幼児期の発達を探求する 杉村研究室 

 研究テーマ

  アファンタジア  数の理解  子ども理解  子どもの遊び  過去のテーマ 

 

★アファンタジア

現在、下記の共同研究を行っています。

 科研費 基盤研究(B)  成人のアファンタジアを対象にした研究です。

 科研費 挑戦的研究(萌芽)  幼児・児童のアファンタジアを対象にした研究です。

共同研究で作成しているサイトです。アファンタジアの定義や研究紹介があります。

 アファンタジア研究情報サイト


★数の理解

現在、下記の共同研究を行っています。

 科研費 基盤研究(C)  幼児期における数への自発的焦点化に関する研究です。

数の理解に関連した論文です。


手指の巧緻性に関する研究
● Asakawa, A., & Sugimura, S. (2022). Mediating process between fine motor skills, finger gnosis, and calculation abilities in preschool children. Acta Psychologica, 231, 103771. PDF
● Asakawa, A., Murakami, T, & Sugimura, S. (2019). Effect of fine motor skills training on arithmetical ability in children. European Journal of Developmental Psychology, 16, 290-301. 抄録
● Asakawa, A., & Sugimura, S. (2014). Developmental trajectory in the relationship between calculation skill and finger dexterity: A longitudinal study. Japanese Psychological Research, 56, 189-200. PDF
● 浅川淳司・杉村伸一郎 2011 幼児期における計算能力と手指の巧緻性の特異的関係 発達心理学研究, 22, 130-139. 抄録とPDF
● 浅川淳司・杉村伸一郎 2009 幼児における手指の巧緻性と計算能力の関係 発達心理学研究, 20, 243-250. 抄録とPDF ★2010年度 日本発達心理学会学会賞

指の利用に関する研究
● 浅川淳司・杉村伸一郎 2009 幼児における足し算時の指の利用方略 ─ 短期記憶,手指の巧緻性,たし算成績との関係 ─, 幼年教育研究年報, 31, 103-111.
● 山名裕子・杉村伸一郎 2007 指を利用して計算する子どもに対する保護者の指導 ─ 保護者への予備的調査の結果から ─ 秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要, 29.
● 杉村伸一郎・小山正孝 2006 計算時における指の利用と算数・数学における自己概念との関連 ─ 短期大学生・専門学校生を対象にした質問紙調査による検討 ─ 広島大学大学院教育学研究科紀要 第三部(教育人間科学関連領域), 55, 357-365.
● 山名裕子・杉村伸一郎 2006 指を利用して計算する子どもに対する教師の指導 ─ 教師へのインタビューと探索的調査の結果から ─ 秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要, 28, 145-154.
● 杉村伸一郎・山名裕子 2006 計算時における指の利用と算数・数学能力との関連 幼年教育研究年報, 28, 41-49.
● 杉村伸一郎・山名裕子 2005 幼児の足し算における指の利用 幼年教育研究年報, 27, 89-98.
● 杉村伸一郎・山名裕子 2003 計算時における指の利用とそれに対する指導 — 教職志望の女子大学生による回想と指導に関する信念 — 神戸女子大学文学部紀要, 36, 63-75.

心的数直線に関する研究
●浦上萌・杉村伸一郎 2017/09 幼児における数の位置の見積りは数量表象に基づいているのか? 科学教育研究, 41, 295-302. http://doi.org/10.14935/jssej.41.295 抄録とPDF
●浦上萌・杉村伸一郎 2015/09 幼児期における心的数直線の形成過程の検討,発達心理学研究,26, 175-185. http://doi.org/10.11201/jjdp.26.175 抄録とPDF
●浦上 萌・杉村伸一郎 2013 幼児の数の見積りにおける手がかりの効果 広島大学心理学研究, 13, 219-227.

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★子ども理解

このテーマに関連した論文です。

● 濱田祥子・杉村伸一郎 2022 ADHD 原因と対応気になる子どもの外在化問題に対する保育者の認知と認知傾向のフィードバックの有効性 幼年教育研究年報, 44, 35-47.
● 上山瑠津子・杉村伸一郎 2021 保育における子ども理解を可視化する実践支援 保育学研究 59, 287-298.
● 上山瑠津子・杉村伸一郎 2020 保育における子ども理解のメンタルモデル 質的心理学研究, 19, 175-193.
● 上山瑠津子・杉村伸一郎 2018 保育における子ども理解の研究動向 ―保育者の認知過程の観点から― 幼年教育研究年報, 40, 61-71.
● 上山瑠津子・杉村伸一郎 2015 保育者による実践力の認知と保育経験および省察との関連の検討 教育心理学研究, 63, 401-411. http://doi.org/10.5926/jjep.63.401 抄録とPDF
● 上山瑠津子・杉村伸一郎 2015/10/15 保育者による省察と実践力の認知との関連 ―クラスター分析を用いたグループ間の比較― 幼年教育年報, 37, 107-113.
● 上山瑠津子・杉村伸一郎 2013 保育者の子ども理解の枠組みとしてのメンタルモデル 広島大学心理学研究, 13, 211-218.
● 杉村伸一郎・朴信永・若林紀乃 2009 保育における省察の構造 幼年教育研究年報, 31, 5-14.
● 杉村伸一郎・朴信永・若林紀乃 2007 保育者省察尺度に関する探索的研究(1)− 保育現場における反省的実践 − 幼年教育研究年報, 29, 5-12.
● 杉村伸一郎・朴信永・若林紀乃 2006 保育者省察尺度に関する探索的研究(2)− 省察の3層モデルによる検討 − 広島大学心理学研究, 6, 175-182.
● 若林紀乃・杉村伸一郎 2005 保育カンファレンスにおける知の再構築 広島大学大学院教育学研究科紀要 第三部(教育人間科学関連領域), 54, 369-378.

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★遊びのリスク・ベネフィットバランス

現在、下記の共同研究を行っています。

 科研費 基盤研究(C)  リスクを伴う外遊びが幼児の発達に及ぼす影響:保護者と保育者の意思決定過程の解明

 科研費 挑戦的萌芽研究 保育における遊びのリスク・ベネフィットバランスに関する総合的研究

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過去に取り組んでいたテーマ

空間認知の発達

 学部生の時に認知心理学の講義を受け,ほとんどの人が持っている視覚的イメージを自分は持っていないことに気がつきました。「R」という文字が回転するイメージを描くことができないだけでなく,両親の顔すら心の中に思い浮かべることができないのです。知覚とイメージとは何がどのように違うのか,知覚・記憶・思考という認知過程においてイメージはどのような働きをしているのか,等の疑問が生じました。

 そこで,3回生の時は,「生成したイメージの記憶に関する研究 −系列位置効果と選択的干渉による検討−」というテーマで, 卒業論文では,「短期記憶における視覚的コードの処理 −視覚による構成とイメージによる生成が保持に及ぼす効果−」というテーマで,イメージの性質を認知心理学の観点から明らかにしようとしました。修士論文でも引き続き同様のテーマに取り組むはずだったのですが,いい切り口が見つからないまま時が流れていきました。

 そのような時に,次の2つの実験に出会いました。

 1つの実験では,乳児が見ている前でテーブル上にある複数の隠し場所のいずれか1つにものを隠し,テーブルを回転させたり子どもをテーブルに沿って移動させた後,子どもに隠したものを探索させます(図1参照)。そうすると,乳児は,自己と対象との位置関係が変化したにもかかわらず,自分を基準にして回転や移動前と同じ場所を探索します。このような課題は空間定位課題と呼ばれています。

     
     図1 空間定位課題 Wishart & Bower (1982)より

 もう1つの実験では,幼児の前に3つの山の模型を配置し,子どもが見ている地点以外の地点に人形を置いて,人形から山がどのように見えるかを尋ねます。そうすると,幼児は自分の位置からの見えを答えます(図2参照)。この課題は3つの山問題と呼ばれています。
     
      図2 3つの山問題 Piaget(1956)より

 この2つの実験に出会ったとき,出来上がったイメージの働きを調べるより,イメージの働きがどのように出来上がるのかを調べる方が面白そうで,発達心理学におけるイメージ研究の方が認知心理学よりも魅力的なテーマが出てくるように思えました。

 空間定位課題は知覚・運動的空間の成立を,3つの山問題は表象・操作的空間の成立を調べている課題と考えられます。しかしこれまで,それぞれの課題は別々に研究されてきましたので,一体となっていた物理的空間と心理的空間とが分化して,知覚・行動的空間に加えてイメージ的空間が出現する様子に関しては,ほとんど明らかにされてきませんでした。そこで私は,空間定位課題と3つの山問題の間に,その鍵が埋まっていると考えたのです。

 空間定位課題と3つの山問題は,課題の内容が形式的に類似していているだけでなく,典型的な誤りが自己中心的な定位や見えの選択という点でも類似しています。両者の大きな違いは,空間定位課題では実際にテーブルが回転させられたり子どもが移動させられたりするのに対して,3つの山問題では,心的にテーブルを回転したり自分が移動したりして見えを推測している点にあります。

 心的にテーブルを回転したり自分が移動したりして見えを推測できるようになるには,何がどのように発達しているのでしょうか? 認知発達の理論的観点からも,個人的な興味・関心からも,空間定位課題と3つの山問題の間の発達のコースとメカニズムを明らかにする必要がありました。

 このテーマには,大学院に入学以降,現在まで継続して取り組んでいます。しかし,疑問が解決されるどころか謎が多くなる一方ですので,今後も格闘し続けることになりそうです。

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空間定位に関する研究
● 杉村伸一郎 2003 幼児の空間定位における認知過程の検討 教育諸学研究, 17, 9-22.
● 杉村伸一郎 2000 幼児の空間定位における知覚・運動的過程と表象的過程 心理学研究, 71, 227-233.
● 杉村伸一郎 1999 空間認知の発達における感覚運動的知能と概念的知能の関係 認知科学<6, 381-388.
● 杉村伸一郎 1999 幼児の空間定位における知覚的情報の効果 神戸女子大学文学部紀要, 32, 85-93.
● 杉村伸一郎 1996 幼児の空間定位における知覚的過程と概念的過程 名古屋大学教育学部紀要 教育心理学科, 43, 65-76.
● 杉村伸一郎 1989 幼児における覆われた対象の移動の理解 教育心理学研究, 37, 179-185.

再定位に関する研究
● 多田幸子・杉村伸一郎 2011 幼児における布置参照枠の利用:模型空間での再定位課題による検討 発達心理学研究, 22, 1-10.
● 多田幸子・杉村伸一郎 2009 模型空間における幼児の再定位:幾何学的情報とランドマークの利用ならびに身体移動の効果 発達心理学研究, 20, 134-144.
● 多田幸子・杉村伸一郎 2008 模型空間における幼児の再定位 ─ 幾何学的情報の利用の再検討 ─ 広島大学心理学研究, 8, 263-269.
● 多田幸子・杉村伸一郎 2007幼児の模型空間における再定位研究の展望 広島大学心理学研究, 7, 255-272.

イメージに関する研究 3つの玉問題
● 村田観弥・杉村伸一郎 2012 幼児期における軌道のイメージの発達過程 関西大学文学部心理学論集, 6, 11-21.
● 杉村伸一郎 2009 「臨床法」再考 -発達を研究するために- 心理科学, 29, 55-63.
● 杉村伸一郎 2009 臨床法による心的イメージの発達の検討 心理科学, 30, 44-63.

見えの「切り取り」に関する研究
● 小津草太郎・杉村伸一郎 2008 葛藤する空間情報の使用における幼児の言語的/空間的反応 発達心理学研究, 19, 389-401.
● 小津草太郎・杉村伸一郎 2005 幼児の見えの「切り取り」におけるランドマークの効果 幼年教育研究年報, 27, 89-98.
● 小津草太郎・杉村伸一郎 2004 幼児における見え情報と位置情報の協応 広島大学心理学研究, 4, 193-203.
● 小津草太郎・杉村伸一郎 2004 幼児における空間の「切り取り」と他の認知能力との関連 広島大学大学院教育学研究科紀要 第三部(教育人間科学関連領域), 53, 315-323.

他者視点取得に関する研究 3つの山問題
● 杉村伸一郎 2009 乳幼児の空間認知における自己中心的反応 日本認知言語学会論文集, 9, 596-599
● 杉村伸一郎・今川峰子・竹内謙彰 1995 空間的視点取得課題における自己中心的反応 −パースペクティブ非構成説の検討− 名古屋大学教育学部紀要 教育心理学科, 42, 17-28.
● 杉村伸一郎・竹内謙彰・今川峰子 1992 他者視点取得課題の要因についての分析的研究 教育心理学研究, 40, 340-349.
● 竹内謙彰・杉村伸一郎・今川峰子 1991 子どもにおける他者からの「見え」の理解 −誤反応パターンの分析− 愛知教育大学教科教育センター研究報告, 15, 35-42.
● 杉村伸一郎・増井透 1987 子どもの空間表象に対する情報処理アプローチ 名古屋大学教育学部紀要教育心理学科, 34, 293-302.
その他
 以上のように,空間認知やその発達のメカニズムを検討する一方で,空間認知の発達と日常とを関連づけるような試みも行ってきました。
 杉村(1999)では,幼児期から青年期までの,生活における位置や場所,方向や向きなどの空間的誤りを調べることにより,これまで研究されてきた空間的誤り以外に興味深い現象はないかを検討しました。また,杉村(1991)では,生活空間の広がりを記述するのに、階層性という概念を導入し,直接経験できない規模の空間の理解を検討しました。

● 杉村伸一郎 1999 生活における空間的誤り 教育諸学研究論文集, 13, 19-27.
▼ 杉村伸一郎 1991 児童における空間的階層関係の理解 日本教育心理学会第33回総会発表論文集, 23-24.

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●保育指導・保育観 ●子どもの入浴行動

 保育者にとって、子どもの個性に応じた対応をするのは当り前のことであるかもしれません。しかし,これまでの保育に関する研究では、保育者の資質,保育観,一般的な指導方法などについて行われた研究はありましたが,子どもの個性に応じた指導といった観点から行われた研究は,研究を始めた当時は見あたりませんでした。

 そこで,筆者らは,子どもの特性に応じた指導方法に関する個人的な信念という観点から,保育所,幼稚園の保母・教諭347名と保育系短期大学の学生319名を対象に質問紙調査を行いました。そして,具体的な事例に保育者はどう対応するのかを明らかにするとともに,経験にともなって意図的,指示的な指導方法から,見守り,支持する受容的な指導方法へ変化することを見いだしました(梶田ら, 1988; 梶田ら, 1990; 杉村・桐山, 1991)。

 また,質問紙では十分に把握できない保育観の形成過程を,面接法を用いることにより捉えようとしました。その結果,保育指導において見通しが持てるようになるには,自分の子どもを育てる経験や,小人数の子どもとじっくりかかわる経験,職場の同僚との討論等が大きな役割を果たしていることが明らかになりました(梶田ら, 1990)。これらの成果は,育ちを援助する方法・環境の工夫について述べた分担執筆(杉村, 1998, 2000)にも生かされています。

● 梶田正巳・杉村伸一郎・桐山雅子・後藤宗理・吉田直子 1988 具体的な事例に保育者はどう対応しているか 名古屋大学教育学部紀要教育心理学科, 35, 111-136.
● 梶田正巳・杉村伸一郎・後藤宗理・吉田直子・桐山雅子 1990 保育観の形成過程に関する事例研究 名古屋大学教育学部紀要教育心理学科, 37, 141-162.
● 杉村伸一郎・桐山雅子 1991 子どもの特性に応じた保育指導 −Personal ATI Theoryの実証的研究− 教育心理学研究, 39, 31-39.

◆ 杉村伸一郎 1998 育ちを援助する方法・環境の工夫 今川峰子(編) 新時代の保育双書〈4〉教育心理学(pp. 114-125) みらい社
◆ 杉村伸一郎 2000 育ちを援助する方法・環境の工夫 今川峰子(編) 新時代の保育双書〈4〉新・教育心理学(pp. 114-125) みらい社



 子どもの入浴行動に関する調査も行いましたが,報告書と学会発表のみで,論文にはなっていません。

▼ 梶田正巳・杉村伸一郎・二宮克美・吉田直子・東邦ガス株式会社お客さまサービス部生活提案グループ 1991 子どもの入浴行動と親子の関係について 平成2年度共同研究報告書
▼ 二宮克巳・梶田正巳・吉田直子・杉村伸一郎 1991 入浴行動にみる自立過程と親子関係 日本発達心理学会第2回大会発表論文集, 89.
▼ 吉田直子・梶田正巳・二宮克巳・杉村伸一郎 1991 入浴行動にみる自立過程と親子関係 −入浴に対する母親の信念と入浴に関するしつけについて− 東海心理学会第40回大会発表論文集, 27.
▼ 二宮克巳・梶田正巳・吉田直子・杉村伸一郎 1991 入浴行動にみる自立過程と親子関係(1) 日本教育心理学会第33回総会発表論文集, 213-214.
▼ 吉田直子・梶田正巳・二宮克巳・杉村伸一郎 1991 入浴行動にみる自立過程と親子の関係(2) 日本教育心理学会第33回総会発表論文集, 215-216.

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●学習指導様式 ●学習観・知能観 ●教育・学習評価 ●異文化適応

 これまでの学習経験から高校生が学習に対してどのような信念を形成しているかという観点から,学習様式を英語・数学・国語といった科目別に検討し,学習様式が文系や理系といった進路や,成績等により異なることを明らかにしました(梶田ら, 1987; 水野・杉村・伊藤, 1988)。さらに,大学生においても,選択的注意と学習様式等との関連を調べました(杉村・塩谷, 2001)。

● 梶田正巳・石田勢津子・伊藤篤・水野りか・杉村伸一郎・田中俊也・神谷俊二・宇田光・教育学部附属中・高等学校マイコン・ワープロ研究会 1987 高校生の学習様式 −英語・数学・国語の「PLT」− 名古屋大学教育学部紀要教育心理学科, 34, 131-171.
● 水野りか・杉村伸一郎・伊藤篤 1988 高校生の国語の学習の仕方 −マイコンによる個別診断とその分析− 教育心理, 36, 634-639.
● 杉村伸一郎・塩谷裕香 2001 教師の指示に従う学生は優等生か — 選択的注意の個人差と学習意欲,学習様式および学業成績との関連 — 教育諸学研究論文集, 15, 35-44.

 また,教師の指導に関する信念が日本・オーストラリア・韓国といった国によりどのように異なるかを調べ,児童の責任や役割に関しては教師が決定した方がよいと考えている教師が、日本、韓国、オーストラリアの順に多いこと,オーストラリアの教師の指導信念には学級運営や家庭との関係に関する構造が日本や韓国ほどみられないこと等を明らかにしました(梶田ら, 1988; 梶田ら, 1989)。

● 梶田正巳・石田勢津子・伊藤篤・水野りか・杉村伸一郎・中野靖彦・石田裕久 1988 学習指導様式の国際比較 −日本・オーストラリア・韓国− 名古屋大学教育学部紀要教育心理学科, 35, 137-162.
● 梶田正巳・石田勢津子・伊藤篤・水野りか・杉村伸一郎・中野靖彦・石田裕久 1989 学習指導様式の国際比較(㈼) −日本・オーストラリア・韓国の構造比較− 名古屋大学教育学部紀要教育心理学科, 36, 83-98.



 動機づけに関して,学習観・知能観(杉村・吉崎, 1990, 2001; 杉村, 2002),教育・学習評価(大野木・杉村, 1992a, 1992b)という観点から研究し,こられの成果を紀要等にまとめるとともに,教科書等を分担執筆しました(杉村, 1991, 1993, 1994, 1995)。

● 杉村伸一郎・吉崎一人 1990 子どもの知能観 珠算春秋, 72, 14-28.
● 杉村伸一郎・吉崎一人 2001 珠算の成績は何によって決まるか −知能観,学習目的,学習方法との関係− 神戸女子大学文学部紀要, 34, 115-130.
● 杉村伸一郎 2002 大学生が考える小学生の知能観 — 小学生は頭のよさは何によって決まると考えているか — 神戸女子大学文学部紀要, 35, 181-188.

● 大野木裕明・杉村伸一郎 1992a 現職教員は教育評価方法の専門用語をどの程度知っているか 福井大学教育学部紀要第㈿部 教育科学, 43, 81-107.
● 大野木裕明・杉村伸一郎 1992b 教育・学習評価からみた学業試験成績の認知に関する調査的研究 福井大学教育学部紀要第㈿部 教育科学, 44, 103-110.

◆ 杉村伸一郎 1991 動機づけの発達 小嶋秀夫・河合優年(編) 児童心理学(pp. 79-89) 近畿大学豊岡短期大学
◆ 杉村伸一郎 1993 学習観 宮川充司・坂西友秀・大野木裕明(編) 児童・生徒の発達と学習(pp. 47-54) ナカニシヤ出版
◆ 杉村伸一郎 1994 効果的な一斉指導の設計 神谷育司・酒井亮爾・杉江修治・富安玲子(編) 発達と教育の心理学(pp. 161-171) 共同出版
◆ 杉村伸一郎 1995 授業における教育的かかわり 梶田正巳(編) 成長への人間的かかわり(pp. 118-133) 有斐閣



 日本人海外子女の異文化適応の現状を把握するために,ダラス日本語補習授業校に通う日本人子女を対象に質問紙調査と面接調査を実施し,補習校と現地校との問題,言語,学力,アイデンティティの問題等を指摘しました。
 さらに,第二言語としての英語学習に関連する要因を検討し,学年が低いほど滞在年数の影響が弱いこと,日常の読書やテレビで英語を使用する頻度が高いほど英語能力が高いこと,アメリカ人との交友や現地校の成績に対する保護者の期待が英語能力の向上に関係していること等を明らかにしました。

● 梶田正巳・杉村伸一郎 1999 ダラス日本語補習校の子どもたち 名古屋大学教育学部紀要(心理学)46, 32-39.
● 杉村伸一郎 2002 日本人海外子女の異文化適応 — 第二言語としての英語学習に関連する要因の検討 — 教育諸学研究論文集, 16, 21-31.

 また,第二言語習得に関して実験的研究も行ったのですが,論文にまとめるまで至りませんでした。

▼ 杉村伸一郎・川上正浩・堀田朱美 1991 既有の言語知識が新たな言語習得に及ぼす影響 日本教育心理学会第33回総会発表論文集, 613-614.
▼ 川上正浩・堀田朱美・杉村伸一郎 1991 既有の言語知識が新たな言語習得に及ぼす影響 −母国語の影響に関するシミュレーション実験− 平成元年度・2年度科学研究費補助金総合研究(A)研究成果報告書(研究代表者:梶田正巳) 外国人子女の日本語習得過程に関する学際的基礎研究及び教育プログラム開発研究, 129-138.

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●幼児の視力検査 ●そろばんイメージ ●親族呼称の認知

 当時,幼児に行われていた視力検査では,視力には知覚システムの優劣だけが反映していると考えられており,そこに表象・操作的システムの発達がどのような影響を与えているかに関して,ほとんど注意が払われていませんでした。しかし,ランドルト環の切れ目のどこが開いているかに答える際には,上下,左右等の概念レベルでの空間認知の発達が関与していると考えられます。
 そこで,適切な検査方法の選択や検査方法の改善のための基礎資料を得るために,3歳児から6歳児に4種類の視力検査を行うとともに,それぞれの検査に影響すると考えられる7種類の知的能力の検査を実施しました。その結果,4,5歳児ではランドルト環視標の上下のみを用いて視力を測定しても方向の認知能力と影響が見られましたので,方法改善に関する提言を行いました。

● 杉村伸一郎 1989 子どもの検査における心理的配慮 JOAジャーナル, 7, 137-143.
● 杉村伸一郎・加藤元嗣 1990 幼児の視力検査における知的能力の影響 発達の心理学と医学, 1, 379-385.
● 加藤元嗣・杉村伸一郎 1991 幼児におけるランドルト環視標と絵視標による視力の相違 JOAジャーナル, 9, 67-71.



 そろばんに熟達することにより、イメージ能力等の認知能力がどのように変化するかを実験的に検討したり,中学生や大学生が親族呼称をどの程度知っているか調べ、青年期の認知発達という観点から考察したりしました。

● 吉崎一人・杉村伸一郎 1989 そろばん習熟度が認知能力に及ぼす影響 珠算春秋, 69, 50-100.
● 大野木裕明・杉村伸一郎・田中俊也 1991 親族関係の心理的認知に関する探索的研究 福井大学教育学部紀要第㈿部 教育科学, 42, 117-130.
● 田中俊也・杉村伸一郎・大野木裕明 1993 中学生の親族呼称の認知 心理学研究, 64, 384-388.

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