杉本俊多の書斎 広島大学名誉教授
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研究   都市の持続可能性
     

 有機主義の観点から、生命体論による都市形成史を研究。地球環境時代にはガイア仮説のような、生命体論的な世界観が必要と考える。つまり、地球は単なる物質ではなく、微生物から各種の動植物を含めて、生物とともに共棲しあっているという見方をする。都市は人間が人工的に築いた物質的な秩序ではあるが、それは人間が有機的な生活を実現するべく、物質と各種の生物が渾然一体となって有機的なシステムを形成し、維持しているものと見なす。

 都市の歴史は単なる人間社会の発展の歴史というものではなく、人間がより高度な有機的秩序を形づくるために進化を遂げてきた歴史と見る。初期的な集落の時代から、古代、中世、近世、近代の各時代に形づくられた人間の都市デザインの知恵は、その都市形態に痕跡を見ることが出来る。現在の生きている都市は、各時代の価値観と形態構造の混成系と見なす。

 現代都市は現代の考え方で一元的にできているものではなく、より高度な生活形態を目指して、多様な歴史的形態構造を有機的に混ぜ合わせている、進化した生命体のようなものである。そこには各時代に生み出された遺伝子のようなものがあり、人間がDNAの中に太古からの遺伝子も含めて新旧の遺伝子を併せ持っていて、本能的な潜在意識的な行動から知的な意識的行動までを可能としているように、都市もまた多様な遺伝子を併せ持っている。

 新都市よりも歴史的な都市の方が長生きする能力を持っていると言える。都市の持続可能性は遺伝子の多様性をいかに含んでいるかによって評価される。

 主にベルリンを題材にそのような研究を行ってきたが、それを他の都市の研究に応用しており、とりわけ広島市の都市構造について新しい見方を提唱している。

 

  主な研究発表
 
著書