はじめに
分子系
ターゲットが分子である場合,利用するコードはガウス型基底のコードとなるでしょう。化学を専攻なさっておられる方にとって,すぐに思い浮かぶのはGaussian, GAMESS, molpro,molcasなどではないでしょうか?残念ながらこれらのコードで内殻励起状態を直接求めるためのオプションはありません。しかしこれは,”不可能”であることを意味しているのではありません。上であげたコードであれば,オプションを駆使することで内殻正孔状態を計算することは可能です。考えられる手をあげてみます。- Z+1近似を用いる
- 既存のオプションを駆使し,計算をすすめる
- 専用のコードを用いる
2.はコードをよく理解している方でないと気づきにくいことかもしれません。”内殻正孔をあける”という制限を課したままSCF計算を行います。既存のコードでも可能で,MCSCFもしくはCASSCFのオプションを駆使すれば可能です。
3.は,中身でやっていることは2.でご紹介したことと同じなのですが,それを専用のオプションとして持っているコードがある,ということです。分子軌道法のコードではDALTONがあります。私は密度汎関数法のコードStoBe/DeMonを紹介します。
固体系
ターゲットが固体,表面系であるなら,平面波基底のコードになると思います。こちらもいろいろなコードがありますが,Quantum Espresso, VASP, WIEN2kなどがよく知られたコードではないかと思います。国産のコードもいくつかあります。基本方針は分子系の場合と同じです。- Z+1近似を用いる
- 擬ポテンシャルを用いるコードの場合,内殻正孔を有した擬ポテンシャルを作成,もしくは入手する
- 専用コードを用いる
2.ですが,平面波基底のコードの場合,価電子軌道のみをあらわに計算し,内殻軌道はそもそも計算をしていない,のが通例です。こういう場合は内殻正孔を有した擬ポテンシャルをなんとかして入手してこなければなりません。擬ポテンシャルの作成方法は使用するコードによって違うので,それぞれのコード用に対策をしていただくことになろうかと思います。
3.の専用コードの例として,CASTEPがあります。マニュアル,チュートリアルもしっかりしているようです。