件名 子育て支援について(8)

ラグビーが盛り上がっていた。

中四国には残念ながら大会会場がないがため、それがどれくらい盛り上がっているか日常で感じる機会が少ないのだが、広島駅辺りにやたらに増えた大柄な漢たちは、「彼らはどっかでラグビー見るついでに広島に来てくれたんだろうな。たくさんのファンが日本に来てるんだろうな」、というようなことを匂わせていた。

で、10月に大分に仕事で訪れたとき愕然とした。ラグビーの会場となっていた大分はラグビー一色で、大柄の外国人が闊歩しており、いまさらながらラグビーブームの存在を肌で感じ、その場で数千円のラグビーtシャツを購入したのであった。

で、それからというもの、テレビで放送されるラグビーを見るようにしているのだが、あれは上がるね。

ルールは全く分からないのだが、どうやらあの卵型のものを相手の陣地の端まで押し入れたら得点が入るシステムらしくって、悩ましいのはどうやら、自分より前に卵方のものを投げ入れることができないようであり、そのために、卵型のものを持って相手にぶつかったり、束になって卵型のものを押し入れたりするなど、工夫しながら前進する必要があり、その工夫の様がおもしろいのである。そして、そうした工夫を大男がするさまが、たまらなくスリリングで、迫力があるのである。ルールは全く分からないのだけれども。

で、どうやらそれは私だけが抱いた感情ではないらしく、小学6年生の娘の心の奥にも、熱い炎、ラグビー魂が燃えさかっているらしい。

ある日のことであった。買い物に一緒に行くときだった。何やら娘の方から、ラグビーの話をし始めた。彼女は興奮していた。そして、話題はニュージーランドのハカに至っていた。しまいには、私にハカを知っているか聞いてくるのである。

そんなもん知っている。知っているに決まっている。スクールゥオーズ世代の私をなめてもらっては困る。昨日、ニュースでやっていた、あの踊りだ。

私が知っていることを確認した娘は、

「本当のハカを見せてやる!」

なんて生意気なことを言い出した。「こんな小娘にほんとのハカなんかできるんだろうか?」と、にわかには信じられなかったが、まずはお手並み拝見とすることとした。

すると娘は

「うぉぉぉぉぉぉ」

と叫んだかと思うと、それはそれは見事なハカを体全体を使って、舞ってくれた。まさに地面が揺ればかりの躍動感にあふれたハカだった。昨日、ニュースで見たニュージーランド代表を彷彿とさせる、いや、もしかするとそれ以上のハカだった。こバカにしてすまなかった。

ただ、場所が悪かった。ここはエレベーター内。

文字通り、娘のハカとともにエレベーターはグァングァンと揺れ、ほどなくして、エレベーターは急におとなしくなった……エレベーター、止まっちゃったぞ……

エレベーターを止めるほどの娘のハカ。そりゃ、すごい破壊力で、賞賛に値するものだったのだけれども、そのあと娘は、

「二度とエレベーターでハカをするな!」

と、こっぴどく叱られたのは言うまでもない。

アディオス

2019年11月25日