対象画像として図7.6に示す3つの図形を用いた。各図形を複写機で
倍および
倍に拡大(縮小)した図形を作り、それらを入力画像データとし
た。入力画像のサイズは、ほぼ、
画素である。カメラで画像を入
力する際に、各図形を約
度きざみで回転させたり、平行移動させたりして取り
込んだ。各入力画像を大津の方法[126,127]で二値化し、輪郭追跡アルゴ
リズムにより輪郭を抽出した。輪郭の全周長を
等分する区間に分割し、各区
間を平均値で代表させて輪郭点列を得た。図7.7にそうして得られた輪
郭点列を示す。図7.6の図形1に対して得られた輪郭点列は、見た目に
もわかる程度に量子化誤差等の影響が現れている。
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図形 | 平行移動 | 0.078 | 0.062 | 0.013 | 0.055 | 0.032 |
1 | 大小伸縮+平行移動 | 0.135 | 0.089 | 0.031 | 0.141 | 0.099 |
回転+平行移動 | 0.064 | 0.047 | 0.008 | 0.036 | 0.025 | |
図形 | 平行移動 | 0.148 | 0.031 | 0.003 | 0.009 | 0.003 |
2 | 大小伸縮+平行移動 | 0.190 | 0.039 | 0.005 | 0.013 | 0.004 |
回転+平行移動 | 0.194 | 0.040 | 0.006 | 0.018 | 0.006 | |
図形 | 平行移動 | 0.139 | 0.035 | 0.004 | 0.010 | 0.004 |
3 | 大小伸縮+平行移動 | 0.228 | 0.063 | 0.023 | 0.087 | 0.039 |
回転+平行移動 | 0.237 | 0.061 | 0.014 | 0.041 | 0.017 | |
平均 | 平行移動 | 0.878 | 0.346 | 0.694 | 2.619 | 1.597 |
大小伸縮+平行移動 | 0.890 | 0.345 | 0.696 | 2.438 | 1.503 | |
回転+平行移動 | 0.942 | 0.366 | 0.723 | 2.447 | 1.523 |
まず、図形の平行移動や再撮り込みによる影響を調べた。実験に用いた輪郭点列を図
7.7 (a)に示す。これらの輪郭点列間の距離を図形ごとに計算し、平均
距離を求めた。このとき、複素自己回帰モデルの次数は、
とした。その結果
を表7.3の平行移動の欄に示す。また、表7.3には図
形1、2、3全ての輪郭点列間の距離の平均値も併せて示している。
次に、図形の大小伸縮による影響を調べた。実験に用いた輪郭点列を図 7.7 (b) に示す。同様に、輪郭点列間の平均距離を表 7.3の大小伸縮+平行移動の欄に示す。
最後に、図形の回転による影響を調べた。実験に用いた輪郭点列を図 7.7 (c) に示す。輪郭点列間の平均距離を表 7.3の回転+平行移動の欄に示す。
図形1には見た目にもわかる程度に量子化誤差等の影響が現れているため、複
素自己回帰係数間のユークリッド距離 以外の距離尺度では、距離が図形
2、3に比べて大きくなっている。この結果は距離
が見た目にわからな
い程度の量子化誤差に対しても敏感であることを示していると考えられる。ま
た、平行移動、大小伸縮、回転による影響について比較すると、大小伸縮によ
る影響が概ね一番大きいことがわかる。一方、同じ図形の量子化誤差等による
距離の平均値は、全ての輪郭点列間の距離の平均値に比べて
では約1
桁、
では約2桁近く小さくなっている。つまり、量子化誤差等に
よる影響は図形間の距離に比べて十分に小さいと言える。