認知発達理論分科会 第8回例会報告
第8回例会世話人
杉村伸一郎(第8回例会担当幹事:神戸女子大学)
shin.sugimura@nifty.com
足立自朗(会長:埼玉大学)
adachi-j@zero.ad.jp
高平小百合(事務局:玉川大学)
sayuri@lit.tamagawa.ac.jp
第8回例会を下記のように行いました。今回は,A Dynamic Systems Approach to the Development of Cognition and Actionの中から4つの章を取り上げ,非線形力学の一般的・抽象的な原理や手法を認知発達の研究にどのように適用できるかを検討しました。
●日時:9月21日(土)午前10時〜午後5時
●場所:早稲田大学西早稲田キャンパス14号館807号室
●検討文献 Esther Thelen and Linda B. Smith 1994
A Dynamic Systems Approach to the Development of Cognition and Action. The MIT Press.
詳しくは下記のリンクをご参照ください。
The MIT Press●とりあげた章および報告者
第3章 Dynamic Systems: Exploring Paradigms for Change報告者:小島
康次(北海学園大学) 第6章 Categories and Dynamic Knowledge報告者:高橋
義信(札幌医科大学) 第9章 Knowledge from Action: Exploration and Selection in Learning to Reach報告者:宮内
洋(札幌国際大学) 第10章 Real Time, Developmental Time, and Knowing: Explaining the A-Not-B Error報告者:杉村
伸一郎(神戸女子大学) 総括的討論 前半は,早稲田大学の西條剛央氏に,最新の『発達心理学研究』*に掲載されている論文に基づいて発表していただき,後半は,小島康次先生に西條氏の発表も含めた全体討論をしていただきました。
高橋義信(札幌医科大学)
初めて認知発達理論分科会に参加させてもらったが、多くの人が真剣に参加され、熱心に討議される姿に感銘した。このような会が今後も継続し、ますます発展することを祈ってやまない。しかし、今回の会合では、私自身も含めて発表者側の準備があまり十分ではないような感想を持った。レジメも不十分なものがあったし、参加者の質問にあまり答えられないようなことも何度かあったように思う。多忙の合間を見つけての準備なのであろうが、少し残念である。
さて、ダイナミックシステムアプローチについてだが、あまり新鮮味はないようにおもえた。たとえば、発表のあった第3章で主に紹介されているのがB-Z反応であるが、これは振動的なパターンの形成を特徴とする。それには自触媒反応と負のフィードバック過程が大きな役割を果たしているのだが、B-Z反応自体は反応拡散モデルの例として昔から有名であり、新鮮味はない。つまり書かれていることは正しいのだが、だからどうしたのとつぶやきたくなる。
私の担当した第6章はカテゴリー形成に関するものだが、そのダイナミックシステム的説明というのは、昔のカオス理論、たとえば気象学者であるローレンツや数理生物学者ロバート・メイの議論、の認知心理学的焼き直しの域を出ていないと思われる。嘘だと思われるなら、複雑系についてのごくごく一般的な解説書、たとえば「複雑系とは何か」吉永良正著、1996年発行(講談社現代新書)などを一読することを進める。そこに第6章でよく使われる概念、たとえばアトラクターが説明されていることを発見するだろう。そして「なーんだ」という感想を持つであろう。
この本は出版されてから10年以上も経過しており、このような分野における10年はまさしく一昔という印象を持った。
西條剛央(早稲田大学人間科学研究科・日本学術振興会特別研究員)
個人的には,もう少し,DSAを実際にどう使うか?どのように活かすか?といった「建設的議論」ができたらより良かったと思いました。しかし,総合的には,何名もの開かれ態度と優秀さを兼ね備えた研究者の方々と知り合うことができ,参加させて頂くことができて本当によかったと思っています。
必要に応じてダウンロードしてください。ダウンロードの方法
第3章 ワード
第6章 ワード
第9章 ワード
第10章 ワード
西條氏プレゼンテーション パワーポイント
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