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識別法

次に、複素自己回帰係数や複素PARCOR係数を特徴ベクトルとして形を識別する方法に ついて考える。

理想的には、複素自己回帰係数や複素PARCOR係数は形の相似変換に不変にできるので、 同じ形に対しては同じになる。従って、例えば、特徴ベクトル間のユークリッド距離 によって、同一の形と他の形とを識別できるはずである。しかし実際には、輪郭点列 を抽出する際の量子化誤差などの影響により同じ形に対する係数も微妙に異なる。ま た、木の葉のように同じ種類の木から取ったものでも形そのものが微妙に変形してい る場合もある。

Bayesの識別方式は、各クラス内の特徴ベクトルの真の確率密度分布がわかっている 場合には、誤識別率を最小にすることが知られている。しかし、実際には真の分布を 完全に知ることは出来ないので、正規分布を仮定することが多い。クラス$C_k$の平 均特徴ベクトルを ${\bf\mu}_k$、共分散行列を $\Sigma_k$、先験確率を $P(C_k)$ と すると、正規分布を仮定したBayesの識別では、特徴ベクトル $\mbox{\boldmath$v$}$ は、事後確率

\begin{displaymath}
p(C_k\vert\mbox{\boldmath$v$})=-(1/2)(\mbox{\boldmath$v$}-\...
...x{\boldmath$v$}-\mu_k)-(1/2)\ln \vert\Sigma_k\vert+\ln P(C_k)
\end{displaymath} (314)

が最大となるクラスに識別される。但し、特徴ベクトルのクラス内変動は標本化誤差 によるものであり、その値は非常に小さく、クラス内の共分散行列 $\Sigma_k$の行 列式の値は次元を大きくすると指数的に小さくなる。このため、次元を大きくすると 正則でなくなることがある。

一方、判別分析を用いて、クラス内の変動を吸収しクラス間の分離を最大にする空間へ 特徴ベクトル $\mbox{\boldmath$v$}$ を線形写像して $\mbox{\boldmath$w$}$ を求め、 $\mbox{\boldmath$w$}$の空間 (判別空間)上で識別する方法も考えられる。



Takio Kurita 平成14年7月3日