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フィリピンの漁業協同組合と漁村振興
ーパラワン島北部の事例ー

6.おわりに ー漁村振興と漁協の役割ー
マニラの関係機関では、フィリピンの漁協について簡単な概説を聞いて、パラワンでは短時間の視察をしたにすぎません。ここでは、まとめというより、今後の調査課題のようなものを提示します。

漁協の存在意義はなにか?
かつて、漁協に限らず協同組合は、農村・漁村開発を進めていくうえで必要な組織と考えられていました。政府はもちろん、海外の援助機関も、組合の育成に力を入れてきました。しかし、成功するケースがあまり多くなかったことから、今では、簡単に組織・運営できる形態、例えば「協会」のようなものが設立されるのが普通です。パラワンの2つの組合の事例を、どこまで一般化できるのかどうか、検討が必要です。

資源管理と経済事業(Livelihood project)の結合が可能な条件とは?
パラワンの事例では、漁協は、資源管理と経済事業を結合させて運営しています。それが可能になったのは、次のような理由からではないでしょうか。

1) バランガイ(村)を基盤にした組織であったこと

バランガイには、”community-based organizations (functions)”が多数あります。行政機能、住民の合意形成・伝達機能、資源管理、生計向上、福利厚生、教育・訓練など、さまざまです。その幾つかを組み合わせたのが、漁協だったと考えられます。
言い換えれば、バランガイという社会的広がりの中にあって、人々の共同結合が可能になったのです。

2) バランガイを受け皿にした支援があったこと
カラマイの事例でみたように、バランガイを受け皿にした支援事業があると、それを機に住民の共同活動が始まりやすいのです。それがないと、共同活動を始めるのが難しいのかもしれません。

漁協を地域資源管理のメカニズムに組み込めるか?
1998年漁業法、1991年地方自治法などによる規定があり、これにもとづいて資源管理を実施するメカニズムが各地でつくられています。漁協がバランガイやマニシパルのFARMC(Fisheries & Aquatic Resource Management Council)の役割を果たす事例は、あまり多くありません。

漁協は経済事業活動をおこなう組織として構成されています。マニシパル政府、Bantay Dagatなどと協力して資源管理も担当するには、経済事業との調整が必要になるでしょう。

写真36:カラマイの海辺

漁村の成り立ちや地理的条件等によって、漁村の経済組織、資源管理組織の存在形態はちがってきます。しかし、1998年漁業法の内容がしだいに浸透し、マニシパル政府を中心にした資源管理のあり方が定着してきています。そうしたなかで、漁村組織のひとつである漁協がどこまで機能を果たすことができるのか、組織のあり方を含めて、検討することが求められています。

これまでのフィリピン漁協論にはない、新しい視点が必要になっています。

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