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画像認識のための高次局所自己相関特徴

上述のように自己相関関数はパワースペクトルと密接な関係があり、定常時系 列データの有効な特徴の一つである。大津等[53]は、画像の認識や 計測のために有効な基本的な画像特徴として、自己相関関数を拡張た高次局所 自己相関特徴を提案し、それらの特徴を多変量データ解析手法を用いて統合し て有効な特徴抽出する画像計測・認識手法を提案した。具体的な応用例につい ては多変量データ解析手法の説明のところで述べるが、ここでは、その準備と して高次局所自己相関特徴について説明しておく。

自己相関関数の高次への拡張は、高次自己相関関数と呼ばれている[45]。 参照点 $\mbox{\boldmath$r$}$ での対象画像の輝度値を $I(\mbox{\boldmath$r$})$ とすと、$N$ 次自己 相関関数は、参照点周りの $N$ 個の変位 $(\mbox{\boldmath$a$}_1, \ldots , \mbox{\boldmath$a$}_N)$ に対して、

\begin{displaymath}
x(\mbox{\boldmath$a$}_1, \cdots , \mbox{\boldmath$a$}_N)
...
...mbox{\boldmath$r$}+\mbox{\boldmath$a$}_N) d\mbox{\boldmath$r$}
\end{displaymath} (8)

で定義される。高次自己相関関数は、次数 $N$ や変位 $(\mbox{\boldmath$a$}_1, \ldots , \mbox{\boldmath$a$}_N)$ の取り方により無数に定義できるが、画像デー タでは、一般に、近くの画素間の局所的な相関の方が重要であると考えられる ので、次数 $N$ を高々 $2$ までとし、変位を参照点 $\mbox{\boldmath$r$}$ の周りの局所 的な $3 \times 3$ 画素の領域に限定する。つまり、局所的な領域内での $3$ 点までの相関関係を特徴とする。これにより、平行移動により等価な特徴を除 くと、2値画像に対して、特徴の数は全部で$25$個になる。図 1$25$ 個の局所パターンを示す。濃淡画像に対しても、同様 に平行移動により等価な特徴を除くと $35$ 個の特徴が得られる。各特徴の計算 は、局所パターンの対応する画素の輝度値の積を全画像に対して足し合わせれ ばよい。こうして計算された特徴は、明らかに、対象の位置に関して不変と なる。また、画像中に複数の対象があった場合、画像全体に対する特徴は、各 対象の特徴の和になる。

図 1: 高次局所自己相関特徴のための局所パターン
\begin{figure}\begin{center}
\epsfile{file=mask.eps,width=6cm}
\end{center}\end{figure}

高次局所自己相関に基づ特徴は、近傍の画素の濃淡値の積を画像全体に対して 足し合わせて得られる非常に局所的な特徴であるので、高解像度の画像から抽 出された特徴は顔の識別のためには細か過ぎるかもしれない。つまり、認識対 象に応じた最適な解像度があると考えられる。栗田等[34]は、認 識に最適な解像度を探索する代わりに、画像ピラミッド[7]の各画 像から抽出した特徴をすべて利用することを提案している。画像ピラミッドは、 高解像度の画像から低解像度の画像までのいくつかの異なる解像度の画像の集 合として構成されるので、画像ピラミッドの各画像から高次局所自己相関に基 づく特徴を抽出すると、それらの特徴の集合には対象の詳細な情報から大まか な情報まで含まれている。しかも、対象の平行移動に関する不変性は、これら の特徴にも引き継がれる。



平成14年7月19日