出生数中位推計値(各年) | <-------- 補正値、死亡率、推移確率 v 各学年人口推計値 | <-------- PT比(83年PT比*40/45) v 児童生徒数推計値 | v 教員数推計値(各年)----->5年間の教員増減------------+ v 教員需要数 (各5年間) ^ 教員年齢構成・離職率----->5年間の退職者数推計値------+ (定年退職者+定年前退職者) 図1 潮木(1985)の教員需給モデルの概要(a)児童生徒数推計値までの手続き
表1 潮木(1985,1992)の推計値と採用数実績 +----+-----------+-------------------+-------------------+-------------+ | | 資 料 | 小学校(対象年) | 中学校(対象年) | 小+中学校 | +----+-----------+-------------------+-------------------+-------------+ | | 潮木(1985)| 16,917人(1986-90) | 10,295人(1986-90) | | | 推 | 潮木(1992)| | | 11,922人 | | 計 | | | | (1989-93) | | 値 | 潮木(1992)| | | 14,198人 | | | | | | (1994-98) | +----+-----------+-------------------+-------------------+-------------+ | | 学校教員統| 13,038人(1985年度)| 14,551人(1985年度)| 27,589人 | | | 計調査報告| (うち公立 12,846)| (うち公立 14,024)| (公 26,870) | | | 書 | 12,480人(1988年度)| 9,487人(1988年度)| 21,967 | | | (年間, | (うち公立 12,294)| (うち公立 8,910)| (公 21,204) | | | 国公私立)| 16,229 (1991年度)| 12,019 (1991年度)| 28,248 | | 採 | | (うち公立 16,048)| (うち公立 11,386)| (公 27,434) | +----+-----------+-------------------+-------------------+-------------+ | | 年度末教員| 11,800 (85年度末)| 13,228 (85年度末)| 25,028人 | | | の人事異動| 11,125 (86年度末)| 11,370 (86年度末)| 22,495 | | 用 | の概況 | 11,239 (87年度末)| 8,140 (87年度末)| 19,379 | | | | 14,266 (88年度末)| 9,698 (88年度末)| 23,964 | | | (4,5月| 14,661 (89年度末)| 9,965 (89年度末)| 24,626 | | 数 | 公立のみ)| 15,235 (90年度末)| 10,529 (90年度末)| 25,764 | | | | 11,856 (91年度末)| 8,234 (91年度末)| 20,090 | | | | 10,633 (92年度末)| 6,983 (92年度末)| 17,616 | | 実 | | 8,853 (93年度末)| 5,876 (93年度末)| 14,729 | | | | 7,610 (94年度末)| 5,846 (94年度末)| 13,456 | +----+-----------+-------------------+-------------------+-------------+ | | 公立学校教| 11,543人(1986年度)| 12,998人(1986年度)| 24,541人 | | 績 | 員採用選考| 10,784 (1987年度)| 10,943 (1987年度)| 21,727 | | | 試験の実施| 10,510 (1988年度)| 7,673 (1988年度)| 18,183 | | | 状況につい| 13,938 (1989年度)| 9,130 (1989年度)| 23,068 | | | て | 14,039 (1990年度)| 9,509 (1990年度)| 23,548 | | | | 14,131 (1991年度)| 9,869 (1991年度)| 24,000 | | | (5月1日迄 | 10,987 (1992年度)| 7,839 (1992年度)| 18,826 | | | 公立のみ)| 9,413 (1993年度)| 6,499 (1993年度)| 15,912 | | | | 7,784 (1994年度)| 5,294 (1994年度)| 13,078 | | | | 6,742 (1995年度)| 5,414 (1995年度)| 12,156 | +----+-----------+-------------------+-------------------+-------------+(3)潮木モデルの検討
表2 潮木推計値と実績値の比較(東京都の小学校) +-------------------------+---------------+--------------------------+ | 変 数 | 潮木推計(1985)| 実 績 値 (資料) | | | (ケースU) | | +-------------------------+---------------+--------------------------+ | 60年度児童数 | 860,021 | 882,702 (基本調査) | | 65年度児童数 | 655,971 | 709,140 | | 5年間児童数増減 | -204,050 | -173,562 | +-------------------------+---------------+--------------------------+ | 60年度教員数 (1)| 33,141 | 35,614 (基本調査) | | 65年度教員数 (2)| 28,438 | 32,291 | | 5年間教員数増減 (3)| -4,703 | -3,323 | +-------------------------+---------------+--------------------------+ | 61ー65定年退職者数 (4)| 6,674 | | | 年平均定年前退職者数 (6)| 378 | | | 5年間退職者数合計 (8)| 8,564 | 6,629(退職者,年度末異動) | | (年平均退職者数) | 1,713 | 1,326(同上、年平均) | | | | 1,331(離職,教員調査88年) | +-------------------------+---------------+--------------------------+ | 年平均教員需要数 (7)| 772 | 661* | | | | 519(採用,年度末異動) | +-------------------------+---------------+--------------------------+ (注:潮木(1985),9頁の第1表及び57頁を元に作成。*の数字は、実際の値を ((3)+(8))/5で求めた数値である。ケースUは、昭和60年度から65年度 にかけて学級定員の改善が行われた場合である。この表2から、それぞれの推計値について、以下のようにまとめられる。
表3 昭和56年11月中位推計値と実際の出生数 +-------+-------------+--------------+-------+ | 年 | 56年11月中位| 出生数実績 |推−実 | | | 推計値(0歳)| |計 績 | +-------+-------------+--------------+-------+ | 1981 | 1,534 千人 | 1,529,455 | 5千 | | 1982 | 1,477 | 1,515,392 | -38 | | 1983 | 1,430 | 1,508,687 | -79 | | 1984 | 1,393 | 1,489,780 | -97 | | 1985 | 1,366 | 1,431,577 | -66 | | 1986 | 1,356 | 1,382,946 | -27 | | 1987 | 1,357 | 1,346,658 | 10 | | 1988 | 1,364 | 1,314,006 | 50 | | 1989 | 1,377 | 1,246,802 | 130 | | 1990 | 1,395 | 1,221,585 | 173 | | 1991 | 1,421 | 1,223,245 | 198 | | 1992 | 1,453 | 1,208,640 | 244 | | 1993 | 1,491 | 1,188,282 | 303 | +-------+-------------+--------------+-------+さらに、推計期間内のPT比をどの程度に設定するかが、いま一つの問題である。潮木は、昭和65年度に40人学級が実現している場合、その時のPT比として、58年PT比に40/45(0.8888)を掛けた値を用いている。ある学校1学年の児童数が無限の値であるならばこれでよいが、実際には、多くても1学年数百人である。40人学級になれば、生徒数を40で割った時、剰余が出れば1クラス増えるから、教員がもう1人必要となり、実際のPT比は、40/45よりも小さな値になろう。このため、潮木(1985)のPT比の推計値は過大推定となり、教員数推計値は過小推計となる。
図2 出生数の推計誤差(略)
(b)退職者数推計の問題 次に、潮木モデルの第2の要素、退職者数の推計を検討してみよう。前掲の表2から明らかなように、退職者数の推計誤差が大きい。潮木推計では、東京都における61-65年の年平均退職者数推計値は、1,713人とされている。「年度末異動の概況」によればこの期間の退職者の年平均値は1,326人、「教員調査」によれば1988年度間の離職者は1,331人となっている。潮木推計は400人近い過大推計になっている。都道府県別に退職者数を比較検討したのが表4である。潮木推計は「教員調査」(1988年度間)よりも全国で約4,000人過大推計であることがわかる。
表4 潮木(1985)の退職者推計値と実績値 (略)
なぜ、実際の退職者は推計よりも少なかったか、その原因を3つの観点から検討してみよう。まず、第1に、推計期間中の離職者率である。『教員調査』の「異動調査」から、性別・年令階級別離職率の1980,1986,1992年の3時点の推移を図示したのが図3(小学校)である。小学校の場合、男子の離職率はほとんど不変だが、女子の場合、1986年の離職率は、50歳以上55歳未満の年齢階層で1980年を上回り、1992年には下回っている。従って、その後の定年前離職者数推計に1980年の年齢階層別離職率を使用したのは、結果的には妥当であったといえる。なお、中学校の場合も女子は50歳未満の者の離職率は増大しているが、50歳以上55歳未満の者の離職率は1980年と殆ど同じである。
以上要するに、推計期間中(1986-1990年)の離職率は、女子を中心に低下したが、推計の基準年である1980年と比較すればこの期間の離職率は必ずしも低くない。従って、離職率は決定的な要因とはいえない。
図3 小学校教員の年齢別離職率の推移(略)
なお、退職者に関する資料にも問題がある。定年退職者数の推計に使用する『教員統計』の「学校調査」の年齢別教員数は、10月1日現在の満年齢による人数である。公立学校の場合、満60歳になった年度の年度末に定年退職するから、定年退職すべき人の母数として使うには、半年のずれがある。ここから若干の誤差が発生しうる。なお、潮木モデルでは、全体の1割程度を占める30歳以下の若年退職者を十分に考慮していないが、実際の退職者数推計値は過大推計になっているから、実際上、差し支えない。
第3に、異種の学校間の人事異動を調べてみよう。実際にどの程度の学校間の異動があったかは、推計値ではあるが、「人事異動の概況」で知ることができる。平成3(1991)年度末の概況によれば、小学校への転入者は全国で817人、東京都で48人であった。数字としては小さい。『教員調査』の「教員異動調査」によれば、1992年度内に全国で、県内の異種の学校から小学校に転入した者は5628人、県外から転入した者は390人、合わせて6018人となる。小学校から異種の学校へ転出した者を含めて計算しても、小学校への転入者は全国で112人でしかない。つまり、学校間の人事異動の数はそれほど大きくはない。異なる学校種間の人事異動の状況をモデルの中に組み込むことは簡単なことではないし、この程度の数字であれば無視して差し支えない。
以上、検討の結果、児童数推計については当時の厚生省人口推計値の誤差に原因があること、PT比の推計方法に若干の問題があることを指摘した。しかし、退職者数の誤差については、原因は不明である。
年齢階級別都道府県別人口中位推計値(5年おき) | v 児童生徒数推計値 |<-------- PT比(毎年0.5926%改善すると仮定) v 教員数推計値(各年)----->将来5年間の教員増減数--------+ v 年齢階級別離職率 教員需要数推計値 | (各5年間) V ^ 年齢階級別教員数--------->5年間の退職者数推計値--------+ (定年退職者+定年前退職者) 図4 本研究のモデルと変数潮木モデルと異なる第1の点は、児童生徒数推計の元になる年齢別人口のデータである。潮木は、各年の出生数から出発し、小学校への入学までの「死亡率」などいくつかの補正を行っている。本研究では、厚生省人口問題研究所の年齢階級別(5歳単位)都道府県別人口中位推計値(平成4年10月推計・年齢別純移動率が縮小した場合)を使用した。この推計値は、1990年以降5年おきに2010年まで示されている。このデータは、将来の都道府県間の人口移動も考慮している。そのため、潮木のような学年間の推移確率や「死亡率」の補正をしなくても済むという長所がある。将来各年の小学校および中学校の児童生徒数推計値は、表5の児童数推計式を使って、各県の5歳刻みの推計人口から計算した値に、その式で推計される1994年の児童数で1994年の児童数実績値を割った調整値を掛けたものを使用した。2) 中学校生徒数の推計式は省略するが、原理的には全く同じである。3)
表5 推計人口から児童数の推計式 +---------------------+-------------------------------------------------------+ | 年齢階級別人口推計値| 各年の児童数推計式 | +-----+-------+-------+-------------------------------------------------------+ | 1995| 0- 4 | P95(1)| 1995| FSTUD(1)= P95(2)*15/20+P95(3)* 9/20| | 年| 5- 9 | P95(2)| 1996| FSTUD(2)= P95(2)*19/20+P95(3)* 5/20| | | 10-14 | P95(3)| 1997| FSTUD(3)= P95(1)*3/20+P95(2)*20/20+P95(3)* 1/20| | | 15-19 | P95(4)| 1998| FSTUD(4)= P00(2)* 7/20+P00(3)*17/20| +-----+-------+-------+ 1999| FSTUD(5)= P00(2)*11/20+P00(3)*13/20| | 2000| 0- 4 | P00(1)| 2000| FSTUD(6)= P00(2)*15/20+P00(3)* 9/20| | 年| 5- 9 | P00(2)| 2001| FSTUD(7)= P00(2)*19/20+P00(3)* 5/20| | | 10-14 | P00(3)| 2002| FSTUD(8)= P00(1)*3/20+P00(2)*20/20+P00(3)* 1/20| | | 15-19 | P00(4)| 2003| FSTUD(9)= P05(2)* 7/20+P05(3)*17/20| +-----+-------+-------+ : | : (略) : | | 以下略 | 2012| FSTUD(18)= P10(1)*3/20+P10(2)*20/20+P10(3)* 1/20| +-----------------------------------------------------------------------------+第2に、将来のPT比をどの程度に設定したら良いかが問題になる。教職員配置改善計画は、第1次計画(昭和34ー38年度)以降続けられており、現在は第6次計画(平成5−10年度の6年間)の途上にある。各計画期間内にPT比がどのように改善してきたかを鳥かんしたのが図5である。これより、改善計画に歩調を合わせるようにしてPT比が改善していることが一目瞭然である。
図5 戦後における小学校のPT比の改善状況(略)
本研究では、第6次計画期間中に、小学校と中学校の教員PT比は、いずれも各県均一・各年均一に年率0.5926%で改善するものとした。同計画では、小学校・中学校については、平成5年度から10年度までの6年間に27,031人の教職員定数が増加するよう計画されている。このうち学校栄養職員分1,170人および事務職員分1,389人分を除いたものに、これとは別枠で設けられている研修等定数1,000人分を加えた25,472人が、6年間に増員されることになる。1年平均で4,245人の増加となるが、これは、1993年の小学校および中学校の本務教員数716,331人を分母として、年率0.5926%に相当する。
第3に、定年退職者および定年前退職者の計算にあたっては、その次の5年間には、その前の5年間迄に退職した者を除いた残りの者に対して年齢別離職率(男女計,1992年)を掛け合わせて退職者数を推計した。将来の離職率は1992年実績通りとし、各県同一値とする。なお『教員調査』には各県の年齢別教員数の実数は掲載されていないため、教員数は、年齢階層別(5歳単位)構成比(%)に「学校調査」の本務教員数(各県・国公私合計)を掛けることによって計算した。 4)
本論文では、将来人口動態が中位推計値に従った場合を中心に分析結果を報告する。また、第6次教職員配置改善計画が1998年度で終了しそれ以後のPT比の改善がないケースと、1999年度以後もそれ以前と同様のペースでPT比が改善するケースの2通りについて、推計を行う。