本講座では、様々なストレスに応答して細胞内で産生されるストレス応答性分子(ストレス分子)に着目して研究を行っています。ストレス分子とは、低酸素状態、酸化ストレス、heat shock、変異タンパク質の発現、虚血状態、カルシウムイオン濃度の変動、pHの変動のような細胞内外からのストレスによって産生される一群の物質のことです。これらは、神経細胞の樹状突起や軸索のような細胞局所における細胞応答あるいは細胞全体の恒常性に影響を及ぼし、細胞間シグナル伝達の異常や細胞内小器官の機能障害を引き起こすことで、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患をはじめとする様々な疾患の重要な発症要因となることが明らかになっています。しかしながら、ストレス分子が発症および増悪の要因となっている各種疾患の診断法あるいは治療薬開発には未だ至っていません。
本講座では、細胞内外からのストレス依存的に細胞が産生するこれらストレス分子を網羅的に探索しています。そして得られたストレス分子の産生と、神経細胞の樹状突起や軸索における突起の伸長や分岐、シナプス形成、神経細胞間の情報伝達などとの関連を解明することを目指しています。同時に、ストレス分子の生体内における特性および動態を明らかにして、その生理活性や細胞傷害性を解析します。そしてストレス分子の産生と疾患の発症メカニズムとの関連を明らかにするための研究を行っています。その結果得られた情報をもとに疾患診断法や治療法の確立へとつなげていきます。