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微分オペレータの設計

エッジ抽出やオプティカルフローの推定などでは、画像から局所的な空間微分 を推定したいことがある。一般には、微分値は、予め与えられた $3 \times 3$ 画素の微分オペレータと局所領域内の画素値との内積を計算して求められ ることが多いが、局所領域の大きさを大きくしたい場合や局所領域の中心部分 により大きな重みを与えたい場合などには、微分オペレータを設計し直す必要 がある。重回帰分析を用いて局所領域内で局面を当てはめると、比較的簡単に 微分オペレータを設計することができる。

例えば、2次微分まで求めたい場合には、当てはめる局面は2次微分可能である 必要がある。また、解析が容易で、しかも、雑音などの影響を受けにくいもの がよい。従って、局面の候補としては、例えば、2次多項式

\begin{displaymath}
z(x,y) = w_0 + w_1 x + w_2 y + w_3 x^2 + w_4 x y + w_5 y^2
\end{displaymath} (16)

が考えられる。このとき、この曲線のパラメータが求まれば、微分値は、
$\displaystyle \left. \frac{\partial z}{\partial x} \right\vert _{x=0,y=0}$ $\textstyle =$ $\displaystyle w_1$  
$\displaystyle \left. \frac{\partial z}{\partial y} \right\vert _{x=0,y=0}$ $\textstyle =$ $\displaystyle w_2$  
$\displaystyle \left. \frac{\partial^2 z}{\partial^2 x} \right\vert _{x=0,y=0}$ $\textstyle =$ $\displaystyle w_3$  
$\displaystyle \left. \frac{\partial^2 z}{\partial x \partial y} \right\vert _{x=0,y=0}$ $\textstyle =$ $\displaystyle w_4$  
$\displaystyle \left. \frac{\partial^2 z}{\partial^2 y} \right\vert _{x=0,y=0}$ $\textstyle =$ $\displaystyle w_5$  

により推定できる。最小2乗法を用いて、注目点を原点とする局所領域内の座標値か ら画素値を推定する局面(モデル)を最小2乗法により推定し、各点の座標値と パラメータの関係を調べれば、微分オペレータが求まる。重みを考慮したい場 合には、重み付き最小2乗法により曲線を当てはめればよい。

例えば、$3 \times 3$ の局所領域内で2次多項式を当てはめて設計した微分 オペレータは、

$\displaystyle w_1$ $\textstyle :$ $\displaystyle \frac{1}{6} \left(
\begin{array}{ccc}
-1 & 0 & 1 \\
-1 & 0 & 1 \\
-1 & 0 & 1
\end{array} \right)$  
$\displaystyle w_2$ $\textstyle :$ $\displaystyle \frac{1}{6} \left(
\begin{array}{ccc}
1 & 1 & 1 \\
0 & 0 & 0 \\
-1 & -1 & -1
\end{array} \right)$  
$\displaystyle w_3$ $\textstyle :$ $\displaystyle \frac{1}{6} \left(
\begin{array}{ccc}
1 & -2 & 1 \\
1 & -2 & 1 \\
1 & -2 & 1
\end{array} \right)$  
$\displaystyle w_4$ $\textstyle :$ $\displaystyle \frac{1}{6} \left(
\begin{array}{ccc}
-1 & 0 & 1 \\
0 & 0 & 0 \\
1 & 0 & -1
\end{array} \right)$  
$\displaystyle w_5$ $\textstyle :$ $\displaystyle \frac{1}{6} \left(
\begin{array}{ccc}
1 & 1 & 1 \\
-2 & -2 & -2 \\
1 & 1 & 1
\end{array} \right)$ (17)

のようになる。

横矢等[82,83] では、$5 \times 5$ の局所領域で2次多項 式を当てはめることにより微分オペレータを設計し、それらの微分オペレータ を利用して推定した微分値から距離画像の局所的な曲率を計算し、それを領域 分割に利用している。


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平成14年7月19日