非中性プラズマ
ペニングトラップ (Penning trap)
単一荷電粒子は静磁場を用いて径方向に、静電場を使って軸方向に閉じ込めることができます。その静電ポテンシャルが真空中のラプラス方程式の解の2次の項だけで表される時(しばしば、ハーモニックポテンシャルと呼ばれる)、この粒子閉じ込め装置はペニングトラップと呼ばれ、電子の g-factor や荷電粒子の比電荷の精密測定等に使われます。
マルンバーグトラップ (Malmberg trap)
マルンバーグトラップは大量の荷電粒子を閉じ込めるために開発されました。軸方向閉じ込めの静電ポテンシャルはペニングトラップと異なり真空中のラプラス方程式の解の2次の項だけで表されるとは限りません。同一の電荷を持った粒子が大量に存在するため、これらは非中性プラズマとして特徴的な性質を示すようになります。理論的には下図に示すような剛体回転平衡状態で閉じ込められているため、非常に長い閉じ込め時間を実現することができ、平衡状態にあるプラズマの様々な特性(拡散、熱流、衝突、等)を明らかにすることができます。
剛体回転平衡では密度一定の非中性プラズマは回転対称軸の周りを一定の角速度 \omega_r で回転しています。横軸にプラズマ密度、縦軸に回転周波数をとると下図のようになり、磁場の強さが一定のとき剛体回転平衡状態には最大密度 n_B (Brilloin density limit) が存在するのが特徴です。
京都では、非中性電子プラズマ柱における非線形静電波振動について調べました。 (詳細).
多重電極トラップ (Multi-Ring Electrode trap)
大量 (>10^8) の同一荷電粒子をハーモニックポテンシャルに閉じ込める必要があるときは下図にあるような多重電極トラップが実用的な閉じ込め装置となります。ハーモニックポテンシャルに閉じ込められた回転楕円体非中性プラズマは非破壊測定が可能となります。1次の調和振動をタンク回路を用いて測定することにより粒子数を求めることができますし、2次の静電波振動を測定することにより、密度と温度の情報を得ることができます。この多重電極トラップは高密度の電子プラズマを大容積に閉じ込めることができることもあり、高エネルギー反陽子の電子冷却に非常に適したものとなっています。(詳細).
参考文献
D.Wineland, P.Ekstrom, and H.G.Dehmelt, Phys.Rev.Lett. 31 (1973) 1279
J.H.Malmberg and J.S.deGrassie, Phys.Rev.Lett. 35 (1975) 577
H.Higaki and A.Mohri, Jpn. J. Appl. Phys. 36 Pt.1 (1997) 5300
"The Physics of Non-neutral Plasmas", R.C.Davidson, Addison-Weseley, Redwood City, 1991
Back to the top