件名 チウ

ひどく頭痛がする。

ここ数日、愁事が山積していて、それが頭痛の原因だった。まさに頭痛の種。

今日は、頭痛と心配の因果関係について紹介しようかと思う。

心配なことがあると、つい、うじうじと考え込んでしまう癖がある。ここ数日、寝床に入ってから愁事に思いを巡らしてしまっていた。そんなことしても解決しないのに。

いや、解決しないばかりか、眠れない。

しっかり寝ておかないと、次の日の仕事(心配事との対峙)に影響する。と、今度は眠れないことに心配する。で、早く寝付こうと焦れば焦るほど、眠れない。

それでも、朝は来る。

「あまり寝られなかったな」と思いながら、仕事に向かう。

こんな日を数日繰り返していたので、その日は、市販の睡眠改善薬を飲むことにした。

ただ、睡眠改善薬は最終手段。だって、これ飲むと次の日、ひどく頭痛が出る体質だから。
頭痛の原因は、睡眠改善薬…… でもあるんだけど、実はそれだけにとどまらない。

その日の朝4時だった。

妻が、寝室に駆け込んできた。

「ネズミが鳴いた!」

と叫びながら。

睡眠改善薬が効いているぼやけた頭の中で、今起こっていることが夢なのか、それとも現実なのかを考えた。「ネズミが鳴いた」と朝の4時に騒ぐのは常人がすることではないので、夢であることを望みながら。

しかし、現実は残酷である。叫ぶ妻は現実だった。私は、状況を理解しようと考察を進めた。

仮に、そもそも家にネズミなどいなかったらどうだろうか? この場合、妻が朝4時に、存在しないネズミに対して「ネズミが鳴いた」と騒いでいることになる。となればこれは、現実にネズミが鳴いた以上の大事である。病院に連れて行くべき案件かもしれない。朝4時って、どこの病院がやっとるんじゃろ?

しかし、現実にはうちにはネズミがいた。去年の4月から飼い始めたハムスター。

とはいえ、である。妻は見たままを表現しただけだとしても、腑に落ちない。

つまり、ハムスターが「チウ」と鳴くことに、就寝中の私をわざわざ起こしてまで報告する大義が見あたらないのである。

そもそも、ハムスターは「チウ」と鳴くものである。妻が目の当たりにしたことは、至極、当然のことにすぎず、当たり前のことを、わざわざ朝四時に他人を起こしてまでライブで報告する必要などどこにもない。

当然、起こされた私のほうは、「で?」という感じになる。

で、ボーっとする頭で、ハムスターが鳴いたことが、なぜこれだけの騒ぎになるのかの説明を、妻に求めた。

<つづく>
次回配信予定 2月19日

チウ

2021年02月17日