広島大学大学院 工学研究院 山中研究室

super+α

配列ナノ空間を利用した新物質化学

広島大学

広島大学大学院 工学研究院

 

 


研究概要

現在進行中の研究課題
  1. 層状窒化物のインターカレーションと高温超伝導体の開発
  2. 新規シリコンクラスレート化合物の高圧合成
  3. 炭素クラスレート化合物の高圧合成
  4. 層状およびカゴ状構造を有する新規高温超伝導体の探索
最近の研究展開は次の総説に詳しく述べています。
  1. S. Yamanaka (2004) Design and synthesis of new functional materials using the interstices of inorganic host structures, J. Ceramic Soc. Jpn., 112 421-427 (2004).
  2. 山中昭司,久保章, フラーレンC60の3次元化 – 炭素クラスレートの合成をめざして –, 固体物理 41, 407-413 (2006).
  3. 山中昭司,久保章, 3次元C60ポリマーの高圧合成と構造・物性, 高圧力の科学と技術, 16, 229-235 (2006).
  4. 4. 山中昭司 (2009) 層状窒化物超伝導体の誕生"新しい物質探索の夢,作製の秘伝と喜び";固体物理,44, 959-968.
  5. S. Yamanaka (2010) Silicon Clathrates and Carbon Analogs: High pressure synthesis, structure and superconductivity; Dalton Trans. 39, 1901-1915.
  6. S. Yamanaka (2010) Intercalation and superconductivity in ternary layer structured metal nitride halides (MNX: M = Ti, Zr, Hf; X = Cl, Br, I ) ; J. Mater. Chem. 20, 2922-2933.

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これまでの研究概要 (1969 ~ )

1.粘土有機複合体の生成機構と応用 (1969 ~ )

 粘土有機複合体の生成には粘土ケイ酸塩層間の交換性カチオンと極性分子の相互作用が支配的であることを示した。この知見は、最近我が国で共同研究者により開発された、海水にも膨潤するスメクタイト粘土の発明に繋がっている。

粘土有機複合体の生成機構と応用

2.リン酸ジルコニウム有機誘導体の創製 (1971 ~ )

 リン酸ジルコニウムに2種類の層状多形が存在することを明らかにすると共に、γ型層状構造の層間表面に種々の有機官能基をエステル結合でグラフトすることに成功した。世界で最初に合成された無機-有機誘導体である。

リン酸ジルコニウム有機誘導体の創製

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3.粘土層間架橋ミクロポア多孔体(ピラードクレイ)の創製 (1976 ~ )

 モンモリロナイトのケイ酸塩層間を微細なセラミックス粒子で架橋し、層間にミクロポアを有する種々の新規多孔体合成法を確立した。これは現在、ピラードクレイと呼ばれ、世界各国で盛んに研究されている。このテーマに関連して被引用回数の多い論文を数多く発表した。それまで、ミクロポアを有する無機多孔体はゼオライトしかなかったので、遷移金属酸化物を含めて、多様な組成と構造のミクロポア多孔体の分子設計が可能となるピラードクレイ出現の意義は大きい。

粘土層間架橋ミクロポア多孔体の創製

4.アニオン交換性層状結晶の創製 (1988 ~ )

 アニオン交換性を有する物質はハイドロタルサイトしかなかった。当研究者は、新たに、銅塩基性塩、ニッケル-亜鉛水酸化物、リン酸ジルコニウムがアニオン交換性を有することを示した。銅塩基性塩のアニオン交換体は、特異な低次元磁性を示すため、物性物理研究でも注目されている。

5.シリコンクラスレート超伝導体の創製 (1995 ~ )

バリウムを内包するシリコンカゴ状ネットワークを有するシリコンクラスレートNa2Ba6Si46を初めて合成し、超伝導体となることを見出した。Si-sp3ネットワークで最初の超伝導体として注目されている。高温高圧合成により、バリウムだけを内包するBa8Si46の合成にも成功し、物性物理研究者と共同研究を幅広く展開している。

シリコンクラスレート超伝導体の創製

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6.電子ドープ層状窒化物超伝導体の創製 (1996 ~ )

 層状窒化ハロゲン化物-MNX (M = Zr, Hf; X = Cl, Br, I)の簡便な合成法を確立し、化学輸送により、結晶性の良い試料を初めて作製した。この結晶層間にリチウムなどのアルカリ金属をインターカレートすると、3-4 eVのバンドギャップを有する層状母結晶は金属となり、低温で超伝導体となることを見出した。リチウムとテトラヒドロフラン(THF)がコインターカレートした層間化合物Li0.48(THF)0.3HfNClは臨界温度(Tc)が25.5 Kの超伝導体となった。物性物理研究者と共同研究が進められており、高いTcと異方性の強い電子ドープエキゾチック超伝導特性に関心が集まっている。塩化アンモニウムをフラックスとするユニークな高温高圧単結晶合成や塩素原子のデインターカレーションによる電子ドープを行うなど、この分野で世界をリードする研究を展開している。

電子ドープ層状窒化物超伝導体の創製

7.C60ポリマー単結晶の高圧合成と構造解析 (2000 ~ )

 フラーレンC60を高圧処理すると[2+2]付加により、二次元のポリマーとなることは以前から知られていたが、そのX線回折パターンはブロードで、詳細な構造は明らかにされていなかった。当研究者らは、まず、fccパッキングしたC60モノマー単結晶を育成し、これを高温高圧処理することにより、世界で最初にC60ポリマー単結晶の合成に成功し、この精密なX線構造解析にも成功した。

C60ポリマー単結晶の高圧合成と構造解析

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