bioRxivで”STREAMING-tag”プレプリントを公開しました!

  • 2022年1月8日
  • 2022年1月13日
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我々の”STREAMING-tag”プレプリント論文がbioRxivで公開されました!

https://bit.ly/3JODuoX


本研究では、STREAMING-tagと名付けた新規技術を利用して、生きたマウスES細胞内における転写制御因子と転写の時空間的な関係を明らかにしました。

転写はONとOFF状態が動的に切り替わりますが、その制御機構は完全には理解されていません。Mediator、BRD4、非リン酸化型RNAポリメラーゼII(RNAPII)は、ON状態の遺伝子領域周辺にクラスターを形成することが示されています。

ON状態では、MS2システムで遺伝子座を可視化することができますが、OFF状態では、そうはいきません。転写バーストの制御機構を理解するためには、ON状態だけでなく、OFF状態でも何が起こっているのかを理解する必要があります。

そこで、遺伝子機能への影響を最小限に抑えながら、転写開始点(TSS)近傍の遺伝子転写活性や細胞内局在を定量できる「STREAMING-tag」システムを確立しました。詳しくは論文をご覧ください!
https://bit.ly/3JODuoX

このシステムをマウスES細胞のNanogに適用したところ、RNAPIIの最大サブユニットであるRPB1とコアクチベーターのBRD4のクラスターが、転写ON状態でのみNanog TSS近傍に位置することがわかりました。

また、東京工業大学の木村宏研究室が開発した遺伝子コード型プローブ「mintbody」を用いて、RNAPIIのリン酸化フォーム(初期化複合体のSer5ph、伸長複合体のSer2ph)を可視化しました。

その結果、Nanog TSS領域は、Ser2リン酸化型 (転写伸長型)よりもSer5リン酸化型 (転写開始型)のRNAPIIのクラスターとより近接していることがわかりました。このことは、STREAMING-tagシステムがNanog TSS近傍領域を可視化できていることを強力に示唆しています。

RNAPIIやBRD4とは対照的に、MediatorサブユニットであるMED19とMED22クラスターは転写状態に関わらずTSS近傍に局在しており、BRD4と低リン酸化RNAPIIを含む新しい開始クラスター形成の足場として機能している可能性が示唆されました。

本研究では、STREAMING-tagシステムを利用して、転写活性と遺伝子近傍のタンパク質クラスターとの時空間的な関係を明らかにしました。この強力なシステムは、生細胞におけるダイナミックな転写制御を定量的に理解するために有用であると考えられます。

最後に、この研究に携わったすべての人に感謝致します。特に、この研究の原動力となった素晴らしい研究員の大石さんの努力に感謝したいと思います。

また、解析に貢献した大学院生の島田くん、新谷くん、大和田くんに感謝します。また、mintbodyを開発しただけでなく、思慮深い議論をして深い研究にしてくれた木村さんに、深く感謝致します!!!

Originally tweeted by Hiroshi Ochiai (@Hiro_Ochiai_En) on 2022年1月7日.