「大丈夫ですか?」
日本を離れ、マレーシアで留学生活を4か月間送っている学生が、送り出した教員との、留学先での感動の再開の場面で、学生のほうが教員に向けて最初に放った言葉だ。
その時の私は、どう見ても大丈夫ではなかった。
なぜ、「大丈夫でない」のか、その顛末を白状しよう。
12月、年の瀬にマレーシアへ向かう旅程だった。重要な会議がある。
で、「どうせマレーシアに行くのならば」、と留学中の学生の顔を見に行くことにしたのである。
12月は忙しい。決して自分のことを“師”とは思っていないが、師走という暦だし。今回も、夕方まで広島の大学で仕事をして、その足でマレーシアへ。夜行便という旅程だった。
夜行便はやっぱ、ほとんど寝られない。
朝六時にマレーシアに到着し、その足でパスポートをなくしたのは、もう報告済みだ。
パスポートと再会し、這う這うの体で会議場へ向かった。お昼過ぎには用事は終わり、しばし、自由な時間となった。
で、会議場近くの山に登る。
……なんで登っちゃったんだろう……疲れているのに……休んでおけばよかったのに……
で、その後、夕方からマレーシア留学中の学生に会う約束だったんだけど、約束の時間30分くらい前に、約束の場所に到着することができた。で、30分あったら仮眠できるかな、と車の中で寝てしまった。
ふと起きると、ちょうど約束の時間だった。
起きようと体を持ち上げると、寝ぼけてうまく体が動かない。ふらふらと、車からはい出し、約束の場におぼつかない足取りで向かった。学生は、私が車を止めたところに、もういた。
千鳥足でさまよう私を見て言った言葉が、
「大丈夫ですか」
私は、ふらふらしながら、「たぶん……」とだけ答えた。
もう少し、感動的な再開を演出できればよかったのだが。
トイレの鏡をのぞくと、ねぐさった頭と充血した目。「大丈夫そう」では、おおよそなかった。
アディオス