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「REALITY OF LIFE AND DEATH/HIROSHIMA〈ヒロシマのピエタ〉一鍬田徹彫刻展」 広島市立本川小学校・平和資料館(広島市) 2007年11月23日(祝)~12月16日(日)

(以下、会場に掲示した挨拶文からの引用)


ごあいさつ
 
『REALITY OF LIFE AND DEATH -HIROSHIMA-《ヒロシマのピエタ》一鍬田徹彫刻展』(広島市文化振興基金助成事業)を開催いたします。

本展は、広島市立本川小学校及び関係各位をはじめとする多くの皆様の多大なるご理解とご協力によって、初めてこの「平和資料館」を会場として開催される、アートの展覧会です。近年、日本でも美術館やギャラリー以外の場所で美術作品を発表する例が増えていますが、このように従来の建築物にアート作品を関連付けることで、新たな意味や価値を提示することは、社会におけるアートの役割を考える上でも大変興味深いものと考えます。

私は広島の出身ではありませんが、縁あって広島市の一市民になり、この約14年の間、広島の地に生きる多くの方々とめぐりあい、様々なものを見、感じ、考えてきました。そして私なりの思いを一度この広島で発表したい、という気持ちが近年特に強くなり、本展の開催に至った次第です。

私はこれまで「REALITY OF LIFE AND DEATH」つまり「生きていることの実感」「生や死の現実感」といったテーマで彫刻制作をしてきましたが、元々こういった「生」や「死」をテーマにした芸術は、古来より美術・音楽・文学・舞踊・演劇など様々な形で表現されてきたものです。人が生きている限り、このテーマは普遍性を持ち、今後もずっと表現され続けることと思いますが、現代には現代の「生」や「死」の考え方があり、それらをどう表現するかは現代に生きる私たちに課せられたテーマであるとも言えるでしょう。

意識しているかどうかは別として、「なぜ生きるのか」「どう生きるのか」といった問題は、常に私たちのすぐそばにあります。もちろん病気や事故、怪我など、自分あるいは親しい人が、そういう状況になったときに「生きていることの実感」「生や死の現実感」を強く感じることもあるでしょう。事実、私が2000年以降、この「REALITY OF LIFE AND DEATH」というタイトルで作品制作、展覧会開催をしてきたのも、叔母や教え子の死が強く影響しています。しかし日常の中でも昨今の痛ましい事件の報道に接する度、やりきれない思いを抱いている人も少なくないことと思います。現代ほど、この当たり前の問いがゆらいでいる時代もないのではないでしょうか。

この度、出品する彫刻作品は、その多くが粘土で形を作り、石膏で型をとる工程を経ていますが、どれも自らの身体を使わなければ成立し得ないもので、現代のコンピューター時代に全く逆行する究極のアナログと言ってもよいものです。しかし、自分の身体あるいは五感を使って作品制作するということは、それ自体が私自身にとっては「生きていることの実感」を感じさせてくれるものであり、その結果として完成した作品も「生命感」「命」「魂」等を感じさせるものでありたいと常々考えています。

またこの度の展覧会では、これまでの「REALITY OF LIFE AND DEATH」に加えて、特に《ヒロシマのピエタ》というタイトルを付け加えました。「ピエタ」はイタリア語で「哀悼、嘆き」などを意味する言葉です。特に美術の世界で『ピエタ』といえば、ミケランジェロの『ピエタ』(サン・ピエトロ寺院)に代表されるような、十字架降下後のキリストの死を悼む様子を表した絵画や彫刻を指す場合が主ですが、この度の「ヒロシマのピエタ」はもう少し広い意味で「ヒロシマにおける嘆き・哀悼の形」あるいは「ヒロシマに対する嘆き・哀悼の形」とお考えいただければ、と思います。

現代に生きる私たちは、実に多くのことに追われ、忙しく生きているのが現状で、考えるゆとりがなかったり、大切な何かをつい忘れたりしがちです。考えようによっては、それはそれで良いことだとも思いますが、その一方で、こういった展覧会を通して少し立ち止まって考え、意識してみるのも意味のあることではないか、とも考えます。この展覧会が、過去に起きたつらい出来事を二度と繰り返さないための方法、あるいは「なぜ生きるのか」「どう生きるのか」といった問題を考える一つのきっかけになれば、作家としてこれ以上の喜びはありません。

ご来場、本当にありがとうございます。
どうかゆっくりご鑑賞いただき、忌憚のないご意見、ご感想をいただければ幸いです。

最後になりましたが、本展を開催するにあたって多大なるご理解とご協力を頂きました奥原球喜先生、空間浩道先生・三宅俊直先生をはじめとする広島市立本川小学校教職員の皆様、関係各位、また本展の開催にあたり惜しみない援助をしてくれた広島大学の卒業生・在学生の皆さんにこの場をお借りして、御礼申し上げます。ありがとうござました。
                        

2007年11月23日
一鍬田 徹

 

  



 

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