ツイと街中を歩いていると、彼がおもむろに、
「貝食べますか?」
と尋ねてきた。「貝食べますか?」…… まず日本では聞くことのない会話に驚きながら、サイドウォークに眼をやると、なにやら女性が貝を煮ておる。
よく見るとそんなにおいしそうではないけれども、意外にこういうのがおいしいのかもしれないので、試しに貝を賞味することとした。
で、貝を煮ている女性に近づくと、女性の向こう側にいすが並べてあって、なんとそのいすは既にお客さんで埋め尽くされていた。
「貝、人気あるんだな。」
と思いながらも、まぁ、待ってまで食べるのもいかがなものかと思ったので、貝を食べるのはよすことにした。よく見るとそんなにおいしそうではないし。
で、貝の向こうに、ナゾ料理を売っている店があって、とりあえず、貝の代わりに謎料理を食べることにした。謎料理店も盛況だったけれども、われわれが座るくらいのいすは残されていた。
無造作に置かれているいすに腰掛けて周りの客を見ると、ほぼほぼ女子だった。私とツイ以外、女子だった。ナゾ料理は、茶色くてインスタ映えはしそうに無いが、それでもベトナム女子を鷲づかみにしているらしい。
で、ナゾ料理の正体は全く分からないのだけれども、かなりおいしかった。スイーツでは無く、塩辛い系の味。別に女子だけでなく、男子にもモテそうな味。
ツイに食べ物の名前を聞いたけれども、ツイは笑いながら、
「知らないねぇ」
とだけ言っていた。ナゾ料理がこれだけおいしいのならば、貝も十分おいしいのだろうけど、おなかも膨れたことだし、貝を食べるのはやめにした。
アディオス