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ご注意:以下の論文は印刷前の原稿をもとにしたものです。実際に出版されたものとは異なる可能性があります。

英米におけるライフ・ヒストリー研究の系譜

− 社会学、教育社会学を中心にして −

Studies in Life History as the Sociological Method
in the United States and the United Kingdom

山田 浩之


目次

1 問題の設定

2 社会学におけるライフ・ヒストリー研究の系譜

3 教育社会学におけるライフ・ヒストリー

4 日本におけるライフ・ヒストリー研究の意義

5 おわりに

ライフ・ヒストリーに関する英米の主要文献


1 問題の設定

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 本稿の目的は、ライフ・ヒストリー研究を社会学、特に教育社会学研究の中に位置づけることによって、この手法の特徴を明らかにし、その可能性を探ることにある。

 1980年以降、英米においてライフ・ヒストリー研究がさかんに行われている。1920年代に逸脱研究を中心にして使われていたこの手法は、長い沈黙の後、1980年代に入ってから、再び逸脱やフェミニズム、教育などの領域で用いられるようになった。特に、最近の英米における教育研究では、ライフ・ヒストリーに関する議論が活発に行われている。1990年のCambridge Journal of Education (Vol.20, No. 3)、1994年のTeacher Education Quarterly (Vol. 21, No. 1)などの雑誌で教師のライフ・ヒストリーやパーソナル・ヒストリーに関する特集記事が組まれていることからも教育の領域におけるこの手法への関心の高さがうかがわれよう。

 その一方で、ライフ・ヒストリーの手法に関しては、いまだに根強い批判もあり、十分に方法論的な検討がなされているとは言い難い。ライフ・ヒストリーは、いわば発展途上の手法であり、研究者によって手法の定義が微妙に異なるなど曖昧な点が多い。例えば、同様の手法が、ライフ・ストーリー、Narrative analysis、ケース・ヒストリー、パーソナル・ヒストリー、セルフ・ストーリーなどさまざまな言葉で呼ばれ、また、ライフ・ヒストリーと命名されていても、実際の手法が大きく異なっている場合も少なくない(1)。そこで、はじめにライフ・ヒストリーに関する方法論的検討を行っているGoodson(1988)の明解な定義に従って、本稿で扱うライフ・ヒストリーという手法を特定しておきたい。

 ライフ・ヒストリーとは、ある特定の個人によって語られた、あるいは書かれた資料、すなわちインタビューや自伝、日記などに焦点を当て、それらに対する多角的な検討を行うことにより個人の経験や生涯を再構成しようとする手法である。このような過程によって個人の体験をリアルに再現し、これまでの経験的手法や参与観察では描けなかった個人と社会とのダイナミックな関係を浮き彫りにするのが、この手法の特色である。

 ライフ・ヒストリー研究において中心となる資料がライフ・ストーリーであり、ライフ・ヒストリーとは明確に区別される。ライフ・ストーリーとは、インタビューや自伝、日記など、個人が自分自身の生涯、生活や仕事に関して語ったもの、あるいは書いたものである。つまり、ライフ・ストーリーは、個人が主観的な立場から自身の経験や生涯を再構成したものと言える(2)

 このライフ・ストーリーに対する多角的な検討によってライフ・ヒストリーは作り出される。多角的検討の際に使用されるのは、分析対象となる個人に関わるすべての資料、すなわちマクロな統計資料、従来の量的・質的研究の結果などはもちろんのこと、同僚や友人などに対するインタビューや対象となる個人に関する公的な資料などである。こうした資料を個人のライフ・ストーリーと対照させることにより、ある個人によって主観的に構成された内的世界を再現しようとするのがライフ・ヒストリーである。したがって、一般化を追い求めてきた従来の研究手法とは異なり、ライフ・ヒストリー研究では、むしろその個人の独自性、特徴などが強調されることになる。

 以下では、このライフ・ヒストリー研究が社会学研究、および教育社会学研究においてどのように位置づけられるのかを検討する。その後、日本の状況に照らして、ライフ・ヒストリーという手法の可能性と展望を模索してみたい。

2 社会学におけるライフ・ヒストリー研究の系譜

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(1) 初期ライフ・ヒストリー研究

 Bertaux(1981)、Faraday & Plummer(1979)ら多くのライフ・ヒストリー研究者によっても指摘されているように、ライフ・ヒストリーは決して新しい手法ではない。むしろ、社会学の中では古典的な手法であり、また文化人類学などでは主要な手法の一つとして早くから使われてきた。

 社会学においては、1920年代から1930年代にかけて、数多くのライフ・ヒストリー研究が発表されている。この時期は、特に米国における社会学研究の萌芽期とも言え、その中でライフ・ヒストリーは重要な研究手法の一つであった。ライフ・ヒストリーを初めて研究に使用し、その後のライフ・ヒストリー研究に重要な役割を果たしたとされるのがThomas & Znaniecki(1927)であった。彼らはアメリカに移民したポーランド農民のライフ・ストーリーをもとに彼らの移民時の経験を再構成してみせた。Thomasらが使用した資料は、ポーランド農民の自伝、日記、手紙など多岐に渡っており、この研究によってライフ・ヒストリーの基礎が確立されたとされている。

 このThomas & Znanieckiの研究を中心にして、その後次々とライフ・ヒストリーによる研究が発表される。それは、例えば、Anderson(1923)の浮浪者(hobo)、Thrasher(1928)のギャング、Zorbaugh(1929)のスラムなどに関する研究であり、その多くが逸脱または逸脱的な職業に関するものであった。

 こうしてライフ・ヒストリー研究は1930年代にピークを迎えた。その代表的な研究が、Cliford Shawによる一連の研究(Shaw 1930, 1931, 1936)であった。その中でも、もっとも良く知られているThe Jack-Rollerにおいて、Shawは逸脱少年に対するインタビュー、すなわちライフ・ストーリーを中心的な資料として使用した。そのライフ・ストーリーが、少年の犯罪記録、裁判の記録、医療・心理検査の結果など、さまざまな資料と対照され、逸脱少年に関する詳細なライフ・ヒストリーが作り出されている。このShawによる研究は、逸脱研究に重要な理論的発展をもたらした(Becker 1970)。

(2) ライフ・ヒストリーの衰退

 このように盛んに使用され、また十分な成果をあげてきたライフ・ヒストリーの技法は、1930年代の終わりから突然姿を消してしまう。その原因となったのは、構造−機能主義を背景とした実証主義社会学の勃興であった。実証主義研究者にとって、ライフ・ヒストリーの手法は「主観性」に支配されていた。社会学を科学として成立させるためには、「主観性」を排し「客観性」のみを重視する必要があった。また、たとえライフ・ヒストリーが有効な手段であったとしても、データの収集、分析に膨大な時間を要するこの手法は、時間と手間に比して得るものの少ない非効率的な手法にすぎなかった(3)。こうして、社会学研究は、統計的手法を中心とした実証主義パラダイムへと移行していった。

 ところが、1960年代になると、実証主義社会学に対して激しい批判がなされるようになる。それに伴い、社会学の流れは質的研究を中心にいくつもの方向に分化することになった。しかし、Goodson(1988)が指摘しているように、こうした新たな社会学研究の流れの中でも、ライフ・ヒストリーがその重要性を再確認されることはなかった。

 この時期における社会学研究の新しい流れの中で、もっともライフ・ヒストリーに近いものは解釈学的アプローチと呼ばれる手法であった。エスノメソドロジー、参与観察などに代表されるこの手法は、実証主義社会学の中心であった量的研究を排し、質的な資料を中心にした研究を用いるのが特色とされる。この解釈学的アプローチは、マクロな社会全体を対象とした実証主義社会学とは対照的に、小集団や特定の状況を対象としたミクロな社会学として位置づけられる。

 その後、この解釈学的アプローチにも一定の批判がなされるようになった。Goodson(1988, pp.77-78)は、ライフ・ヒストリーとの関連において、解釈学的アプローチが「状況」を強調しすぎると批判している。質的研究の多くは経験的実証主義に対するアンチテーゼとして提唱され、実証主義の対局とも言える方向に向かった。そのため、ある特定の場、すなわち特定の集団、組織など、限定された状況を対象として研究を行う。したがってこうした研究は、あるスタティックな状況の把握には成功しているかもしれないが、歴史的ダイナミズムの中で対象と社会との関係を捉えることが困難になっている。

 さらに、解釈学的アプローチの問題として、経験的実証主義と同様の問題、すなわち個人の喪失があげられる。解釈学的アプローチの多くは、参与観察などの手法によって多くの研究成果をあげてきた。しかし、量的研究を否定し、対象や研究手法を大きく変化させたにもかかわらず、解釈学的アプローチによる質的研究は、結局、従来の量的研究と同様の問題を抱えてしまった。つまり、それは解釈学的アプローチの多くが、研究対象を集団として扱い、その行動を集団的なものとして捉えてきたことによる。そのため、個人は集団の中に埋没し、個人と集団、社会との関係を検討することは依然として困難なままであった。

(3) ライフ・ヒストリーの復権

 以上のような解釈学的アプローチに対する批判を受けて提唱されたのが、ライフ・ヒストリーである。1967年に再版されたThe Jack-Rollerの序文においてBeckerがライフ・ヒストリー研究の重要性を指摘すると(4)、その後、再び逸脱研究を中心としてライフ・ヒストリーを用いた研究が発表されるようになった。それは例えばBogdan(1974)による性転換者の研究、Klocars(1975)による盗品売買業者、またChambliss(1972)による窃盗犯といった、逸脱的職業や性的逸脱に関する研究であった。このようにして1970年代からライフ・ヒストリー研究が徐々に見直されはじめたのである。

 こうした状況を背景として、1980年前後には相次いでライフ・ヒストリー研究に関するレビュー論文や方法論が提示されるようになり、ライフ・ヒストリー研究は一躍脚光を浴びることになった。特に、1980年に出版されたBertauxによるBiographies and Societyはヨーロッパにおけるライフ・ヒストリー研究の状況を紹介し、この手法の復権に重要な役割を果たした。

 ライフ・ヒストリーは逸脱研究を中心として用いられてきたが、1980年代以後、さまざまな領域でライフ・ヒストリーの手法が採用されるようになった。その主な領域としてキャリア研究とフェミニズム研究を指摘しておく必要があるだろう。

 キャリア研究においてライフ・ヒストリーが注目されたのも、従来の研究に対する批判からであった。実証主義パラダイムにおけるキャリア研究では、いくつかの時点における職業の変化を測定し、それがキャリア・パターンなどとして、数種のカテゴリーに要約されることが多かった。こうした手法に対して、1970年代からライフ・コース、ライフ・サイクルなどの概念が提出されるようになる(5)

 ライフ・コース研究もThomasら(1927)の影響を受けており、ライフ・ヒストリーと同様キャリアを連続的なものとして捉えようとするものであった。しかし、実際にはライフ・コースなどの考え方も、量的研究におけるキャリア研究と同様の問題を孕んでいた。

 ライフ・コース研究においても、一般に年齢段階別にキャリアの変化を扱うのが普通である。つまり、青年期、中年期、老年期、あるいは20代、30代、40代のように人生が分断され、それぞれの時期におけるキャリアやアイデンティティの問題が扱われてきた。こうした分析手法は、キャリア・パターンの考え方を細分化したにすぎないとも言えよう。したがって、ライフ・コース研究においても各年齢段階は独立したものとして扱われ、年齢段階間の変化、あるいは変化が生じる過程を詳細に検討することが困難であった。

 そこで注目されたのがライフ・ヒストリーの考え方である。ライフ・ヒストリーを用いることでキャリアが連続したものとして扱われ、その変化の過程を詳細に検討することが可能になる。こうした流れによる研究の成果としては、Dex(1991)などがあげられ、そこでは従来の統計的分析とインタビューや質問紙などによる質的データを統合する試みがなされている。

 また、フェミニズム研究では、早い時期から自伝やインタビューなどのパーソナル・ヒストリーに対する関心が高まっていた。Nelson(1992)が指摘しているように、女性はマージナルな存在であるため、女性史に関する資料が残されることは少ない。したがって女性史ばかりでなく、現代の女性に関する研究においても伝記やインタビューは女性の生活やキャリアを明らかにするための重要な資料となる。そのため、フェミニズム研究においては自伝やインタビューなどによるライフ・ヒストリーが盛んに用いられるようになったとされる。

 しかし、こうした状況は女性のみに限らない。男性でも著名な者を除いて、その仕事や生活に関する資料を収集することは困難である。一部のエリートではなく、普通の人々の日常を明らかにする際には、フェミニズム研究に関わらず、ライフ・ヒストリーは重要な手法であると言えよう。

 以上のように、1980年代以降、社会学においては様々な領域においてライフ・ヒストリーへの注目が高まってきた。そして現在では社会学における重要な手法の一つとして、ライフ・ヒストリーが定着したと言えるであろう。近年においては、領域に関わらず、次々とライフ・ヒストリーを使用した研究成果があげられている。

3 教育社会学におけるライフ・ヒストリー

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(1) ライフ・ヒストリーへの着目

 先にも述べたように、社会学ばかりでなく教育社会学の領域でもライフ・ヒストリーが盛んに取り上げられている。教育社会学では特に英国の研究者によってライフ・ヒストリーが採用されている。これはBall、Woods、Goodsonら英国の質的研究においてリーダ的な役割を果たした研究者達がライフ・ヒストリー研究の重要性を指摘し、この手法を用いた研究を発表していることに影響されていると考えられる。ここでは教育社会学における研究動向の推移を概観し、教育社会学においてライフ・ヒストリーが注目されるようになった要因を検討したい。

 社会学全般と同様、教育社会学においても、実証主義を中心とした量的研究から質的研究へとパラダイムの変化が生じた。この教育研究におけるパラダイム転換は社会学よりも、さらにドラスティックであったかもしれない。その変化の契機とされるのが「新しい教育社会学」を標榜した英国における新しい研究の手法と対象の採用であった。

 この「新しい教育社会学」は、従来の研究がアウト・プット−イン・プット・モデルにすぎないという批判を行った。つまり、実証主義的な分析では出身階層(インプット)や地位達成(アウトプット)などのマクロな社会的変数を扱って教育現象が分析されてきたが、その過程にある学校内部で生じている事象が検討されず、学校がブラック・ボックスとして扱われているという批判であった(6)

 こうした批判を受けて、教育社会学は、マクロな分析からミクロな分析へと対象を変化させ、これ以後、学校の社会学やクラスルームの社会学が主要な研究領域の一つとなった。この新しいパラダイムで取り上げられた技法が、エスノメソドロジーや参与観察である。これらの研究では、教室内における、生徒間、教師−生徒間の相互作用が、質的資料を用いてさかんに分析されるようになった。そして、従来の実証主義的パラダイムでは明らかにすることができなかった新たな知見が続々と教育社会学の知識に加えられた。

 このパラダイムにおいては、生徒が分析の中心であった。そのため、教師は脇役となり、分析の中心からはずれることになった。また、たとえ教師が分析の中心になったとしても、Goodson(1988)が指摘しているように、教師は、交換可能な個性のない存在、あるいは時代が推移しても変化しない非歴史的な存在として描かれた。そしてこうした学校の社会学における教師の扱いに対する不満により、教師に対する新しいアプローチが求められるようになった。

 そこで採用された手法の一つがライフ・ヒストリーである。教育社会学においてライフ・ヒストリーへの関心が高まったのも、社会学と同様1980年前後であった。Goodson(1980)、Woods(1985)、Ball & Goodson(1985)などが発表されると、その後を追って、次々と教師のライフ・ヒストリー研究が発表された。

 こうした教育社会学におけるライフ・ヒストリーでは、個々の教師に対するインタビューを中心にして詳細な検討を行ってきた。そのことにより、これまで集合的に扱われ、交換可能で個性のない存在として描かれてきた教師が、生き生きとした個人として検討されることになる。さらに、こうした個人についての詳細な検討は、教師の仕事と生活、そしてキャリアに関する新たな理論を提示する可能性を秘めている。Woods(1993a)による最近の研究などは、こうした可能性を追求したものと言えるだろう。

(2) 教師のライフ・ヒストリー

 教師のライフ・ヒストリーが重視されている要因はもう一つある。それは、いわばライフ・ヒストリーのカウンセリング効果とも言えるものである。Faraday & Plummer(1979)は、ライフ・ストーリーを採取するインタビューの過程において、インタビューの対象者の考え方や行動に変化がみられることを指摘している。つまり、性的逸脱者との継続的な面接調査により、彼らが抱える内的問題への対処の仕方が変化し、カミング・アウトを決意するなど、インタビューが対象者の状況に大きな影響を与えることがある。

 自身について語ることはアイデンティティ再構成の重要な過程である。そのため、インタビューという作業によって明確なアイデンティティが再構成され、分析対象者の内的世界が変化し、個人が抱えている問題が解決されると考えられる。このようにライフ・ヒストリーは研究者が分析対象者からデータを搾取するのみではなく、分析対象者との相互作用によって進められるのである。

 こうした過程は、もちろん教師のライフ・ヒストリー研究にも適用できる。教師の問題についてインタビューを進めることは、教師が自分自身で自己の問題を解決する手助けとなる。すなわち、従来の研究では、研究対象として搾取されるだけであった教師が、ライフ・ヒストリー研究では分析の中心人物となり、研究者に資料を提供するとともに、自己の問題を解決する糸口をつかむことができる。

 さらには、Shon(1983)が提唱する、内省的実践者の考え方も、ライフ・ヒストリーの教師教育への利用に大きな影響を与えている。Shonは、専門職の分析を行い、その実践的行為には内省が重要な効果を与えることを指摘している。特に、現代のポストモダン的な状況においては、内省的実践者として教師を扱うことは重要であろう。生徒、その親の価値観が多様化し、従来のような一元的な価値の付与では対応できなくなっている現在、教師はその内省によって資質を高めていく必要がある。その内省を援助する重要な方法がライフ・ヒストリーである。

 こうした流れを受けて、現在、英国を中心として教師の現職教育、大学での教員養成におけるライフ・ヒストリーの有効性が積極的に検討されるようになってきている。そこでは、必ずしも研究者−教師という図式が存在する必要はない。教師は、相互に自身のライフ・ストーリーを語り合うことで、互いの問題を解決することが可能である(Aspinwall 1986)。教育社会学研究においてライフ・ヒストリーが重視されているもう一つの要因は、こうした教授法の一つとしての利用という要素を大きく含んでいる。

(3) ライフ・ヒストリー研究の展開

 以上のように、教育の社会学においては、特に教師研究においてライフ・ヒストリーが積極的に利用されてきた。ライフ・ヒストリーは、教師研究において、すでに一般的な手法となっていると言って良いだろう。また、教師教育の領域においても、大学での教員養成、現職教育などの場において、ライフ・ヒストリーが今後盛んに利用されると考えられる。

 しかし、ライフ・ヒストリーは教師研究のみでなく、様々な局面において利用することが可能である。例えばAntikeinen et al.(1996)はフィンランドにおける生涯学習の実態をライフ・ヒストリーの手法を用いて明らかにしている。彼らは、生涯学習が実際にどのように利用されているのかを、一人の女性のライフ・ヒストリーを中心として検討した。その他にも、フェミニズム研究などに見られるように女性の教育歴をライフ・ヒストリーとして描き出す試みは一般的となっており、キャリア、あるいは成長と教育との関係がこの手法によってダイナミックに描き出されている。

 先に紹介した初期ライフ・ヒストリー研究における重要な業績の一つであるShawによる一連の研究は、逸脱少年を対象としたものであった。この業績以後展開された逸脱の社会学は教育研究においても重要な影響を与えてきた。このShawの業績は青少年、あるいは学生、生徒に対するライフ・ヒストリー研究として位置づけることができる。このような児童・生徒に対するライフ・ヒストリーも、現在のさまざまな教育問題に重要な示唆を与える可能性がある。今後、こうした多様な領域において、ライフ・ヒストリー研究は行われていくであろう。

4 日本におけるライフ・ヒストリー研究の意義

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(1) 教師研究

 以上、英米におけるライフ・ヒストリー研究の展開について概観してきた。日本においても、社会学や教育学における教師研究の領域においてライフ・ヒストリーへの関心が高まっている(7)。以下では、これまでに検討した英米の状況を踏まえて、日本の教育社会学研究におけるライフ・ヒストリーの有効性を次の二点について検討してみたい。

 第一は、日本における教師の社会学的研究についてである。周知のように日本における教育社会学研究は、欧米の研究動向の強い影響を受けてきた。従って、日本においても、欧米と同様、イギリスにおける「新しい教育社会学」の勃興以後、量的研究から質的研究へという研究手法の変化が生じてきた。こうした変化により、学校の社会学を標榜した、クラスルームを対象としたミクロな社会学が日本の教育社会学研究において盛んに行われるようになった。

 もちろん日本におけるこのような質的研究も、欧米と同様に数々の研究成果を挙げてきた。しかし、こうした研究が主に対象としたのは生徒間の相互作用であり、教師は常に脇役にすぎなかった。時には、生徒との関係の中で、教師は権力を行使する「悪役」として描かれることもあった。こうした傾向は、教師を中心とした研究においても同様であった。ときに教師は、学校における性差別を助長し、さらには公権力を生徒に対して行使する主体として描かれてきた。

 以上のような研究が数多くの知見を我々に与えてくれたことは事実であり、教師に「悪役」としての側面があることも確かかもしれない。しかし、こうした研究の多くが、研究者自身の問題関心、つまり性差形成や学校内の権力関係などの図式をそのまま学校の中に持ち込んだものであった。すなわち、日本における質的研究の多くは、研究者の中で生まれた問題関心によって行われているのであり、教師自身の問題を解決するためのものではなかった。

 日本の教師は、校内暴力、不登校、いじめなど多くの教育問題が話題となるたびに、メディアによる激しい批判の対象となってきた。しかし、教師の側からメディアにもたらされる声は、多くの場合、校長など管理職による特定の事件に関する釈明にすぎない。教師の日々の生活の中で生じている問題などについて、教師の声を直接聞く機会はほとんどない。

 教師の問題について、積極的にその状況を明らかにしようとしてきたのは、むしろ実証主義パラダイムによる研究であった。これまでにも教師のバーンアウト、ストレス、多忙感など、教師の問題についてアンケートを中心にした詳細な調査がいくつも行われてきている。こうした調査は、教師の実際を克明に明らかにしてきた。しかし、統計的な処理では、現状の分析は可能であっても、個々の教師が抱えている問題の解決に役立つ処方箋を提示することは困難であろう。

 こうした状況を打開する手法の一つがライフ・ヒストリーである。教師との対話によって進められるライフ・ヒストリーは、教師の声を直接反映し、教師自身の問題から、研究を進めることができる。とくに、教師の声を直接聞き取ることが困難である日本の状況を考えれば、ライフ・ヒストリーは、非常に有効な手法と言えるだろう。

(2) 教育の社会史的研究

 第二には、教育史の社会学的研究である。日本においては、教育社会学の領域においても重要な歴史研究が行われてきた。この領域では、近年、自伝やインタビューを用いた分析が盛んに行われるようになっている。例えば、天野郁夫氏らは自伝やインタビューにより学歴主義の内面化過程を検討している(8)。また、その他の研究においても、特に歴史的研究においては、自伝的資料が量的データや仮説の検証、傍証のために盛んに用いられてきた。

 このような教育史の社会学的研究により、特に学歴主義の制度化や内面化を中心に、人々の生活のレベルで教育との関わりが明らかにされるようになってきた。そして、こうした分析は、現在の日本の学歴主義の基盤を克明に描き出した。しかし、個人と社会の関わりという点では、いまだ不十分であるかもしれない。これまでの歴史社会学的研究の多くは、自伝的資料を集合的に扱ってきた。確かにその時代の心性は、こうした手法によって巧みに明らかにされてきたであろう。しかし、個人は集合的な存在として扱われ、個々人の持つ差異や、内面化の過程などは十分に検討されてこなかった。このような問題を解決するために、ライフ・ヒストリーは重要な役割を果たす。過去において個人の内的世界がどのように構成されていたのかを明らかにすることにより、戦前の教育現象に関する理解がさらに深まるであろう。

 さらに、これまであまり社会史的研究の対象となってこなかった領域、戦前の教師や生徒の学習体験、生涯教育の機能など、幅広い領域においてライフ・ヒストリー研究を行うことが可能である。日本の教育史に関する従来の記述は主観、印象論によるものが多く、個々の事例が詳細に検討されてきたとは言えない。また、実態と法規などの乖離や統計資料の不備などにより客観的資料の収集が困難な領域も多い。こうした領域において、ライフ・ヒストリーの手法は、理論の探索、あるいは従来の印象論の検証において有効である。

 以上、日本におけるライフ・ヒストリー研究の可能性について大きく二つの領域について検討を行った。もちろん、その他の領域においてもライフ・ヒストリーは重要な手法の一つとして採用されるべきであろう。特に、不登校やいじめなど一元的な理論で説明することが困難な領域において、ライフ・ヒストリーは問題解決の有効な手法な一つとしての可能性を持っている。

5 おわりに

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 以上、ライフ・ヒストリーを社会学、教育社会学において位置づけ、日本におけるライフ・ヒストリー研究の可能性について検討してきた。先にも指摘したように、ライフ・ヒストリーに関しては、方法論的な議論が十分になされているとは言えない。方法論などに関する議論は別稿にゆずりたいが、最後にライフ・ヒストリーの特徴を従来の手法との関連で指摘し、それについて検討しておきたい。

 第一は、ライフ・ヒストリーは従来の研究を否定するものではないということである。本稿で示したようにライフ・ヒストリーは従来の質的研究に対する批判によって再び注目されるようになった。しかし、それは質的研究が量的研究を否定したのとは異なり、ライフ・ヒストリーはそうした従来の研究をも重要な資料の一つとして採用する。この点で、ライフ・ストーリーを明確にライフ・ヒストリーと区別したGoodson(1988)の指摘は重要である。ライフ・ストーリーを詳細に検討する際、使用される資料としてマクロな量的研究の結果、そしてミクロな質的研究の結果も重要な役割を果たすことになる。

 第二には、ライフ・ヒストリーは、ミクロ的な研究として位置づけられるべきではないということである。本稿で示したような社会学研究の流れを見ると、マクロな社会全体を扱った実証主義からミクロな特定の状況を扱ったエスノグラフィーへの変化を受け、ライフ・ヒストリーはさらに小さな単位である個人へと対象を絞った超ミクロ的な研究と見なされる可能性がある。しかし、確かに対象は個人へと縮小されたかもしれないが、問題関心や理論は必ずしもミクロなものとはならない。これまでのフェミニズム研究におけるライフ・ヒストリーの利用を見てもわかるように、マクロ社会学での問題関心によってライフ・ヒストリー研究が行われることも多い。

 むしろ、ライフ・ヒストリーは従来の研究との相互作用の中で作られるものである。この手法は、これまでのマクロ、ミクロ社会学における理論を検証し、そして新たな理論を提示する可能性を持っている。すなわち、従来の研究を補完し、あるいは新たな理論、問題関心を従来の研究手法に提示するものとして、ライフ・ヒストリーは捉えられるべきであろう。

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(1) 自伝、インタビューを使用する手法の呼称については、Denzin(1989)、Hatch & Wisniewski(1995b, pp. 124-126)などを参照されたい。

(2) なお、Bertaux(1981, p.8)によって指摘されているように、ライフ・ストーリーは個人の全生涯を網羅している必要はない。ある個人の生涯の一部における経験であっても、ライフ・ストーリーとして扱える可能性がある。

(3) Faris, E. L. (1967) Chicago Sociology 1920-1932, Chandler, pp.114-115.

(4) このBeckerの序文はBecker(1970)に再録されている。

(5) ライフコース研究の系譜については、正岡寛司「ライフコース研究の課題」『岩波講座 現代社会学 第9巻 ライフコースの社会学』岩波書店、1996年において詳細にまとめられている。

(6) 教育における量的研究から質的研究へのパラダイム転換は、カラベル、ハルゼー「教育社会学のパラダイム変換」カラベル、ハルゼー編、『教育と社会変動』(上)東京大学出版会、1980年において巧みにまとめられている。

(7) 日本においても、中野卓・桜井厚編『ライフヒストリーの社会学』弘文堂、1995年、谷富夫編『ライフ・ヒストリーを学ぶ人のために』世界思想社、1996年などが出版されている。また、教師研究においては、高井良健一「教職生活における中年期の危機 − ライフヒストリー法を中心に」東京大学教育学部紀要、第34巻、1994年においてライフ・ヒストリーを用いた分析が行われている。

(8) 天野郁夫『学歴の社会史』新潮社、1992年、および天野郁夫編著『学歴主義の社会史』東京大学出版会、1991年。また、広田照幸「戦時期庶民の心情と論理」筒井清忠編『「近代日本」の歴史社会学』木鐸社、1990年においても自伝資料の検討が行われている。

ライフ・ヒストリーに関する英米の主要文献

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附記:本稿は1996-97年の国外研究の成果の一部をなすものである。記して謝意を表明したい。


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