広島大学総合科学部 超伝導物性研究室 本文へジャンプ


広島大学
総合科学部
物性科学授業科目群

大学院先進理工系科学研究科
理工学融合P(総合物理分野)

超伝導物性研究室



〒739-8521
広島県東広島市鏡山1-7-1 
総合科学部地区
研究棟B213号室(浴野)
研究棟B203号室(杉本)




超伝導物性研究室の概要

 超伝導物性研究室では、文字通り、超伝導物質の基本的な性質を調べています。
「超伝導」とは、簡単に述べると電気抵抗なしで電気が流れる現象です。下の図のように、超伝導物質では、ある温度以下に冷却すると電気抵抗が急激に下がります。


高温超伝導体の抵抗-温度特性(YBCO)


 この抵抗が"ストン"と下がる温度は超伝導臨界温度(Tc)といって、超伝導体としての性質をもたせるぎりぎりの温度です。従って、この温度が高ければ、ひいては室温近くになれば、冷却をすることなしに、リニアモーターカーや、病院等のMRIに使用されている“超伝導磁石”、携帯電話などの移動通信に用いられる高周波の微弱な電磁波を受信する“ミキサー”、非常に高感度な磁気センサー“SQUID”等、様々な分野での実用化が期待されています。また下の写真のように、超伝導体には強い磁場中で浮上する性質を持っています。(マイスナー効果あるいはピン止め効果)


浮上する高温超伝導体(YBCO)

 しかしながら、現在その臨界温度は、Tc=165K (マイナス100℃前後、ただし高圧下)まで上がっていますが、室温までは到達していません。この"Tc"が数十Kの超伝導物質であれば、多体効果をとりいれた量子力学を用いて説明がされていますが(BCS理論)、80年代後半に発見された上記のような最高のTcをもつ高温超伝導体では、未だその発現メカニズムが明確に分かっていません。

 我々の研究室では、この中でも銅酸化物でできた高温超伝導体を中心として、様々な関連した性質を持つ興味深い物質を調べています。その性質を調べる手法として、主に“トンネル効果”と呼ばれる現象を利用して行っています。

トンネル効果とトンネル分光

 トンネル効果とは、二つの物質をナノメートル(10億分の1メートル)程度に近づけることにより、その物質の間を大きな電気的な“壁”があるにもかかわらず、電子がすり抜けて微弱な電流が流れる現象です。このトンネル効果も量子効果の代表的な現象です。このようなトンネルの障壁を何らかの形で人工的に形成させ、その両端の電圧を変化させることにより、どのエネルギー準位(エネルギーの視点から見た電子の居場所)に、どのくらいの電子がつまっているかを知ることができます。これにより超伝導を発現させるメカニズムを知る手がかりをつかむことができるのです。


トンネル効果の概念図

主な研究テーマ

高温超伝導体及び新奇な超伝導体におけるのトンネル接合の研究
 液体窒素温度(77K)以下の低温で超伝導結晶を割ることにより (低温裂開法)、先のような超伝導−絶縁体(壁)−超伝導のトンネル接合を形成することができます。この方法では、多結晶体、単結晶、薄膜などあらゆる形態の固体物質に適用することができるので、新しく合成された多結晶体などの性質も知ることができます。下の図はトンネルスペクトルの概念図です。横軸がエネルギーレベル、縦軸が電子密度に相当します。多数のカーブは、様々な温度でのスペクトルを表しており、上にいくほど温度が高い状態のものです。超伝導を示すこぶ状のピークである“超伝導ギャップ”が温度が上昇するにつれ消失していく様子がよくわかります。

トンネルスペクトルの概念図

走査トンネル顕微鏡による超伝導体の観測
 走査トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscopy, STM)は、金属の探針と観測試料をナノメートルスケールで走査(なぞる)ことにより、原子ひとつひとつの直上でトンネル電流を検知することができ、超伝導体などの単結晶の原子配列や、トンネル分光スペクトルを捉えることができます。


STMのしくみ

下の図は、それぞれBi系高温超伝導体と、高配向性グラファイト(HOPG)のSTM画像です。超伝導体の原子配列や、グラファイトのハニカムネットワークがみてとれます。


Bi系超伝導体のSTM像


グラファイトのSTM像


トップページに戻る