下の子は、まだ小学4年生だというのに、せっせと塾に通っている。
まだ小学4年生だというのに、夜9時まで塾で勉強している。
あまつさえ、塾の先生からは、「復習が足りてない」と言われ、家に帰っても勉強せなあかん。一方、その頃の私はというと、踊りを踊り、それを上の娘に見せつけるなどして、極上の無駄な時間を過ごしておる。
で、夜9時に塾が終わってから小学4年生が一人で家に帰るのは不憫なので、迎えに行くことにしている。娘と違い、私は夜9時には、踊りを踊るなどの自由を満喫し、なんならば踊りを踊ることで十分忙しいのではあるが、「踊りを踊るがために、迎えに行くことができない」という理由は通らないであろうとの常識的な感覚も持ち合わせている成熟した大人でもある。
で、9時の15分くらい前には塾に着いているようにしているのだけれど、どうしても15分前には着いていないといけない理由があり、なぜならば私にはその15分の間にしなければならない重要なルーチーンがあるからである。いわゆる五郎丸。
で、そのルーチーンというのは、塾は結構街中の賑々しい、というか、まぁ人通りも多いところにあるので、近くにバーがあって、まだ9時くらいはそれほど混んでいないそのバーは結構開放感が全開で、全面ガラス張りになっていて、中の様子が伺えるしくみになっていて、そのしくみを利用して、バーの壁にかかっている大型テレビに映し出されるカープの戦況を確認することである。9時前ともなると、野球も佳境を迎えるころである。
ただ、バーの外からおっさんがバー内を物色する姿はおぞましいことはよく理解しており、そういう現実感覚・社会通念も持ち合わせた成熟した大人たる私は、あまり長く見続けると、叱責を買うことにもなりかねないし、そこまでに至らなくてもバーの従業員、お客様に不快なお気持ちを与えることにもなりかねないので、大概点数を確認するくらいで終わりにすることにしておる。それに、私にはまだやらねばならぬ別のルーチーンがある。
バー(のガラスの前)から塾にまで戻ってきた私であるが、紹介が遅くなって申し訳ないけれども、その右手にはボールネンドでもらったスモールトートが握られていて、その中にはなんと、縄跳びがはいっておる。なわとびる。
で、セコンドルーチンは、二重跳びをなるべく多く跳び続ける、である。調子がいいと、30回くらい跳べるのだが、30回も跳ぶと、跳んだ後、めまう。憔悴しきってへたり込んでいるときに、大概娘が塾を終え出てくる。直前の15分間に何があったか知る由もない娘は、憔悴しきった私の姿だけを見て、それまでの時間必死に勉強してきた自分とダブらせながら勝手に、仕事に勤しんでいる理想の父親像を描いてくれ、うるんだ目で
「疲れている中、迎えに来てくれて、ありがとう」
などと言ってくれる。二重跳びなんだけどね。
ただ、娘の解釈は誤っているものの、自分にとっては都合のいいものであるため、卑怯で汚れた魂を持つ私は、あえて訂正することはなく「まぁな、気にするな」とだけ言って、いっしょにお家に帰る。
実はこの後、お家に帰るまでに、別のルーチーンがあるのだが、みなさんも、おなかがすいたころだろうから、今日のところはこれで勘弁してあげます。
アディオス!