件名 就業時間外の過ごし方について(3)

広島東洋カープが優勝したのが26日。私がマレーシアに経ったのは27日。つまり、私は優勝記念セールを逃したのである。で、そんなことはまぁどうでもいいんだけど、この日程のため私は、カープが優勝したことに起因する高揚した気持ちとともに出国と相成ったのである!

私は当然、
「広島カープのように広島空港を真っ赤に染め上げよう!」
と思い、きっと私と同じように思うはずの広島市民と同じように、真っ赤な広島カープの帽子をかぶって広島空港に向かった。

……空港について愕然とした。真っ赤な広島カープの帽子をかぶっているのは私だけ。いや、正確には私以外にもう一人、どこかの小学生だけである。同行する大学院生さえかぶっていない。まぁ大学院生とは、「赤い帽子をかぶっていこう」と申し合わせたわけではないのだけれども。

さらに空港のセキュリティチェックではこともあろうに、セキュリティから

「ツェッペリン、かっこいいっすね」

と赤い帽子の方は完全に無視で、レッドツェッペリンtシャツの方に突っ込みを入れられる始末。私はイラつきながら、「かっこええんは、カープの帽子のほーじゃろうが」と絡もうかと思ったのだが、気が弱いため、

「ツェッペリン、最高ですよね」

とへらへらしながら言うのがやっとだった。

皆少し薄情なのではないだろうか?昨日、本通りであれだけ騒いどったんは、なんじゃったんじゃ?

このアウェー感は羽田でさらにうなぎのぼり。空港の、あふれかえらんばかりの人ごみの中でさえ、赤い帽子を被っているものなど、私以外にいな......あっ!いたぁ!

人ごみをかき分け、やっとのことで同士に近づき、カープの優勝を分かち合おうとすると、どこはかとない違和感が……彼のかぶる帽子をよく見るとCではなくA。エンゼルズ。「おーたにさーん」の方だった。「おーたにさーん」の前でしばし呆然と立ち尽くしていると、「おーたにさーん」は一瞬だけ私と目を合わせ、その後すぐに人ごみの中に消えて行った。

カープ優勝の次の日なのに、この広い羽田空港の中でカープは私だけ……

皆少し薄情なのではないだろうか?昨日、本通りであれだけ騒わいどったんは、なんじゃったんじゃ!

アディオス!

2018年10月10日