研究内容

我々の研究グループは、抗生物質など多種多様な二次代謝産物を生産する放線菌に注目して研究しています。特にStreptomyces属放線菌は、既知抗生物質の7割程度を生産しており、医薬品開発のシーズとして利用されております。また、そのゲノムは厳格生物であるにも関わらず線状構造であり、さらにカビに似た複雑な形態分化を呈します。我々は放線菌が生産する二次代謝産物の生合成制御機構、さらにはゲノム構造および形態分化を含めた包括的・統合的な研究展開をしております。また我々は、様々な微生物からの生理活性物質の単離・構造決定、さらには化学合成・酵素工学による生理活性物質の誘導体化も展開しております。以下に研究テーマを記載します。


(1) 二次代謝産物の生合成マシナリー(設計図)解析および複雑骨格機能分子の生合成リデザイン
 二次代謝産物は、脂肪酸や糖質、アミノ酸などを出発基質として、酵素(タンパク質)の多段階反応によって生合成されます。その酵素は、セントラルドグマに基づくと遺伝子によってコードされています。すなわち、二次代謝産物は遺伝子によって支配されていると言っても過言ではありません。言い換えると、遺伝子改変により二次代謝産物の化学構造を変えることが出来ます。特異な骨格形成を司る二次代謝産物生合成マシナリー(設計図)を理解し、合理的に改変することで「非天然型」生理活性物質創成の研究も盛んに展開しております

(2) 二次代謝生産におけるシグナル分子制御カスケードの解析
  Streptomyces属放線菌は、シグナル分子を鍵物質とした二次代謝生合成制御カスケードを有しており、二次代謝のオンオフが厳密にコントロールされています。我々はStreptomyces rocheiにおけるポリケチド抗生物質ランカサイジンランカマイシンの生合成遺伝子および制御遺伝子群が線状プラスミドpSLA2-Lにあることを明らかにし、その生合成制御カスケードを明らかにしてきました。また、シグナル分子SRBsは、従来の構造と異なるブテノライド型であることも明らかにしました。現在は、制御カスケードに関わる活性化因子、抑制遺伝子に注目した発酵生産性の向上や新規化合物生産への試みなどを行なっています。

(3) 代謝経路の改変による休眠二次代謝の活性化(ゲノムマイニング)
 放線菌は1株あたり30種類以上の二次代謝産物生合成遺伝子群を有していますが、通常培養で見出されるのは数種類(1-2割程度)であり、8-9割の二次代謝産物生産は「休眠状態にある」といえます。有用二次代謝産物の獲得を目指し、休眠二次代謝の活性化の試み、いわゆる「ゲノムマイニング」が世界中で盛んに行われています。我々は、代謝経路改変によるゲノムマイニングなどを精力的に研究展開しています。

(4) ゲノム構造、二次代謝、誘導生産、形態分化の統合的解明
 Streptomyces属放線菌は、多種多様な二次代謝産物生産能力に加え、線状ゲノム構造・形態分化にも特徴を有しています。我々は放線菌ゲノム情報に基づいたゲノム構造、二次代謝、誘導生産、形態分化の統合的解明を目指し、比較ゲノム解析や多面的遺伝子変異を行なっています。

(5) 生理活性天然物の単離・構造決定・生物活性
 二次代謝産物の特異な化学構造や顕著な生理活性は、我々の興味を引いてやみません!放線菌・糸状菌など様々な微生物ライブラリーに注目し、生理活性天然物の単離・構造決定・生物活性を展開しています。

(6) その他(異分野融合による高機能物質の創成と機能解明)
 結晶化学・計算化学・材料化学の研究者の方々と積極的な共同研究を遂行し、化学合成・酵素工学を組み合わせた高機能生理活性物質の創成と機能解明を展開しています。


 より詳細に知りたい方は、荒川までメールいただけたらと思います。オンライン(Zoom, Teamsなど)での説明も可能です。

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