件名 産学連携プロジェクトについて(2)

件名 産学連携プロジェクトについて(2)

どこの研究室も似たようなものだと思うのだが、当研究室にも当然、入室の儀式的なものがある。当研究室の入室儀式、通過儀礼を紹介すると、新入研究室員に対していつも決まった質問を投げかけることである。

まぁ、その質問というのは、至極当たり前であり、どこの研究室でも同じように聞かれている紋切り型のものなので、つまり、わざわざ書くほどの事でもないのだが、一応、念のため書いておこう。

「座右の哲学者は誰ですか?」

で、この前、新入研究室員が来たものだから、いつもの質問を投げかけてみた。すると、新入生は、少しうろたえながら、

「ディオゲネス……です……かねぇ」

と答えよった。

ディオゲネス……誰?……知らんがな……

「名前からして、古代ギリシアだな」ととっさに思い、知ったかぶりで、

「あ、あのソクラテスの弟子の」

とだけ言っといた。まぁ、古代ギリシアならば、ほぼ全員ソクラテスの弟子だ。すると学生はウィキペディアで確認しながら、

「ああ、そうみたいですね」

と答えよる。ビンゴだ!

「ディオゲネス……知らないなぁ」と言いそびれた私は、そのまま、

「で、ディオゲネスは、なにした人だったっけ? ちょっとど忘れしてしまったなぁ」

と、あたかもつい最近までよく知っている人だったんだけど、ただ今、一時的に忘れしていますよぉ的な自分を演出してみた。すると学生は、それをいぶかしげることもなく、

「樽に入っていた人ですよ。」

と答えよる。私は、かなりうろたえた。斜め上どころではない回答だ。

「樽……に……入ってたの?」

「はい、樽に入っていました」

「で、樽で何してたの?」

「樽で、生活していました」

「……で、それのどこがすごいの?」

「さぁ? でも、樽で生活ってすごくないですか? 先生、樽で生活してませんよね?」

・・・・・・確かに、私は樽で生活していない・・・・・・ディオゲネス・・・・・・私の完敗だ!

で、この会話の後、敗北感を携えながら研究室に帰り、机に座り、目を閉じ、熟考した。

実を言うと、敗北のショックを引きずるというよりはむしろ、エンタープラターとしての才能が再び開花してしまったのだ!またまた、ビッグビジネスチャンスの到来だ!

それでは聞いてください! ディオゲネス プロモーション。

西条で“樽”といえば、創業大正元年 西条駅前 「お菓子のさくらや」の樽最中(酒樽の形を模した最中)である。これは、もうすでに東広島市民には常識のことだろう。東広島市以外の人は、覚えて帰ってください。

そこで、アントレプレナーの私としては、樽最中のプロモーション展開を以下の通り提案したい。

提案は、至極シンプル。恋するフォーチューンクッキー方式を樽最中に採用するのだ! つまり、とてもレアな確率で、樽最中の中に、フォーチューンを忍ばせるのである。忍ばせるフォーチューンは、ディオゲネス人形だ!さすれば、例えば樽最中をご賞味中の老夫妻が、

「あら、おじいさい。ディオゲネスが口からはみ出ていますわよ。きっといいことがございますね」

とか、思春期の難しい年代を持つご家庭では、

「○○さん。先日お土産でいただいた樽最中ですが、中からディオゲネスが出てきましてね。中学生の娘がキャッキャ、キャッキャと喜びましてねぇ。例のお取引、○○さんにお願いしたいと思っておりましてねぇ」

みたいな感じで取引が成立しちゃったり、あるいは、土管のつまれた空き地で樽最中を仲良く食べているジャイアンとのび太のうち、のび太方にディオゲネス エクスペリエンスが到来し、結果として、

「俺のディオゲネスは俺のもの、お前のディオゲネスは俺のもの」

と、ジャイアンに取り上げられちゃったりするのである。するに決まっているのである!

さて、「さくらや」様にいたりましては、この記事をお読みになり、勝手にディオゲネス方式を採用されたといたしましても、私は何とも思いませんので、ぜひお話をおすすめいただければ、うれしゅうございます。後は、お任せいたしました。

アディオス

2019年05月15日