数量化1類は、日本人の読み書き能力の調査結果の分析の過程で林によって考え出さ れた手法であり、被験者の性別、年齢、産業構成、学歴などに関する情報から読み書 き能力(得点)を推定するために使われた[47]。つまり、数量化1類 は質的データから数値を推定するための手法であり、質的データに対する重回帰分析 であると考えることができる。数量化1類を非線形に拡張する前に、数量化1類につ いて概観しておく。
今、質的データとして与えられる説明変数を
とし、数値
データとして与えられる従属変数を
とする。ここで、質的データ
によって表現可能な事象は有限個であるので、以下では
によって表され
る事象を
とする。この時、数量化1類は、平均2乗誤差
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最適な係数 および
を求めるために、
式(2.19)を
で偏微分すると、
次に、線形変換の制約をとり除いて数量化1類を一般の非線形に拡張することを考え
る。非線形の数量化1類は、平均2乗誤差を最小とするような非線形の写像
を求める問題として定式化できる。この時、写像
は一般の非線形の写像であるから、各
に対して、最適な値
を独立に求めればよい。従って、平均2乗誤差は、各
の
関数として、
この
に関する偏微分をとると、
この非線形写像が最適であることは、以下のようにして確かめることができる。
から
への任意の写像
に対して、
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この最適な非線形の写像によって達成される最小平均2乗誤差は、
次に、
および
の統計量について見てみる。
の平均および分散は、それぞれ、
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これらの統計量を用いると、最小平均2乗誤差は、
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これらの関係は、線形重回帰分析や数量化1類でも良く知られた関係であり、数量化 1類を非線形に拡張しても同じように成り立っていることがわかる。