"ただいま読書中"(近況一言報告)1998年4月

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1998.04.30
青土社『現代思想』5月号は「環境破壊」特集なんだけど、フェミニズムがらみの記事が多くて面白そう。まだエヴリン・フォックス・ケラー『動く遺伝子』『ジェンダーと科学』『機械の身体』『生命とフェミニズム』の著者)へのインタビュー記事しか読んでいないけど、これが面白い。前半はバーバラ・マクリントックを描いた著作『動く遺伝子』の話で、ケラーがこの本を著した意図、その受け止められ方などが語られる。後半はケラーの研究が初期のころから最近にいたるまで、どのような変遷をたどってきたかを述べている。先に挙げた本にのっている諸論文が、ケラーの仕事全体の流れの中でどういう位置にあるのかが分かる。やっぱり(積ん読の山に埋もれている)イアン・ハッキングの『表現と介入』は、読まないといけないんだろうな、ということも分かる(^_^;。
岩波書店『科学』5月号を"evolve ML"や"human ML"で紹介された「書評バトル」にひかれて購入。これは池田清彦氏が佐倉統著『進化論の挑戦』の書評をし、逆に佐倉統氏が池田清彦著『さよならダーウィニズム』の書評をするというたいへん楽しい趣向で、内容は想像できるとおり、池田氏が「どうひいき目に読んでも私には賛同できる部分がほとんど見い出せなかった」と書けば、佐倉氏は「構造主義進化論者の描くダーウィニズム像は、架空のワラ人形でしかない」と書く。佐倉氏はさらなる議論の継続を呼びかけているので、ぜひ実現させて欲しいものだ。これが続いてくれると僕が『科学』を買う機会も増えることでしょう(^-^)。
現時点での僕の感想。佐倉氏は、池田氏の「構造主義」理論がまったくのナンセンスだというのではなく、それがダーウィニズムに反しない(含まれる)と言う言い方で反論をしている。それはそうかもしれないんだけど、池田氏もおそらくそのような反論があるだろうことははなから承知の上で、確信犯的にああいう書き方をしているのじゃないかなと思う。「ダーウィニズム陣営もそんなことは前から考えている」と言いながら、現実には池田氏の意図するような方向では一向に研究が進まないという主流「進化学」の現状へのいらだちが、池田氏にはあるのじゃないだろうか。そしてそれを突き崩す戦略として、ダーウィニズム内部での局地戦という形にするよりも、対立点を鮮明にして「外部」から攻撃をかけ、ダーウィニストたちが(彼らの主観においては)「ダーウィニズムの枠内で」ではあっても、より「構造主義的」な方向へシフトするように促す、という効果を狙っているのじゃないか、と思うのだけど…、穿った見方すぎるかなあ。逆に池田氏による批判の方は佐倉氏の著作を読んだときに僕も釈然としなかった部分なので、すっと胸におちてきた。この辺りの問題は、進化学者たちが何をもって「理解」という風に見なす(感じる)か、という点とも関連していて、『現代思想』でケラーが話している内容とも関係がありそう。
今月号の『科学』は他にも面白い記事がいろいろあって、買いです。
とり・みき『事件の地平線』購入。


1998.04.29
午前中は本の整理などをして、ハードカバーを残しておおむね片付ける。午後から大学に出て実験。その前に本屋によってマンガを何冊か購入。『プラスチック解体高校』1巻(日本橋ヨヲコ)というのを見つけて、タイトルにひかれて買ってみたら、結構おもしろい。今後に期待。ヤンマガは最近全然見てなかったけど、たまには覗いておかないといけないな。他には中川いさみ『大人袋』3巻とか、永井豪のムック本とか、唐沢なをきとか。


1998.04.28
昨夜はマンガを8〜9割がた、本棚に突っ込む。今日は文庫、新書、ハードカバーなどを整理する予定。


1998.04.27
というわけで、スチールの本棚3本を買い足して組み立てる。でも本はまだ段ボールの中。
『細胞工学』別冊の『脱アイソトープ実戦プロトコール2』を購入。うちの研究室ではもうしばらく前からラジオアイソトープ(RI、放射性同位元素)はほとんど使っていない。シークエンスは共同利用のオートシークエンサを使い、ノザン、サザン、in situ ハイブリダイゼーションはDIGのシステムを使っている。(急に使う必要が出来た時のために、RIの講習会や健康診断(含む採血)は受けているけど。)こういうプロトコール集を読んでいると、これだけのことがRIなしで出来るんだから、もう使う必要はないんじゃないかと思えてくるのだけど、でもやっぱり健康診断で血を採られ続けるんだろうな、万一使うことがあるかもしれないし…、と思いながら。


1998.04.24
引っ越しが済んで、新しい部屋につまれた段ボールの量にぼう然とする。本棚を2、3本買い足さないといけないような気がする。あるいは血も涙もなく本を売り飛ばすか。段ボールにつめられて押入の奥に眠っているよりは、本にとって幸せかも。


1998.04.23
昨日は研究室の新人歓迎会で、2時すぎまで飲む。大学でこんなに遅くまで飲んだのはひさしぶり。8時間くらい飲んでいたことになるのか…。今年の4年生は全体的に酒が強いらしい(良いことだ)。今日は今日で生物系の教員、事務員の新人歓迎会。明日は引っ越しだというのに、こんなことで良いのか(良くない)。早く帰って荷造りしないと。
森山さんが【ネットサイエンス・インタビュー・メール】というメールニュース・サービスを始めるということで、早速登録。
西原理恵子『鳥頭紀行ぜんぶ』は生協で平積みだった。売れているんだろうね、サイバラ、最近。
岩波新書の新刊『稲作の起源を探る』(藤原宏志)購入。プラント・オパール法という解析法によるデータを軸に、水田稲作の発祥と伝播をさぐる本。


1998.04.22
『今はもうない』読了。このシリーズ、どんどん固定客専用になってきているみたい。ヒントが多いので仕掛けは途中で分かっちゃったけど、楽しめました。
岩波ブックレット『戦後を戦後以後、考える』(加藤典洋)購入。
サンデーコミックの新刊が出ていたので、買って読む。藤田和日郎『からくりサーカス』3巻、曽田正人『め組の大吾』12巻、北崎拓『なぎさMe公認』9巻。


1998.04.21
化学同人から出た『科学研究ガイド』(R・J・ベイノン)は研究生活に足を踏み入れる学生のためのガイドブック。非常に基本的なことも解説されている。こういう知識は研究室に入って生活しているうちに、教員や先輩の言動を見て自然に身につけていくものだと考えられていることが多いと思うが、こうやって明示的に示してあげるほうが効率的かもしれない。マニュアルに囚われてしまうのはつまらないけど、最低限知っておくべき基本というのはあるわけだし。


1998.04.20
『無脊椎動物の驚異』読了。著者のコニフの文章は、読者を楽しませようというサービス精神にあふれている。内容も面白い。おすすめ。
森博嗣『今はもうない』を岡山の紀伊国屋でようやく入手。あるところには大量にあるんだよなあ、やっぱり田舎は迫害されている(ため息)。
『はじめの一歩』42巻、ほかマンガを数冊購入。


1998.04.18
進化生物学 Mailing List "evolve" や、野田令子さんのページで紹介されていた『DNAからみた生物の進化』(ロジャー・ルイン)。別冊日経サイエンスのシリーズで、図版が豊富。ただし分子系統・分子進化の話が中心なので、たとえば発生の話とかは全然ありません。
別冊宝島『東大さんが行く!』をぱらぱらと読む。なんか重いもの背負っている人が多いな、という感じ。そういう話を集めたんでしょうけど。初対面の人に自分の大学名を言いたくない東大生が7割、というのがおかしい :-) 。世間が東大(生)にどういうイメージをもっているかぐらい承知の上で、東大を選んだんだろうにね。
『Comnavi』vol.6は石ノ森章太郎追悼特集。作品リスト付。


1998.04.17
実習に使うゾウリムシのケアをする。全滅しているんじゃないかと恐れていたが、電流を流して集めてみると(ゾウリムシには走電性があるのだ)、元気に生きていた。年に2回のケアでちゃんと生きているんだから、扱いやすい材料だよね。さて、どういう世話をするかというと、ワラの煮汁の培地にバクテリアを生やして、それをゾウリムシのエサにするのだ。液体カロリーメイトを培地に使えるという話もあるので、試してみるつもり。
船戸与一の新作『流沙の塔』、今回は中国が舞台。船戸の作品は読むタイミングを逃してしまった『蝦夷地別件』以外は、(たぶん)ほとんど読んでいる。豊浦の筆名で書かれた『硬派と宿命』という本は手に入らなくて読んでいないけど。一番好きなのは『猛き箱船』で、次が『山猫の夏』(これは最初に読んだから、というのもある)、そして『砂のクロニクル』ですね。ああ、なんか月並だな。船戸についてはDu Yuanさんのこのページが詳しい。
久しぶりにNIFTYのバイオフォーラムを覗いたら、『絶対音感』の最相葉月さんが発言していた。花の色について取材するための情報集めとのこと。また面白そうなテーマを見つけてきますね、この方。


1998.04.16
『セックスの発明 ―性差の観念史と解剖学のアポリア―』(トマス・ラカー、工作舎)は、帯によると「S・J・グールド絶賛!」だそうです。古代ギリシア以来の「ワンセックス・モデル」から、我々の時代に優勢であるところの「二つのセックス」モデルへの転換を描いた本。でも当分、読めそうもないな。


1998.04.15
船戸与一の新刊がでるのか(まだ見かけてないけど)。読みたい本がたまる一方だなー(慢性的)。『東大オタキングゼミ』(岡田斗司夫)なんて買っている場合じゃないよな。
たまっている本:
『無脊椎動物の驚異』
『性体験』
『絶対音感』
どれも最初の方を読みかじっているんだけど、どれも面白い。


1998.04.14
グイン・サーガ60巻『ガルムの報酬』(栗本薫)読了。予想通りの展開。
『COMIC P』という雑誌を買う。まあどうということはないのだけど、一言だけ。高口里純って、最近こういう絵を描いてるんですね。絵見ても誰が描いてるのか分からなかった。
唐沢なをき『怪奇版画男』購入。すごい、奥づけまで版画(笑)。さすがにバーコードは版画じゃないけど :-)。


1998.04.13
グインの新刊、今朝出てました。60巻『ガルムの報酬』
藤本由香里『私の居場所はどこにあるの?―少女マンガが映す心のかたち―』購入。藤本氏は『コミュニケーション不全症候群』や『男流文学論』を手がけた編集者だとのこと。
『絶対音感』(最相葉月)購入。3月に出ていたはずだけど、大学の本屋では見かけなかった本。面白そう。1ヵ月で3刷だから、売れているんでしょうね。


1998.04.12
引っ越しのためにひたすら本を段ボールに詰めてるんだけど、なかなか減らない。
グイン・サーガの新刊が出てるかな、と思って本屋に行くが、入荷していない。
森博嗣の新刊『今はもうない』は、街中どこに行っても無い。結局、西条では手に入らず、広島か岡山で買うことになるのかな(よくあるパターン)。森博嗣や小野不由美レベルの人気作家でも新刊が手に入らないというのは、なんかなー、と思ってしまう。ほんの1、2冊だけ入ってすぐ売れちゃってるんでしょうね、きっと。街の大きな書店で平積みになっているやつを、少しくらい回してくれても良いのに。


1998.04.09
『文藝』夏季号を購入。「14歳の中学生に『なぜ人を殺してはいけないの?』ときかれたらあなたは何と答えますか」というアンケートに、70人くらいの人が答えてる。印象に残った回答は、島田雅彦と中島義道のもの。「君は何人くらいに『死んじゃえ』って思われてるのかな?」(島田)とか、「もしきみが真剣に問いを発していないなら、きみはズルイ答えを出す大人に劣らずズルイんだ」(中島)とか。正面から答えてはいないんだけど、僕がこういう質問をするガキだったら、こういうこたえに、一番ぐっとくるだろうな。
文庫化された『終わりなき日常を生きろ』(宮台真司)を買う。『サブカルチャー神話解体』も読みたいけど、時間がないなあ。


1998.04.08
いよいよ新学期。忙しい。
今年は実験委員といって、「生物学実験」という授業の世話をする役職が回ってきたんだけど、この授業、半期で400人近く、年間で700人くらい?の学生に実習をさせるので、関係する教官やTAの数も多く、準備や調整が大変なんです。こういう仕事が入ると自分の実験も長びくし、というわけで本を読んでいる余裕はあまりないです、寝る前に『塗仏』を読むくらいで。


1998.04.07
もう発売になっているはずの森博嗣の新刊が手に入らない。まだ『塗仏』読んでる途中だから良いけど。
『男は世界を救えるか』(井上章一&森岡正博)はあまり面白くないので、拾い読みだけしてやめる。「知の格闘技」とか言いつつ、なんか二人でじゃれあって喜んでいる感じがして、気持ち悪いというか (^_^;…。


1998.04.06
近々引っ越しするので、本を箱に詰めているんだけど、1箱につめられる数って案外少ない。いらないマンガは売っちゃおうかなー、とも思うんだけど、売る本を選っていると時間かかりそうだし…。
『クローン羊ドリー』読了。おすすめ。


1998.04.04
花見。昼間からアルコール飲んで、そのあと山に登ったら、頭が痛くなった。うー。
昨夜は岩明均『七夕の国』2巻を買う。この作品が『寄生獣』以上の作品になるかというと(今のところ)ちょっと疑問なんだけど、それなりに面白い。その他、古本屋で内田春菊を2冊買う。


1998.04.03
青土社の新刊『人体の分子の驚異』がようやく棚に並んだけど、こちらは買わず。
買おうかどうか迷っていた作品社のヘーゲル『精神現象学』を買う。『新しいヘーゲル』で「ヘーゲルは難しくない」と書いていた長谷川宏氏の訳。帯には「哲学書の概念を覆す感動の新訳」とある。さて、どこまで読めるかな。


1998.04.02
青土社の新刊『無脊椎動物の驚異』(リチャード・コニフ)がようやく棚に並んだので購入。他に、この辺でも話題になった『性体験』(ナオミ・ウルフ)を購入。


1998.04.01
新学期の準備やら何やらで、だんだん忙しくなってくる…。
生協に注文しておいた『岩波講座現代社会学11・ジェンダーの社会学』『男は世界を救えるか』(井上章一&森岡正博)が届いたので購入。後者は森岡氏のページで紹介されていて興味をもった対談本。


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