県立広島病院小児感覚器科では初診受付の制限を実施しています

 
 

令和2年1月14日より未就学児の初診受付を承ります。

県立広島病院小児感覚器科では令和元年10月から0歳児と年長児を除いて初診受付をお断りしていましたが、令和2年1月14日より未就学児に限り初診受付を承ります。
それでも初診申し込みをされて、まだ初診されていない方は80人弱おられます。引き続き年齢(学年)によるトリアージを実施いたしますので、お子さんの状態によっては1年以上お待たせすることもあります。保健センター、保育園、幼稚園におかれては、引き続き診断前アプローチにご協力いただきますようにお願い申し上げます。
以下に、「ことばが遅い」「発音がわるい」子を当科に紹介したいのに、紹介できない状況についての対応策をまとめました。かなり私見が交じっていますが、ご参考になれば幸いです。

 なぜ年齢でトリアージをするのか


言語を操作するための能力の発達(教科学習とは違います)は、一定の年齢が来ると頭打ちになって発達しなくなることは知られています(黒)。なんらかの理由があって言語発達が阻害されると赤のように言語発達は遅れてしまいます。たとえば問題点(難聴など)を1歳ごろに指摘して正常な発達ラインに乗せることができれば緑のように言葉は発達しますが、グレーのように6歳ごろに問題を指摘して正常な発達ラインに乗せても言語能力そのものは伸びません。言語療法などによって言語発達障碍そのものを改善することは難しくなり、障碍があることを前提とした支援が必要となります。
新生児聴覚スクリーニングなどで難聴は0歳児でも見つけることが可能となりましたが、言語発達に遅れがあるかどうかはその子の言語理解が進み、しゃべってみるようにならないと発見できません。どうしても3歳前後になってみないと、言語発達が遅れているのかどうかの判断すらできないことになります。それでも、早く見つけることができれば、それだけ子どもたちにかける負担を減らすことができます。
このような事情に加えて、学校での負担を少しでも軽減できる可能性を探る、という意味で年齢によるトリアージを年長さん→年中さん→年少さん→小学1年生→年少さん未満のお子さん→小学生とさせていただきました。なお、0歳児は他院でも診ていただけるところが少ないこともあり、このトリアージから外しています。
では、トリアージ順位の低い、例えば年少さんは放っておくのか、というとそんなわけにもいきません。未就学のお子さんについては、以下に列挙します「診断前アプローチ(介入)」を始めておいていただいて、当科や療育施設での診察順番をお待ちいただければ大変助かります。 

自閉スペクトラム障碍?


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自閉スペクトラム障碍としての特性が言語発達に影響するとすれば、三項関係が成立するかどうかが、もっとも重要になると考えています。
例えば動物園でお母さんと子どもがキリンさんをみている場面を想像してください。お母さんがキリンさんをみつけて指さしたら、子どもはそこに視線を向けて(共同注意)、キリンさんを確認したことを目線で知らせてきます。そのことをお母さんが気付いて子どもに目を向ければ、「子ども」「お母さん」「キリンさん(対象物)」の三項に関係が生まれます。これを「三項関係の成立」と言います。
三項関係が成立している間に、お母さんが「キリンさん、首が長いね〜」と言い、それを言っている時の表情を含めて子どもが真似をして、まるで鏡に写ったかのように「きりんさん、くび、ながいね〜」と言えば(ミラーリング)、「キリンさんは足も長いけど、首が長い動物なんだ」という概念が子ども中で形成されます。
この一連のコミュニケーションの基本的な動作を繰り返して言語は発達していきます。自閉スペクトラム障碍は三項関係が最も成立しにくい発達障碍になりますが、注意欠陥多動障碍で対象物からすぐに目が外れてしまって三項関係が途中で崩れるなどしてもやはり言葉が遅れます。
重要な点は難聴や弱視があっても、三項関係の成立が不安定になることです。難聴や弱視であれば補聴器をつける、眼鏡をつけることで劇的にコミュニケーションは改善しますので、その疑いがあったら積極的に検査を受けさせるようにしてください。
なお、県立広島病院小児感覚器科は難聴や言語発達を評価して介入することはできますが、自閉スペクトラム障碍や注意欠陥多動障碍を診断したり、薬物療法の適応を判断することは苦手です。 


発音がわるい?


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声を出すところ(声帯)はブザーのような音しか出していません。それが色々な発音になるためには舌や軟口蓋(俗に言う「のどちんこ」)がしっかり動かなければいけません。
舌も軟口蓋も筋肉の塊ですから、まだ小さなお子さんでは筋力が足りないために発音がはっきりしないことも多いです。舌を口蓋(口の天井)に押しつけることができなければ全ての子音が形成されず、母音だけでしゃべっているような発音になります。年少さんで子音がまったく出ないお子さんは要注意です。

年中さんになる前には舌の奥を口蓋に接触させることができるようになりカ行が言えるようになりますが、カ行がタ行(ガ行がダ行)に置き換わる子ではそれができていないと思ってください。
年長さんになる前には舌の前半分を口蓋につけてラ行が言えるようになりますが、それができないとラ行はダ行に置き換わります。
サ行の発音は舌先の微妙なコントロールが必要なので、小学生に上がるときにまだ言えていない子も多いのですが、発音の練習をしてから小学生になることを考えるとサ行がタ行やチャ行に(ザ行がダ行に)置き換わる子は年長さんの夏休みまでに言語療法の方針を決めるのが理想です。
舌や軟口蓋を鍛えるためには

  • ラッパや笛、鍵盤ハーモニカを吹かせましょう
  • 吹き戻しを伸ばしたままで、縮まないように頑張らせましょう
  • 大きなシャボン玉を吹かせましょう
  • 吹き上げパイプで遊びましょう
  • 奥歯のうえにかっぱえびせんやビスコ、小さなおむすびを直接乗せて、かじり取らせたら、歯やほっぺたについたお菓子やご飯を舌先でとらせましょう
  • 舌や軟口蓋の力が弱い子は食べるのも下手です。特に4歳までのお子さんは吐き出すことも下手ですから食事中に食べ物をのどに詰まらせることに注意しましょう 

2歳前後の子が言っていることはなんとなく分かっていて、指さしをした後にこちらを見てくる。でもしゃべらない(何か声は出ているけどわからない)。
3歳前後の子が宇宙語をさかんにしゃべっている。癇癪をすぐに起こす。


 ことばをはっきり聴き取ることができない子が、このような応答になりやすいです。
  • 真っ先に難聴を否定することが重要です。耳鼻科に紹介をしてください(耳鼻科で聴力検査を受けたかどうかを必ず確認してください)。
  • 手が届く範囲に近づいてから話しかけるように、周囲の大人が気をつけてください。話しかけている時には、何のことを話しているのかを必ず指さししてください。
  • ジェスチャーを多用してください(時にベビーサインや手話をお願いすることもあります)。この目的は子どもの理解を容易にすることもあるのですが、子どもが言葉で表現しきれない時にジェスチャーやベビーサインで表現をさせることで、子どもが何を伝えたいのかを表現させる手段(ツール)を身につけることにもあります。周囲の大人がジェスチャーやベビーサインを統一すること、さらにジェスチャーやベビーサインをしているときにそれに対応する音声を必ず発していることがポイントになります。子どもが思うように表現できるようになると癇癪が減っていきます。 

4歳前後の子の発音がめちゃくちゃ。自分勝手な行動が多い。
5歳半を過ぎたのに文字に興味を持たない。


 ことばを文字単位に正確に聴き取れていない子がこうなることが多いです。聴くことが苦手ですから
  • 真っ先に難聴を否定することが重要です。耳鼻科に紹介をしてください(耳鼻科で聴力検査を受けたかどうかを必ず確認してください)。
  • 手が届く範囲に近づいてから話しかけるように、周囲の大人が気をつけてください。話しかけている時には、何のことを話しているのかを必ず指さししてください。
  • 階段を一段ずつ上がりながら(双六のマスを一マスずつ進みながら or 拍手をしながら)、言葉を1音ずつ言わせる練習をします。その直前に普通に言うことがポイントになります(例、「じてんしゃって言うよ、じ・て・ん・しゃ」)。
  • ガチャガチャして話を聴いていない子にはトランポリンや縄跳びをしながら、あるいはバランスボールに座らせたまま、お話をすると話が通じやすくなることがあります。机にグデーってしているお子さんには、そのままグデーってさせた話しかけてみてください。いずれも必要があって、ガチャガチャしていたり、グデーってしていることがあります。
  • 特にガチャガチャ系のお子さんは、同時に見ることが苦手になっていることが多いです。「絵を描きたがらない」「空気を読まない」も確認してください。 

3歳前後でまったくしゃべらない。悲しそうな目でこちらを見てくる。
4歳を過ぎたのにハサミを使えない。ずっとしくしく泣いている。どうしたの?と訊いても何も言わない。


発語困難症という病態かもしれません。時に場面緘黙症が混じっていますから、「言えるでしょ、言ってごらん」は禁句です。その子を追い詰めるだけです。「〇〇って言いたいの」とか「△△ってことかな」とか、その子の代弁をしてみてください。発語困難症であれば代弁してもらったことが当たっていれば明確に「そうそう、その通り」と嬉しそうにします。そこが自閉スペクトラム障碍や知的障碍のお子さんとは違います。
自分の言いたいことがうまく言えないので、ジェスチャー表現をさせたいところですが、不器用な子が多く、ジェスチャーをしようにも手を上手く動かせません。では絵を使って表現をさせようとしても、手が不器用なので絵を描くこともできません。本人としては理解はできているのに何をしても相手に伝わらないので、ずっとしくしく本当に悲しそうに泣くしかありません。
  • できないことを自覚しています。傷に塩を塗るようなことは止めていただきたいのですが、何かの拍子に上手くできたときに褒めすぎても良くないと言われています。「いつかできるよ」ぐらいのスタンスで程よくおだててください(難しいです)。
  • リズムがキーワードになります。リトミックをする、手遊び歌をする、を積極的に取り入れてください。左右の手が非対称に動くものが良いです(「大きな栗の木の下で」より「アルプス一万尺」)。リズムが取れないから発語困難症になっているので、最初からは上手くできません。また上手くできていないことを自覚しています。導入直後は後ろから手を持ってリトミックをする、手を繋いでトランポリンの上で強制的にリズムを刻ませながら話すなど誘導的にリズムを刻ませることが必要になることもあります。
  • リズムを刻むという意味では、その場で足踏み行進をさせながら歌を歌うのも良いです。これも最初からは上手くないですが・・・
  • ミラーリングが下手な子も多いです。見本をみながらのお遊戯、身体全体を使ったまねっこ遊び(相手のポーズの真似をする)は重要です。
  • 手先の不器用さも後々問題になることがあります。でもやらせないと上手にはなりません。指がきれないハサミや6B の三角鉛筆などを使って、切り抜きをしたり絵を描かせたりしてみてください。 

4歳を過ぎて、絵を描かない・描けない。人の絵をみてそれを写そうとしている。
よくしゃべるのに会話がかみ合わない。空気を読まない。


 

視覚情報をうまく処理できないとこうなることがあります。
Body imageが育っていないことが多く、人の絵を描くと顔の外に鼻をかいたり、手がとんでもないところから生えてきたりします。自分の身体のBody imageもないので、すぐに人にぶつかったり、なんでもないところでこけたりすることも多いです。
発語困難症も絵が描けませんが、このタイプで特徴的なのは見本をコピーすると絵を描くことができることです。絵を描かせているときに一生懸命隣の子の絵を覗き込んでいる子はいませんか?
視覚情報がうまく処理できないので、キリンを見て「足が長い」と言います。でも足も長いので「違うよ」とは言えません。考えてみれば、なぜ「キリンは首が長い動物」と言わなければいけないのでしょうか。我々が言葉の概念を形成する上でこの暗黙の了解が必要になります。暗黙の了解には人の視線の方向を感じるなどの高度な視覚情報処理が必要になりますが、それができないので言葉に含ませている概念が一般的なものからずれてしまい、「キリンは足が長い動物」として話を続けるので、会話がかみ合わなくなってしまいます。また、暗黙の了解が取れないことで「空気を読まない」という評価を受けやすくなります。

  • 遠視性弱視や乱視があるとこうなります。真っ先にこれらを眼科で否定してもらってください。
  • 視線を動かすことそのものが上手ではないことがあります。小児感覚器科で好んでする遊びは、ボールプールのボールを全部ひっくり返して「青のボールを全部拾ってきて戻して」というボール拾い競走です。青が済んだら黄色、黄色が済んだら緑(順番はどうでも良いのですが・・・)と進めますが、指定の色が拾い切れていないのに、次の色のボールを拾おうしますので、取り残したボールを少し遠くから指さしてください。
  • 「アンパンマンを探せ」「ポケモンを探せ」「ミッケ」で特定のものを探すのは良い練習です。
  • 間違い絵探しも良い練習になりますが、違う場所をみつけたら「こっちの方が鳥が多い」などなるべく言葉で表現させるようにしてください。
  • 徹底して指さしをしながら話しかけてください。見えているものをなるべく言葉で表現するようにしてください。動物園などで遠くのものを指さすときにはスマホなどで写真をとって、何に指さしをしているのかを教えるようにしてください。
  • 点を繋いだら絵になるような課題(点つなぎ図形)、曲線をなぞるような課題(なぞり迷路)を機会があればやらせてください。
  • 数字に弱くなる子が多いです。おやつの山から「3つだけお皿に移してから食べて」など、物を実際に移動させながら数を数えることを練習してください。 

4歳ぐらいからどもり始めた


吃音症という発達障碍を発症したのか、他の言語発達の問題があってしゃべるスピードと思考スピードがかみ合わなくてどもっているのか、正直なところ未就学児では分かりません。様子を見ていたら「どもらなくなった」ということも多く経験するところですが、実際にはそうならない子もいます。
基本的にはゆっくり話しかけて、ゆったりお話をさせる、が重要なのですが、時に早口でないとお話ができない子もいます。結局本人任せになりますが、周囲が吃がでていることに慌てふためくことなく、どっしり構えることが肝要です。
ただ集団生活の中ではしゃべりを真似されて傷ついた、などの問題も発生します。この辺りは 菊池良和先生が書かれた「吃音の合理的配慮」LinkIconにとても分かりやすく解説されていますので、参考にされるのが良いと思います。
吃音があると、そのことばかり注目が行きがちですが、ことばの遅れや発音の難しさがあって吃音になっていることもあります。上記のどのタイプでも吃は発症しますので、他の言語症状がないかにもお気をつけください。

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