お家のリヴィングは、「結構上等」と言う表現では済まされないくらいのソファーが中央にどっかと置いてある高級感たたずむ仕様に仕上げられている。
で、そのソファーには、3面にボードが張ってあって、まぁ飲み物とか小物を置くことができる工夫が施してある。
で、先日のことだが、ジュースを酌んで、ソファーに座って休もうとした時のことだった。ソファーのボード上に見慣れない文庫本がおいてあることに気が付いた。
取り上げてまじまじ眺めてみると、それは芥川だった。
小6の娘に、
「芥川龍之介、読んどるん?」
と聞いてみると。意外に答えは「イエス」だった。
まぁ、芥川を読むのに小6は若干早い気がするが、文法的には読めるんだろう。頑張って読んでくれ。
ただ、私が芥川の文庫本を買った覚えがないので、違和感を覚え、下の娘に引き続き、
「芥川、買ったん?」
と聞いてみた。
わざわざ買って読むとなると、それなりに感心な気がする。まぁ、図書館で借りてきたのだとしても、読む行為としては同じだけど、おこずかいを芥川に割くのは、私からすると感心なことだ。
すると下の娘は、
「そこの本棚に立てかけてあったのを見つけたのよ。たぶん、お姉ちゃんの本だと思う」
と答える。ああ、それなら納得いく、上の娘は暇さえあれば、本を読んでいるから。読書量は半端でない。
上の娘は学校の図書館から借りてくることがほとんどだけど、夏休みとか学校にいけないときは、芥川だけでなく、時々文庫本を買ってきて読んでいる。で、今度は上の娘に、
「芥川どうだった? 好きなん?」
と聞いてみた。そしたら娘は、
「覚えてないよ。中3の時に読んだんだから」
と、別の本を読みながら、こちらを振り向くことも無く、めんどうくさそうに答えた。
しかし、その回答はかなりおかしい。彼女の中三は目下、絶賛進行中である。中3なんて、まだ半年も経験していないんだから、中3に読んだとしたら、一番離れていても半年前の記憶にすぎない。そんなに早く本の感想は忘れないはずだ。芥川は、そんなに早く忘れさせてくれないはずだ。
「え、そりゃあ芥川に薄情じゃないの? 半年かからずに忘れちゃうなんて」
と、思ったことをそのまま伝えると、上の娘は今度は本から目を離して、
「え?私、中三って言った?芥川読んだの中3じゃなくて、小3だよ。だから、もう内容をよく思い出せないんだけど、もう一回、出だしでも読めばすぐ思い出すはず」
……小3で、芥川って......読めるんかいな? まぁ、読んでる人がここにいるんだけどね。
うちの娘は、どいつもこいつも、天才である。
アディオス