プラグの型って国によって違うよね。日本の型はAタイプと言うらしいけど。
海外で日本の電化製品を使うためには、Aタイプのプラグから、その国のプラグのタイプへ変換する必要がある。
で、AタイプのプラグからBタイプのプラグへの変換器を8個も集めてしまっている。世界トップレベルのBタイププラグコレクターと言ってよいほどのコレクションなのだが、今回はその収集の歴史を紹介しよう。
昨年の9月、私は空港のロビーにたたずんでいた。マレーシア調査へ旅立つ前の、まったりとした時間を楽しみながら……そんな時だった。同行する大学院生が唐突に、
「先生、マレーシアのコンセントの形って、何でしたっけ?」
等と聞きやがるので、「出発直前に、全然準備が悪いなぁ」と思いながら、
「マレーシアはCタイプだよ。Cタイプへの変換器を持っていないならば、今、空港で買わないと。マレーシアについてから探そうとすると骨が折れるよ」
と親切に教えてやった。すると大学院生は、Cタイプの変換器を買い空港のキオスクに向かった。優しい私はそれに付いて行ってやった。
売り場に着くと、あるはあるは。世界各地の変換器が売られている。さすが空港。
すべてのタイプに変換できるごっつくて高いのがあるんだけれども、行き先がマレーシアだけなのだから、そんなものをわざわざ購入する必要もない。マレーシアに対応したCタイプ変換器さえあればいい。
で、Cタイプにのみ変換できるやつを手に取り、それを購入しようとしたとき、大学院生が妙なことに気が付きやがった。変換プラグの棚には、代表的な国の名前とプラグの形式が書かれた一覧表が飾られていたのだ。それを見ながら、大学院生はいぶかしげに、
「先生。先生はマレーシアはCタイプっておっしゃいますけど、この表によれば、マレーシアはBタイプになっていますよ。本当にCタイプに間違いはないですよね」
と、念を押すのである。言い方は私を立てて、「本当にCタイプが正しいか?」という念押し形式を採用してあるものの、「先生、まちがってんじゃん」というにおいがぷんぷんする発言だった。
確かに表には「マレーシアはBタイプ」と明記してある。はっきり書かれて、あまつさえ、大学院生に指摘されるとにわかに自信がなくなり、
「いやぁ、Cタイプのはずなんだけどなぁ。でも、仮にBタイプだった場合はとりかえしがつかないから、Bタイプ買っておこうか。私は、Cタイプを持ってきているから、Bタイプだけ買い足すことにするよ」
と新たにBタイプを購入してしまったのである。
で、マレーシアに着いて驚愕するのだが、プラグの形はCタイプ。Bタイプなんかはまりゃしない。
マレーシアに行くたびに、こうした行動を繰り返し、無駄なBタイプの変換プラグが増えていく。その成果が8個にまで進んだBタイプ変換器なのだ。もうそろそろ学習して、Bタイププラグハンターから卒業しないとな。
アディオス