2007年度人文地理学情報処理実習
・2007/07/26に使用するデータ(課題2): passengercar.xls
・2007/07/19に使用するデータ: jyukaiki.xls
課題1データ: toyota.xls
・2007/07/05に使用するデータ : 2006Baseball.xls
修正ウィーバー法による各県の農業地域区分
2007年の人文地理学情報処理実習は,社会調査士プログラム対応の授業になりました。その関係で,地理学では重視してきた作図にかける時間数が減りました。それにもめげず,修正ウィーバー法による農業地域区分図は,あえて作成してもらいました。イラストレーターを使用してきれいな図ができていますが,画質は30%に落としています。図の解説は学生個人にまかせているので,不充分なところがあるかもしれません。
千葉県において作付面積が最も多いのは稲であり、次に野菜類が続く。千葉県ではこの2種類の作物の栽培を、農業生産の土台としているようだ。稲は東京都心付近を除く県全体で多く栽培されている。稲は比較的広い作付面積を必要とするために、農業土地を広く取れない都心付近では稲はあまり栽培されないのだろう。野菜類は都心付近である県北西部〜県北東部にかけてと、県南部に多く見られる。千葉県は都心に近いことから、野菜類の多くは近郊農業として生産されており、都心に向けて出荷されていると思われる。千葉県の特産物としてよく知られる落花生は、千葉市付近において多く栽培されている。これには、落花生は作付面積が狭くて済むことや、落花生の加工・加工品の販売が千葉市で盛んであることが要因としてあるかもしれない。県南部では花き/花木が多く栽培されていることが特徴的だが、これには黒潮による暖かい気候が影響しているようだ。平成16年には、ペチュニア、すいせんの産出額第一位が千葉県となっていた。県北部の大栄町、栗源町周辺では、稲、野菜栽培に加えていも類の栽培が盛んである。大栄町、栗源町ではそれぞれベニアズマ、紅小町といった名前のさつまいもの栽培が盛んで、加えて里芋も多く栽培されているようだ。また、特徴的な市として浦安市があるが、この市はほぼ住宅街、市街地、テーマパークで埋め尽くされているようで、販売目的作物の作付面積、農家が存在しなかった。
静岡県の農業分布で最も特徴的なのは、工芸作物の栽培が盛んな地域が非常に多いということである。この工芸作物というのは静岡県の場合主に茶であり、その生産量は日本一となっている。茶の栽培には一定の条件が必要であるが、静岡には牧の原台地に代表されるような水はけの良い茶の生産に適した土地が多く見られるからである。特に県北西部の山間部では茶の生産が盛んであり、川根などの茶は高級茶として有名である。また、駿河湾周辺の沿岸部、特に平野部で稲作が盛んである。さらに、静岡県は果樹の栽培も盛んであり、みかんや高級メロン、温室イチゴなどが主な果樹となっている。これらは特に県東部の温暖な気候で栽培されている。その他、野菜等の生産も盛んであり、静岡県は農業が比較的盛んな県であるといえそうである。
愛知県の農業を表から見てみると、ほとんどの市町村が稲作をしている事が分かる。その中でも、稲一種となっている市町村は88市町村中、45市町村を占めている。また、県中心部(豊田市や岡崎市等)では麦の生産が盛んであることが分かる。太平洋沿岸部、特に知多半島、渥美半島では、野菜類の栽培が盛んで、キャベツ、白菜栽培が盛んだということが調べてわかった。また、果樹の栽培も盛んであり、これはメロン、そしてイチゴの栽培が盛んであることが分かった。渥美半島は私のイメージでは、電照菊の栽培が盛んであるというイメージが強かったが、そのような特徴があまり現れていなかった点が驚いた。
作成した地図を見てみると,和歌山県の農業分布で最も顕著なのは,果樹栽培の多さだろう。基本的に稲が多いのはもちろんだが,果樹に特化している地域が非常に多い。紀北では,果樹型の市町村が多いのが目立つ。紀中では,野菜の栽培も多く見られる。また,花きの栽培も多く見られる。紀南では,果樹と稲の栽培が盛んであることがわかる。和歌山県は,果樹王国といわれ,果物の栽培が非常に盛んな県である。主に栽培されている果樹をみてみると,みかん,梅,柿などは全国でもトップクラスのシェアを誇っている。2006年のみかんの収穫量は全国シェア1位の18%で,梅の収穫量は全国シェア1位56%,カキの収穫量は全国シェア1位で22%である。果樹について言うと,紀北では,かき・もも・キウイ・いちじくなどが盛んであり,紀中では様々な種類のみかんの栽培が盛んであり,紀南では梅の栽培が盛んである。ちなみに梅は県の花にもなっており,果樹栽培が昔から和歌山県の人々と深いつながりがあったことが分かる。
岡山県の農業の大半は、稲である。中央部はほぼ稲が特化している。近年、全国ブランドの良食味品種である「ヒノヒカリ」が増えている。また岡山には、伝統的な良食味品種である「朝日」、「アケボノ」もある。岡山県は、降水量1mm未満の日数が全国で一番多く、好天に恵まれていて、さらに水源も豊なところから稲作が盛んに行われている。稲 ・果樹が特化している地域は、主に西側に集まっている。さらに、西側では海側と山側とに分けられる。前述したとおり、岡山県は好天に恵まれており、果樹栽培に適している。しかし、適しているといっても、岡山県の海側と山側とでは気候が異なるので、ぶどうや桃などを品種改良し、岡山県の気候に適した果樹を栽培することに成功した。現在では、白桃、マスカット、ピオーネが共に生産量全国一位である。ちなみに、岡山県の県花は桃の花である。稲・豆類が特化しているのは、主に岡山県東部の内陸部である。周りは、稲だけが特化している地域が多いが、ここだけ豆類も特化している。黒大豆の生産量は、全国一位である。稲・野菜類が特化しているのは、西部の内陸部と北部の山間地である。北部のほうは、水源が近くにあり、稲や野菜に適していると思う。西部のほうは、果樹栽培が特化している地域の周りにあるので、果樹栽培に適さなかった土地で野菜類を栽培していると思う。野菜類が特化しているのは、南東部の牛窓町というところだけである。他にも、稲 ・いも類・豆類が特化しているのは、南側の清音村だけであり、稲 ・麦類が特化しているのは、南側の灘崎町だけである。
愛媛県の農業で大きな割合を占めているのは果樹(主にみかんなどの柑橘類と考えられる)と稲である。市町村ごとに重点の置き方(修正ウィーバー法による判別のもと)は違うが、瀬戸内海の島々も含めてほぼ全域で栽培されている。全国的に見てもみかんの産地として有名なイメージが先行し果樹1型の分類が大半を占めると思われがちだが地域別に見ると、修正ウィーバー法による果樹の1型に分類されたものは、南予の沿岸部そして北部やしまなみ海道の諸地域に集中的に見られる。一方、稲の1型に分類されたものは南予と東部の内陸部に多く見られる。稲は修正ウィーバー法の分類に関わらず松山・新居浜・今治市などの都市近郊で多く栽培されている。また、愛媛県はこの二つを重点的に併用している市町村が多いことも特徴としてあげられる。稲の1型に分類された以外の内陸の地域では稲だけでなく他の野菜や麦、工芸農作物も併用して栽培している。ここで挙げる工芸農作物は冷涼な気候を生かした茶であるが、これらは沿岸で栽培されることなく全て内陸部で栽培されている。これらの栽培規模は小さく自給的な要素が大きい。また、5年、10年前の同様のデータと比べると別子山村など農業が行われなくなった地域も出ている。注目すべきは、瀬戸内海側では稲の栽培する地域が内陸側(高知県側)の地域に比べて少なく、逆に果樹は内陸部側に比べ瀬戸内海沿いに多いことである。これは、瀬戸内海側は温暖で降水量の少ない地中海性気候の影響を受け、内陸部側は、全国的にも有名な多雨地域である高知県の雨が四国山地を越え内陸部に注いでいるのではないかと考える。しかし、近年では台風や少雨の影響でみかんやいよかんの生産量が減少し、2005年にはシェアで和歌山県に抜かれている。
福岡県の農業は全域的に稲が中心である。ほとんどの地域が、稲の一種生産か、稲を第一種とする二種もしくは三種生産であった。特に、福岡市を含む県中部は、稲の一種生産が大きな割合を占めている。稲作が発達した主な理由には、温暖な気候と、筑後川がもたらす豊富な水資源の供給が考えられる。また、南部では稲と麦の二種生産の地域が目立つ。この地域一帯には日本有数の穀倉地帯である筑後平野が広がり、その温暖な気候から裏作として麦も栽培されているためである。南部のその他の地域では、稲や麦に加えて果樹、野菜、工芸農作物などが生産されている。特に、筑後川上流域は柿とブドウ、中流域では万能ねぎやイチゴ、下流域ではメロンの栽培が盛んである。さらに、北部でも、トマトやキャベツの生産が盛んな北九州市をはじめとして、野菜や果樹の生産も行われていることが分かる。このように、福岡県の農業は、中心である稲とその裏作の麦に加えて、南部の特色ある作物の生産がその特徴であるといえる。
熊本県の農業分布は,大きく分けて県北東部とそれ以外の地域とで分けられる。まず,稲作は県内各地で生産されており,稲作に特化している地域も沿岸部・山岳部問わず見られる。そして,南西部の沿岸部および島しょ部では果樹の生産が盛んであることが見受けられる。県南部では工芸農作物の生産も盛んであり,これは熊本県で生産が盛んであることが知られているい草であると考えられる。い草は畳表の表層財などに用いられており、生産は全国的に見ても熊本県以外ではほとんど行われていないという。次に県北東部を見ると、沿岸部とは対照的に野菜の生産が盛んであるようである。熊本県は全国的にも農業が非常に盛んな県で,トマトやスイカ、そして甘夏みかんの生産は全国で1位となっている(2001年)。県中央部から北東部にかけては,稲や果樹を中心として麦やいも類,そして花き類なども盛んに行われている地域があり、熊本県の農業の多様性が分かる。熊本県は全域で稲作が行われているほか,沿岸部では果樹や工芸農作物,山岳部では野菜の生産が盛んであるなど,農業が非常に盛んで多様性があることが図から読み取ることができる。
・地域によって生産しているものの分類が非常に多い。このことから鹿児島が多くの種類の農作物を作れるほど農業に向いている土地であるということが分かる。
・サツマイモの生産が全国の四割を生産するほど盛んであるためかいも類を生産している地域が非常に多い。
・いも類は主に南部で生産されている。
・稲は主に北部で生産されている。
・稲一種類だけ生産している地域が北部には多い。
・奄美諸島では果樹の生産が盛んである。
通勤流動図の作成
2005年度の人文地理情報処理実習でも,平成12年の国勢調査を利用して,通勤流動図を作成してもらいました。使用しているソフトはイラストレーターです。図の解説は,各自にまかせています。
平成12(2000)年の国勢調査の結果より、宮城県の通勤圏の様子を調べた。県内には4つの明瞭な通勤圏が見られる。中でも仙台市が最も大きな通勤圏を形成しており、周辺21市町村からの通勤者が集中している。通勤者数も県内で最も多い数字を示し、仙台市が宮城県の中心的な都市になっていることが分かる。次に大きな通勤圏を持つのは石巻市で、この2市が県南部の結節流の主要な集中先となっていると言える。県北部では古川市と迫町が主な通勤圏を形成しているが、古川市は仙台市へ、迫町は中田町への結節流が見られ、それぞれの市町は従属都市としての性格も有していると考えることができる。他にも築館町、志津川町、気仙沼市を中心とした3つの小規模な通勤圏が県北部に形成されている。宮城県の通勤圏は南部では2市に集中し、北部では分散している。また、宮城県にはいずれの通勤圏にも属さない通勤不活発地域がなく、結節地域化が進んでいると言える。
平成12年「国勢調査報告」の通勤統計によれば、福島県内には4つの通勤圏が見出せる。最大の通勤圏を形成するのは会津若松市で、周辺11町村の第一位通勤先となっている。また、県北では福山市が周辺10町村の第一位通勤先であり、この二つの市が通勤結節流の主な集中先となっている。次いで、郡山市が周辺8市町村の第一位通勤先で、通勤者数では県内一位となっている。県南では、白河市を中心とした通勤圏が存在し、周辺6町村の第一位通勤先となっている。これら4つ以外には、原野市、喜多方市、須賀川市、富岡町および棚倉町を中心とする小規模な通勤圏が存在する。ともに周辺4町村の第一位通勤先となっている喜多方市、須賀川市はそれぞれ会津若松市、郡山市の通勤圏に含まれ従属都市といえる。いずれの通勤圏にも属さない通勤不活発地域は県西の只見町、檜枝岐村、舘岩村および西会津村、県南の矢吹町の5つである。福島県の通勤圏は、県西部を除いて福島県内各地に分散しているといえる。
新潟県内における通勤の流れをみると、三つの大きな通勤圏を見出すことができる。県内でもっとも大きな通勤圏を形成しているのは新潟市である。周辺地域から広く多くの通勤者を集めており、地域の中核的都市となっている。次いで上越市は高田平野一帯の通勤者を集める、県南部の中核都市となっている。長岡市も比較的広い地域で高い通勤率を持つ通勤圏を形成している。これら三つ以外にも、県北東部から見ていくと、村上市、新発田市、三条市、小出町、十日町市、柏崎市、糸魚川市、佐渡島では佐和田町に通勤圏の形成が見られる。また新潟市と長岡市の間の地域には人口十万人以下の小規模都市が多数見られ、新潟市・長岡市の通勤圏の中に組み込まれながらも、小規模な自らの通勤圏を形成し、それぞれが複雑に結節し合っているものと考えられる。
2000年の国勢調査の通勤統計を用いて、福岡県内の通勤圏を捉えてみる。統計によると、県内にはいくつかの通勤圏が見いだせる。その中でも最大の通勤圏を形成しているのは福岡市である。周辺24市町村の第一位通勤先となっている。県東部では北九州市・飯塚市の通勤範囲が広いが、通勤者の絶対数や町の大きさから言えば、北九州市の方が周辺の地域との結節の度合いは高いと思われる。県北部は久留米市に通勤が集中している。その他に、田川市・行橋市を中心とする小規模な通勤圏が存在するが、前述の通勤圏ほどの規模には至らない。いずれの通勤圏にも属さない通勤不活発地域は黒木町・甘木市・大島村・杷木町がある。
2000年国勢調査の統計により,熊本県内の通勤の流れを調査し,図に示した。これによると,熊本県には熊本市,八代市,本渡市,人吉市のそれぞれの都市を中心とした,4つの主要な通勤圏が存在しているといえる。県内で最大の通勤圏を形成しているのは熊本市である。菊池・山鹿地域,宇土・益城地域などの周辺地域の市町村から多くの通勤者を集めている。八代市は八代地域の中心都市として,周辺町村の通勤者を多く集めており、熊本市に次ぎ県下第2位の通勤圏を形成している。人吉市は人吉・球磨地域で高い通勤率を持つ通勤圏を形成している。本渡市は天草地域の多くの町から通勤者を集めている。また,山間の阿蘇地域では地域内の町村での相互の通勤が目立つ。熊本県全体をみれば,図からもわかるように,熊本市を中心とした通勤圏の規模が圧倒的に大きく,それ以外の地域は通勤率も通勤者数も相対的に比べて少ないといえる。
<以下は2004年度のもの>
人々は,自分の住む町の中だけで生活するわけではない。国勢調査における通勤統計を調べることにより,人々の動きの流れを知ることが出来る。
例えば山形県の場合,2000年の統計によると,4つの大きな通勤圏が見られる。それは,酒田市,新庄市,鶴岡市,山形市の4つである。これらの都市は周辺地域の第1位通勤先になっており,特に山形市は通勤者数において県内1位である。しかし第1位通勤先として顕著に集中しているわけではなく,これら4つの都市は範囲に関しては同じくらいの規模となっている。
また,それ以外にも,中部に寒河江市,南部に長井市,米沢市を中心とする小規模な通勤圏もある。小国町は長井市に隣接していて,そこまでの交通の便が良さそうなのに周辺への通勤は発生していない。そして酒田市など4つの都市は,自分の都市内で就業している人が圧倒的に多い。山形県北部,中部に主な通勤圏があるとはいえ,県全体を見てみると,通勤圏はまんべんなく散らばっているようだ。
山形県は通勤の流れから見て,結節地域化が進んでいると言える。
2000年国勢調査の統計により,岐阜県下の通勤者の動行を調査した.
図を見ると通勤率を示す矢印がその太細に関わらず岐阜市に著しく集中している.岐阜市を第一位通勤先としている市町村は21市を数え,県南部の人々の生活の中心として重要な役割をはたしている.その西では大垣市が岐阜市に次ぐ規模で通勤者を集めている.大垣市は周辺10市町村の第一位通勤先となっており,岐阜市と共に県南西部の経済活動を支えている.
岐阜市が多数の他市町村の第一位通勤先となっているのは,その周辺の市町村の行政区分が細かく,地域全体の面積の割に市町村数が膨大な値となっていることも要因として挙げられるが,例えば板取村の場合,岐阜市とのあいだに美山町・高富町といった比較的面積の大きい町や村が位置しているにも関わらず岐阜市を第一位通勤先としておりその通勤率は23.0%と高率を示していることから,やはり岐阜市の他市町村への影響力自体も大きいものと判断できる.
県南東部では中津川市,中央部では八幡町と下呂町,北部では高山市が通勤者を他市町村から集中させている.また,県南部の,愛知県に隣接している複数の市町村は名古屋市や一宮市の通勤圏となっており,県境を越えて通勤する人も多い.
白川村・藤橋村・坂内村は通勤率が5%未満の低率を示しており,これは周辺に規模の大きい都市がなく,また地形や交通の状態が通勤に適していない結果と思われる.岐阜県の地形は広範囲に渡って急峻な山岳地形で構成されており,北部は主要道でさえ積雪によって冬季通行止めとなる箇所が多い.岐阜県は南北で通勤者の動きが大きく異なっているのが特徴であると言える.
通勤圏は結節地域の一つであり、都市圏を設定する指標の一つである。結節地域はある地域内部に一つまたは複数の中心点との間に強い結びつきが存在することが必要であり、その結びつく空間的な範囲のことを示す。ここでは、三重県内における通勤流動が都市間でどのように結びついているのか、またその通勤の範囲はどのくらいのものか捉えてみたい。そこで、平成12年「国勢調査報告」の通勤統計から市町村別の通勤流動のうち、最大流動のみを扱い、結節地域を設定した。図から、県内には四日市・津・松阪・伊勢の4つの通勤圏が見出せる。四日市市・津市では他市町村への通勤はほとんどない。四日市市は周辺6市町村の第一位通勤先であるが、近くに津市・桑名市、そして都市規模の大きな(吸引力の強い)名古屋市の通勤圏があるため人口規模の割合からみると通勤圏の範囲が狭い。
津市は県内最多の周辺10市町村の第一位通勤者先である。通勤者率の度合いも高く通勤結節流が顕著に集中しており、県内最大の通勤圏を形成している。松阪市は津市、伊勢市は松阪市の通勤圏に含まれており県内通勤圏で階層性がみられる。松阪市は津市よりも伊勢市は松阪市よりも階層性が低いが、これらの都市に従属している都市もあり、7つの周辺市町村がそれぞれの通勤圏に属している。県内にはこれら4つの通勤圏以外にも、桑名市・上野市・阿児町・熊野市・尾鷲市を中心とする小規模な通勤圏が存在する。県外の都市圏に入っている都市もある。県西部の名張市は大阪都市圏から約60分の距離であり、80年代前半から大阪通勤圏の住宅都市として大規模な住宅地が造成されたことから大阪への通勤者が相対的に多く、大阪市の通勤圏に入っている。また、県の南端にある紀宝町・鵜殿村は県内の周辺市町村よりも隣県の都市の方が通勤者の吸引力が強く、距離も近いため新宮市の通勤圏になっている。県内県外どこの通勤圏にも属さない通勤不活発地域は県南部の南島町のみであり、三重県は結節地域化が進んでいるといえる。
2000年度の国勢調査から兵庫県の通勤圏を考察すると,3つの大きな通勤圏が見出せる。その3つは,姫路市,神戸市,大阪市である。
まず姫路市は,主に市から北,及び西に位置する多くの小規模市町の第1位通勤先となっている。これは,東に位置する市町の多くが神戸市へと流れるものによる。姫路市の通勤圏は広く,県最西端の上郡町や,中部の大河内町や神崎町からも多くの通勤者を集めている。
次に神戸市は,県庁所在地としてもあり主に神戸〜姫路間からの多くの通勤者を集める大都市である。しかし,姫路市ほど通勤圏は広くはなく,神戸市以西の8市町の第1位通勤先はさらなる大都市である大阪市となる。そのため,神戸市を第1位通勤先とする市町は明石市など4市町に限られ,都市の抱える人口,規模などから想像されるほど通勤圏は大きくないことが分かる。
淡路島では,島南東部に向かうほど,中心性の高い市町となり洲本市で最大となる。また,淡路町は1998年4月に開通した淡路海峡大橋を使っての通勤者が神戸市を第1位通勤先としている。その他,県北部では,豊岡市,村岡町,和田山町などが,周辺の小規模市町から通勤者を集めている。
通常私たちの日常生活は一つの市町村に限定されることはなく,近接する他市町村とも密接な繋がりを持っている。今回は,平成12年の「国勢調査報告」の通勤統計を使って,和歌山県の通勤圏を調べ,人々の生活の範囲つまり都市圏を考えてみようと思う。ここで通勤圏に着目した理由は,人々の生活の基盤となる経済活動を支える私たちの活動が勤労だからである。
まず,図から県内には大小合わせて5つの通勤圏があることがわかる。そして最大の通勤圏は和歌山市で,周辺9市町村の第一位通勤先となっている。和歌山市は県庁所在地であり,様々な営業所や企業が集中し,経済活動が盛んであるために周辺市町村から人々が多く通勤しているものと思われる。御坊市と田辺市は前者が周辺7市町村の,後者は周辺6市町村の第一位通勤先であり,ほぼ同規模の通勤圏であると思われる。その他には,橋本市や新宮市を中心とする小規模な通勤圏も存在している。
しかし,全体的に県北部に通勤圏は集中しており,県北部以外の地域は通勤率も通勤者数も相対的に県北部に比べて少ない。また,県東部には紀伊山地があるため,山村では通勤が発生しない地域もあり,都市圏は沿岸部に集中していることも見てとれる。また,県内の都市圏は紀ノ川や日高川などの河川流域に存在していることも特徴である。県北部の活動的な人の流れと対照的に県南部の不活性化が浮き彫りになったのではないだろうか。
広島県の88市町村について通勤者の流動の分析を行った。資料は2000年の国勢調査を用いた。広島市は労働市場の規模が大きく周辺市町からの多数の通勤者を集めており,県内では最大の通勤圏を形成している。主に府中町,廿日市市,東広島市,呉市,海田町,熊野町,坂町,大野町からの通勤者が多い(図)。また,南部では呉市,東部では福山市を中心とする通勤圏が認められる。黒瀬町,音戸町,川尻町は呉市の機能地域に含まれる。これらの町村に住み呉市で働く人が多いからである。福山市には神辺町,府中市,尾道市や沼隈町からの通勤者が多い。北部では三次市と庄原市の中心性が高い。しかし,広島県の他地域に比べると通勤者が少ない。全体的には広島市から福山市にかけての瀬戸内海沿岸部において人口規模の大きい都市が分布しているため県南部で機能地域(結節地域)が発達している。産業立地の郊外化や交通網の発達が今後も続けばより複雑な機能地域になると考えられる。
<2002年度>
<2001年度>