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2002.05


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2002.05.31

久しぶりの更新。この機会にタイトルも変えてみた。

更新していなかった間、なにをしていたかというと特に何をしていたわけでもなく相変わらずで、実験をして、PCを使って解析をして、また最近はようやく形になりそうな論文を書いているのだが、この「実験をして、PCで解析をして」というのが曲者で、実験の合間にPCでデータベースの相同性検索、DNA配列のアラインメント、Perlのスクリプト書き、といった解析作業を行い、解析作業の合間に実験作業を行い、ということで、休む暇なく働いている気分である。むかし何かで読んだ話で、ある研究者が「実験している間は頭が休んでいる。実験の合間に文献を読んでいれば、その間は体が休んでいる。一日中休んでいるようなものだ」と言ったというのだが、そんな境地には到底至ることができない。まあ肉体的にはともかく精神的にはとても忙しかった。今も忙しい。一つ何かをクリアしたら(あるいはしなくても)また次の課題が降ってくるというかんじで、余裕がない。一つの問題は論文を書こうと思って関連文献を読んでいると、そういえばこういうアイディアはどうだろうとか、よけいな事を考えてしまって、しかもなまじそれがデータベースをちょっと解析すればある程度の見当がつくようなアイディアだったりして、つい脇道にそれてその解析をはじめてしまったりして、そうやってどんどん本筋の仕事からはずれていってしまったりするのである。やれやれ。

とにかく世の中はゲノム解析時代で、莫大なDNA・蛋白質データが自由に利用できる。それは我々にとっては宝の山のはずなんだけど、どんな道具で、どこをどう掘れば宝が出てくるのか、こちらはそんな教育訓練はまったく受けて来ていないわけだから、試行錯誤しながら自力でなんとかするしかない。『実践バイオインフォマティックス』(別名、サルでも分かる!ゲノム研究のためのPCの使い方)とか読んだりして。(この本、山形浩生が朝日新聞書評欄で取り上げていましたね。まあHowTo本なんですけど。)とにかく、データベースを使ってこんなことを調べてみたいというアイディアはどんどん湧いてくる。けれど多くの場合、それを実現するには莫大なデータを処理しなければならず、手作業ではとてもやっていられない。そこでPerlやらExccelやらFileMakerProやらで自前の解析ツールをこしらえて、なんとかやっつける。付け焼き刃で泥縄なのは分かっているんだけど。まあそんな感じで、仕事が進んでいるような進んでいないような、いろいろ苦労して、自分にとっては面白いけど、それを面白いと思う人は世の中にほとんどいないだろうなと思われるような事が分かったりとか、そんな日々を過ごしていた。

他に仕事の上で変わったことといえば、 仕事用のMacintoshを新しく購入したこと。上で書いたような事情でPCにへばりついて仕事をしていると、iMac Rev.B+MacOS8.5では処理速度とか安定性とか、いろんな面でストレスが溜まってくるので、待望のG4液晶iMacが出たのを機会に新型を買った。SuperDriveつき。上下左右に首を振るのがとてもキュートである。このデザインはいろいろ悪口も言われているけど、とても良いと個人的には思う。MacOS Xで使っている。最初はいままでのOSとの違いにとまどったが、慣れればとても快適である。UNIX的な使い方にはまだ踏み込めていないが、それができるようになれば仕事の上でもいろいろな応用がきくはずと期待している。

同時にプリンタも購入した。今まで使っていたのはALPSのマイクロドライプリンタで、これはこれで気に入っているのだが、SCSIで、別のMacに接続されているし、共用で使っているので、いくぶん使いにくかった。今はプリンタもずいぶん安くなっているので自分専用を一台買おうということで、購入したのがhpのdeskjet 990cxi。なかなか優れた機械で、印字はきれいで速いし、自動両面印刷機能がついているのも大きなメリットだ。もうがしがし印刷している。プリントした解析結果のファイルが厚くなっていくとばりばり仕事をしているような気分になるから不思議である。


私生活も相変わらず。マンガはぼちぼち読んでいるが、最近、小説はほとんど読んでいない。学生のころ、忙しくてバタバタしていた時期にはほとんど小説を読まなかった時期があったけど、その頃のような感じ。最近読んだマンガで印象に残っているのは、TAGRO『マフィアとルアー』、榎本ナリコ『スカート』、比古地朔弥『まひるの海』、村上かつら『サユリ1号』(1)、さそうあきら『富士山」など。みんなイタイ系ですね。まあ好きなので。そうそう、イタイ系といえば羽生生純『恋の門』の終わり方は見事でした。名作。あと明智抄の『サンプルキティ』から『砂漠に吹く風』(単行本未収録分も含む)を経て『死神の惑星』まで一気読みとか、そういう現実逃避もしていた。明智抄は泣けるよね。

ノンフィクションで印象に残っているのは斎藤美奈子の『文章読本さん江』とか上野千鶴子と小倉千加子の対談本『ザ・フェミニズム』とか、柴田正良『ロボットの心』とか、いまさらだけど読んだ松下竜一の『狼煙を見よ』とか。斎藤美奈子関係は見つければ買っている。『鳩よ!』の「L文学」特集は、もちろん「妊娠小説」ほどのインパクトはないけれど、そこそこ面白く読めた。岩波の『21世紀文学の創造』シリーズの斎藤美奈子編「7 男女という制度」「4 脱文学と超文学」は興味があるところだけぱらぱらと。そうそう、山形-小谷「テクハラ」裁判と、田中真紀子、辻本清美バッシングをからめた本『叩かれる女たち』というのを買って読んでみたら、かなり面白かった。特に最後の座談会はげらげら笑いながら読みました。物書きなら裁判じゃなくて言論で対抗しろよとさんざん言われてきた小谷サイドだが、裁判が済んで出してきたこの「対抗言論」は、裁判における山形サイドの言動について積年の鬱憤を晴らすような言いたい放題で、なかなかよくできていると思った。もちろん一方的な言い分なのでそのままには受け取れないが、山形側の一方的な言い分もさんざん読んできたので、バランスをとるには良いかと。まあ、この事件そのものは一言でいうと「トホホ」なんだけど、少なくとも「テクハラ」という概念が多少は一般的になった(僕自身もこの事件のおかげで初めて認識したし)という副次的な効果があったという点だけは、良かったのではないでしょうか。

仕事関係では、この春に出版された『Mobile DNA II』という巨大な本を購入して、税込み¥22818の元をとるために(いやまあとれないと思うけど)ぼちぼちと読んでいる。50本のレビューを集めた論文集。なにせ1200ページ(!)もあるので読んでいると腕が痛くなるんだけど。それよりは薄い『Lateral DNA transfer』(F. Bushman)なんて本も出ていて、こちらも読みたいんだけど、なかなか余裕が無い。ていうかこんなの読んでいるとよけいな事を考えて横道にばっかりそれてしまって、本筋の仕事ができない! その他、訳書では『バイオインフォマティックス』(D.W. Mount)なんて本も。データベースの基礎や、アラインメントや相同性検索のアルゴリズムの基礎なんかが解説されていて、これはなかなか良さそう。分子生物学を始める学生は、みんな読むべき本じゃないだろうか。

bk1の書評用に読んだ本は、みんな当たりだった。シービンガーの『ジェンダーは科学を変える!?』、グールドの『ダ・ヴィンチの二枚貝』、ゲーリングの『ホメオボックス・ストーリー』。とくにグールドの「キリンの首」についての話は必読。自然選択による進化の話をするときに必ずと言ってよいほど例に出される「キリンの首」だが、本当にこれは自然選択の議論をするのに適切な例なのか、という話。書評を書いてそれほど間もない頃にEVOLVEからグールドの訃報が入ってきてショックだった。

映画もぼちぼち観ている。『メメント』はミステリ的な面白さを満喫できた映画だった。結果から原因へと時間を逆に辿っていく構成が斬新。DVDが出たら買うつもり。『ラットレース』は何も考えずに楽しめるコメディ。ベタなネタが多いが、こういうのは好きだ。『ロード・オブ・ザ・リング』は字幕版で観た。文句なしに面白い。『WXIII』は悪くないけど、比べれば前2作の方が良かったと思えてしまうのが残念。『ビューティフル・マインド』は事前に何の情報もなく観にいったので、あのネタには驚いた。『E.T.』は実は初めて観たんだけど、こう言っては何だけど、E.T.って可愛くないよね。かなり良かったのがインド映画『ミモラ』で、絢爛豪華な衣装、美しいダンスと音楽、主役の女優の美しさ、ベタだけどそれだけに泣けるストーリーと、何も考えずに楽しむ娯楽映画としてはかなり水準の高い映画だったと思う。しかしそれにしても客が我々を含めて5人しか入っていなかったというのは、一体どういうことなのか。『スパイダーマン』は悪くはないけど、期待していたほどではなかったな。他にも何か観たような気がするけど忘れた。思い出したらそのうちに書くかも。ああそうだ思い出した、ハリポタをDVDで観たんだけど、何であのくそつまらない映画があれだけヒットしたのか、理解不能だった。

料理関係では、新しく作ってみたのは、とりハム、そしてナムルくらいか。とりハムはうわさに違わずウマー。腕に関係なくおいしく出来てしまうのが良い。ナムルは、もやし、ゼンマイ、ホウレンソウなんかを作ってみたけど、買った方が旨い (T_T) ので、もっと修行を。

他に最近はまっているのがキャスト・パズルというやつ。ひらたく言うと知恵の輪。本屋さんなんかで1000円くらいで売っているシリーズもので、これがなかなか良くできている。簡単なやつはすぐ解けるんだけど、手強いやつも多くて、面白い。デザインもかっこいいしね。

まあ大体こんな感じで、一応元気に生きています。ではまたそのうち。



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