next up previous
次へ: 初期特徴 上へ: 高次局所自己相関特徴に基づく適応的画像計測・認識 戻る: 高次局所自己相関特徴に基づく適応的画像計測・認識

並列学習型画像計測・認識

画像からある目的のために何等かの量を計測したり、画像内の対象を認識した りする場合、その計測・認識課題を達成するために必要な画像処理手法を次々 と適用する逐次的・手続的な方式がとられるのが普通である。しかし、そうし た逐次的・手続的な方式では、一連の処理が特定の計測・認識課題に対して特 別に考えだされたものであり、既に計測・認識方法が確立されている課題に対 しては実用的であっても、まだ、何をどのような手順で処理すればよいかが明 確にはわかっていないような問題に対しては不向きである。画像計測や認識を 必要とする多くの場面では、それぞれ特有の課題を抱えており、課題ごとに新 たに画像処理手順を考えるのでは、効率がわるい。こうした問題を解決しよう とする試みとして、例えば、画像処理エキスパートシステム [166,169]があるが、特定の課題に関する知識をどうやってシステ ムに取り込むかが問題である。

また、逐次的・手続的な方式は、一般に多くの手間(計算量・時間)が必要と なる。そのため実時間の高速処理を実現するためには、画像処理専用のかなり 高価なハードウェアを用意する必要がある。このことは、画像計測技術を手軽 に様々な問題に適用できない原因のひとつになっている。

一方、対照的な方式としては、パーセプトロン[114]やニューラルネッ トワークを画像計測に応用する並列的・適応的な方式が考えられる。この方式 では、神経細胞をモデル化した素子を多数結合し、その結合係数を入力に対し て望ましい出力が得られるように例からの逐次学習によって決める。こうした 並列的・適応学習的な画像計測・認識方式は、計算時間は並列化により速くす ることができ、しかも、学習によりさまざまな計測課題に対して適用できる汎 用性がある。しかし、画像をそのままニューラルネットの入力とすることは、 現状では、学習のための計算時間の点から適当ではない。従って、画像から何 等かの特徴を抽出し、その特徴に基づいた学習をする必要がある。また、面積、 周長、個数の計測などの多くの画像計測課題は、画像の特徴に関して線形であ り、そこでの素子の特性(非線形、有界)は、画像計測への応用の面では好ま しくない場合もある。

一般に、画像の計測や認識では、対象が画像枠内のどこにあっても結果が同じ であってほしい場合が多い。また、画像枠内にいくつかの対象があり、それら の個数を計測したり、それらを同時に認識したいような場合には、全体の特徴 が各対象のみから取られた特徴の和になっていると扱いやすくなる。

そこで、画像から抽出される特徴の満たすべき基本条件として、次のような条 件を考えた。

C1 位置に関する不変性 : 対象が画像枠内のどこにあっても認識結果が変わらない
C2 画面に関する加法性 : 対象が画像枠内に2個あれば、特徴も2倍になる

また、汎用性を確保するためには、

C3 学習による適応性 : 例からの学習により種々の目的に利用できる
も満たす必要がある。

ここでは、これらの基本条件を満たすように、まず、第1段階として、位置に 関する不変性と画面に対する加法性を満たす一般的で基本的な初期特徴を多数 抽出し(幾何学的不変特徴抽出)、次に、それらを統合することにより、課題 に有効な特徴を抽出(統計的特徴抽出)する2段階の画像認識方式を考える [90,99,100,125,128,135,139,140]。 図8.1にシステムの概念図を示す。

図 8.1: システムの概念図
\begin{figure}\begin{center}
\psfig{file=scheme.eps,width=10cm}\end{center}\end{figure}

具体的には、初期特徴として高次局所自己相関に基づく特徴を抽出し、多変量解析手 法を用いてそれらを線形結合し有効な特徴を抽出する。これにより、従来方式のよう に画面から個々の対象領域を切り出し所定の処理を逐次行なう必要がなくなり、単に 例となる画像とそれに対する答えを例示することにより、システム自身が課題に有効 な特徴を適応的にかつ高速に学習可能となる。しかも、その構造は非常に簡単である ため装置化が容易である。



Takio Kurita 平成14年7月3日