「形(shape)」は、本来、パターンの相似変換に不変な概念である。ここでは、複
素自己回帰モデルに基づき、形の認識のための相似不変な特徴を得るための方法を示
す。 式(7.16)からわかるように、複素PARCOR係数 は
次の複素自
己回帰モデルの
次の係数
と等しいので、複素自己回帰係数について成立
する性質は同時に複素PARCOR係数でも成り立つ。
パターンの相似変換は、平行移動 と重心まわりの回転
、および大小伸縮
(
:正実数)とで表わされる。前述のように複
素自己回帰係数および複素PARCOR係数は原点まわりの回転と輪郭線(閉曲線)を追跡
する際の始点の位置の選び方に関して不変である。そこで、これら以外の変換に関し
て不変となるように複素自己回帰モデルを輪郭に当てはめる方法について考える。
平行移動に不変とするためには、重心を原点にとり輪郭点列を表現する方法や、隣り合 う輪郭点の差分に対して複素自己回帰モデルを当てはめる方法が考えられる。輪郭の量 子化誤差等のノイズの影響をより少なくするためには、前者の手法が好ましいと考えら れる。また、前者の手法を採用することにより、重心まわりの回転に対して係数が不変 となる。
大小伸縮に不変とするためには、輪郭の全周長を 等分する区間に分割し、各区
間内のデータ点を平均値で代表させ、輪郭点
とすればよい(図
7.2)。大きさの違う輪郭点列は
と表現されるので、
は
倍になる。従って、
や
も
倍になる。し
かし、これらは、式(7.9)右辺において打ち消しあうので、結局、複素自
己回帰係数
は大小伸縮に対して不変となる。この方法は、輪郭の量子化誤
差を軽減する効果もある。
実際の形の認識においては、必ずしも大きさに不変にする必要はなく、むしろ、大き さの違いも区別したい場合がある。そういう場合には、輪郭をある一定の周長で標本 化して複素自己回帰モデルを当てはめれば良い。