リスやネズミって、結構アホみたいなところがあって、普段は飢餓状態にあるんだろうけれども、たまたま実りの秋とかに、食べきらないほどの量の木の実に遭遇すると、「そんだけ食べたら体に悪いだろ」くらいの勢いで大食いをするようにプログラムされているらしい。アホだね。
しかし、よく考えると、これについては、我々は笑えない。我々も同じ行動をとりがちだ。我々だって、ドカ食いしちゃうことがよくあるし。さらに悪いことは、我々のドカ食いプログラムは、飢餓状態の時だけにスイッチが入るのではなくて、恒常的に動き続けていて、だからこそ、飽食の国々の人は太りがちで、ダイエットに走らないといけない。
で、リスやネズミの方に話を戻すんだけど、どんだけ食べても食べきらないほどの量の木の実に遭遇したときは、将来、来るべき飢饉に備えて、食べきらないこの実をどこかに運び、隠しておくらしい。これが、動物の貯食行動だ。結構賢いように見える貯食行動だが、当の隠した動物たちが、隠した場所を忘れちゃうので、飢餓時に役に立っていないことが多いようなのだ。アホだね。
まぁ、隠した後に本人が誰かに食べられちゃったり、事故にあったりで死んじゃって、本当は隠したことを覚えていたんだけど、利用されないことも結構あるんだろうけれども……
で、うちには家族のメンバーが黒パットと呼んでいる黒いタブレットPCがある。いや、正確には、あった。こういうのがあったら面白いんじゃないの?と思い、私が購入してきたのだが、おうちのWi-Fiにつなげると、ユーチューバーが見られたり、ゲームアプリをダウンロードできたりで、結構役に立っていた。
そのうちに、黒パットは家族の人気者になり、子供たちの間で黒パット争奪戦が始まり、暇さえあれば、というか、暇を作ってまで黒パッドをいじくるようになり、そんな子供たちの態度に私は激怒し、「人生には黒パットよりずっと大切なものがたくさんある。あるにもかかわらず、黒パットがあるとおまえたちはそれに気づこうともしない!」と絶叫し、黒パットを取り上げ、子供たちの手の届かないどこかに隠したのであった。
で、黒パットのことを私自身忘れていたのだが、それからだいぶたってから、子供たちに、「で、黒パットどこなん?」と聞かれたときに、驚いた。思い出せない。どこに隠したのか。で、如何にも自分が隠しそうな場所、例えば、クローゼットの中、上、衣装引き出しの中などなどを捜索したのであったが、未だ黒パットに遭遇することができないでいた。こんな状態が、ずいぶん長いこと続いていた。2年くらいかもしれない。どれだけ探しても見つからない黒パットに対して、この家の中のどこかにあるブラックホール的なものに黒パットは吸い込まれて、時空のゆがみの中に消えていったと理解することにした。これにて、一件落着!……見つかってないんだけどね。
で、この前、上の娘が学校でエプロンが必要な事態となり、確か、脱衣所にある洗濯機、その上にある棚に、エプロンがいくつかあったはずだと思い、エプロンを探しに脱衣所に向かったのだった。棚は高かった。踏み台をとってきて、棚に手をやると、エプロンに交じって、何か硬いものに指先がぶつかった。硬いものが上から降ってきたら大変なので、慎重にその固いものを引っ張り出すと、それは黒パッドだった!こんなところにあったのか!!
とりあえず、エプロン捜索を続けるため、黒パットを娘にヒョイと渡すと、娘は黒パットを持って、無言で走り去っていった。もう二度と私に隠されないためなのか、それとも妹に黒パットが見つかったことを知られないようにし、そうすることで、黒パットを独り占めするためなのか、それとも、黒パットを見たら走るようにインプリンティングされていて、その衝動を抑えきれないのか、はたまた何か別の理由かどうかは分からないけれども、娘は黒パットを持って走った。私が止めるのも無視して。どこか知らないところに。
次に見た娘は、もう、黒パットを持っておらず、どうやら、既に彼女は再びどこかに黒パットを隠した後らしい。大丈夫だろうか?あいつは、私にも勝るとも劣らぬアホなのだから。いったん隠したら、隠し場所、忘れちゃうんじゃないだろうか?次に黒パットに会えるのは、何年後かなぁ?
アディオス!