.1: 極座標表
\begin{figure}\begin{center}
\psfig{file=images/fig-7.1.eps, width=120mm}\end{center}\end{figure}

Duboisら[24]は、実自己回帰モデルを以下のようにして、図形の輪郭の認識 に適用している。そこでは、輪郭線を、図7.1 (a)に示すように、輪郭 線の重心を原点とする極座標において偏角を $N$等分した放射状の線で標本化し、 $(\rho_j,\theta_j)$, $(\theta_j=2\pi j/N)$ で表現している。得られた輪 郭点列 $\{\rho_j\}$に対して、$m$次の実自己回帰モデル

\begin{displaymath}
\hat{\rho}_j=\sum_{k=1}^{m}c_k\rho_{j-k}
\end{displaymath} (296)

の係数 $\{c_k\}_{k=1}^{m}$ を最小2乗法で求め、それを形の認識に利用した。こ のとき、モデルの係数は図形の相似変換(平行移動、大小伸縮、回転)に関して不変 な表現となる。しかし、図7.1 (b)に示すように、極座標による等角度 標本化では放射状に伸びる輪郭線(図7.1 (b)の20, 21, 0, 1の付近の 輪郭)に対して輪郭点位置が不安定になる。また、その輪郭点間隔が不均等となって しまう。さらに、図形によっては $\theta$ に関して $\rho$ が多価となる。こうし た多価性をを解消するために、Duboisら $^{\cite{dub86}}$ は、輪郭点の追跡順 (図 7.1 (b)の数字の順)に実自己回帰モデルを当てはめる方法を提案した。 しかし、これによって得られる $\{\rho_j\}$ からでは$\theta_j$ が一意に決まらない ので元の輪郭を一意に表現できなくなってしまう。

輪郭線に実自己回帰モデルを当てはめる別の手法として、輪郭線を曲率関数で表現する 方法が考えられる。曲率関数は、図形の回転に不変な量であり、形の記述には適してい るが、輪郭線の微分に関係する量であり、輪郭線の量子化等のノイズの影響を受けやす い。従って、得られた実自己回帰係数はノイズに敏感となってしまう [49]。

以上のような問題は、本来2次元の平面曲線を1次元で表現しようとすることに起因 している。

実自己回帰モデルを利用する別の可能性としては、2次元平面上の輪郭点列 $(x_j,y_j)$に2次元の実自己回帰モデル

\begin{displaymath}
\left[
\begin{array}{c} \hat{x}_j \\
\hat{y}_j
\end{a...
...egin{array}{c}
x_{j-k} \\
y_{j-k}
\end{array}
\right]
\end{displaymath} (297)

を当てはめることが考えられる。しかし、この場合には、得られる実自己回帰係数 $\{A_k\}_{k=1}^{m}$ は形の回転に関して不変とならない。さらに、モデルの係数は 2行 2 列の行列となり、他の方法に比べてモデルのパラメータ数が多くなる。



Takio Kurita 平成14年7月3日