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「FOUR SEASONS TREE」新診療棟モニュメント @広島大学病院(@広島市) 2013年8月30日除幕

 (以下、除幕式当日の挨拶原稿より引用)

除幕式挨拶〈要旨〉

ただ今、ご紹介いただきました、広島大学 教育学研究科 造形芸術教育学講座(彫刻)の一鍬田と申します。まずは今回のプロジェクトを発案され、このモニュメントの制作の機会を作ってくださった前病院長で整形外科・教授の、越智光夫先生に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

思い起こせば、最初にお話をいただいたのが、2011年の3月頃です。ちょうど東日本大震災があった少し後だと思いますので、2年以上前になります。もともとこの辺りは、冬の間に樹木にイルミネーションをしていたそうですが、新しい木の芽が傷むということもあって、それに代わるものをお作りになりたいというお話でした。

そして、それにあたって、主に次の3つの条件をいただきました。
①病院を明るいイメージにするもの。
②常設のもので、昼はオブジェ、夜は光のイルミネーションになるもの。
③2階部分と同じくらいの高さのもの。

それを受けて、4つほどのアイデアを提案させていただいたのが、その約半年後の2011年の10月頃です。それらの4つのアイデアは、新診療棟の基本コンセプト「Green Hospital」の中の《グリーンアート》というキーワードに基づいたものでした。このグリーンアートは、「グリーン(植物)を連想させるアートにより、来院者一人ひとりの自己治癒力を高める治療空間を展開する」とあり、「サイン計画として空間を特徴化し、記憶を創り出すもの」「不安を和らげ心を癒す、身近なもの、親しみ感のあるもの」「快適で気持ちの良い環境、明るいイメージを醸し出すもの」という3つのポイントが挙げられていました。

近年、ホスピタルアートという考え方も広まってきたようですが、この作品を作るにあたって私が特に意識したのは、「病院におけるアートのあり方」あるいは「アートができることは何か」という問題でした。

少し個人的な話になりますが、約3年前に、私の母が千葉の病院で亡くなりました。約45日間の入院生活だったのですが、病状の回復を願って、私も毎日のように病院に通いました。しかし、母は所謂,難病に指定されている病気だったので、いくら治療をしていただいても、結局、回復には至りませんでした。その病院でもいろいろな絵画作品や彫刻作品が展示されていたのですが、そのどれもが、病院を会場にした美術作品の展示場のようで、私の心にはあまり響かなかった思いがありました。

そこで、今回、ホスピタルアートに取り組む機会をいただいて、私なりに「来院者の自己治癒力を高める」ために、この場所にはどのようなアートが最適なのかを考えました。そして、その結果として、グリーンというキーワードから、樹木、特にクリスマスツリーでもよく使われる「もみの木」を基本形体(八角錐)として考え、そこに《広島、あるいは瀬戸内の四季の風景》をモチーフにした“ステンドグラスのようなデザイン”にしたら、この場にもふさわしく、楽しく、美しい作品が出来るのではないかと考えたのです。

四季の風景は、さまざまな条件を考慮しながら、広島らしい場所を選びました。
春は、桜と広島市内を多く流れる川(猿猴川)、市電、大学病院、
夏は、ひまわりと朝顔に、原爆ドームや平和資料館を併せました。
秋は、もちろん宮島の鳥居に,紅葉を散らし、
冬は、広島大学東広島キャンパスのある、西条の風景としました。
また、太陽、月、星といったモチーフもそれぞれの季節に配し、また朝、昼、夕方、夜といった1日の時間の経過も表現しています。

これらのモチーフは、誰が見てもわかるように、具象的な風景を、やわらかい線で描き、広島らしさを演出すると共に、夜間の内部照明によりモニュメント自体が発光するようにしました。春から夏、秋、冬へと季節ごとに光ったり、全てのライトが点灯したりと、約20分間で1つのパターンとなっており、それを夜10時まで繰り返します。

これまで、私は長年、美術作品の制作に携わってきて、アートの力をより多くの人や社会に還元したいと考えてきました。そういう意味で、このパブリックアートは、それを実現するのに大変良い機会でした。しかし、この作品を実際に形にしていくにあたって、多くの方々のお力なくして実現は不可能でした。初めに申し上げた越智先生を初め、現病院長の茶山一彰先生、大学病院のスタッフの皆様、一般財団法人緑風会・理事長の戸澤様をはじめとする緑風会の皆様、またこのプロジェクトをはじめからずっとリードし、的確なアドバイスをくださった本学・施設計画グループの蔵田リーダー、スタッフの皆様、また実際の設計や施工を丁寧に、そして着実に進めて下さった大昌工芸株式会社の渡様や株式会社・日本彫刻工芸の大世渡様、スタッフの皆様、その他多くの皆様のお力によって出来たモニュメントです。

この作品が、今後、病院にくる患者さんやご家族、病院スタッフの皆様に喜んでいただけたら、本当に嬉しく思います。この作品を見て、少しでも気持ちが明るくなったり、暗い気持ちが一瞬でも軽くなったり、元気や励みを与えられるような存在になれば、私としてはこれ以上の喜びはありません。

今日は本当にありがとうございました。

                                         平成25年8月 30日 一鍬田 徹




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