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最小軌道長と平均法線変化

曲面上の曲線を $\alpha(t)$ とすると、その曲線上の点 $p=\alpha(t_p)$$q=\alpha(t_q)$ の間のその曲線に沿った長さは、

\begin{displaymath}
s_{\alpha}(p,q) = \int_{t_p}^{t_q} \vert\alpha'(t)\vert dt
\end{displaymath} (379)

と書ける。従って、2点を結ぶ全ての軌道のうちのもっとも短い軌道の長さ(最短軌 道長) $d_S$ は、
\begin{displaymath}
d_S(p,q) = \mbox{min}_{\alpha} \ s_{\alpha}(p,q)
\end{displaymath} (380)

となる。もし、2点がジャンプエッジの反対側にある場合には、この最短軌道長は大 きくなると考えられる。また、これは、観測方向に依存しない量である。

今、考えているレンジデータは、離散的なデータであり、離散的な点 $(x,y)$ に対 する $z$軸の値のみが与えられている。従って、この離散的なデータから、上式 (8.32) に従って2点間の曲線の長さを求めなければならない。ここでは、曲線 $\alpha(t)$ $\alpha(t_i), t_p=t_0 < t_1 < \ldots < t_k < t_{k+1}=t_q$ の ように分割し、各区間を

\begin{displaymath}
\alpha(t)=(x(t_i)+a_i(t-t_i),y(t_i)+b_i(t-t_i),z(t_i)+c_i(t-t_i)),
\end{displaymath} (381)

のように線形近似する。ここで、 $a_i=\frac{x(t_{i+1})-x(t_i)}{t_{i+1}-t_i}$ である。$b_i$ および $c_i$ も同様に計算するものとする。

このとき、 $\alpha$$t$ に関する偏微分 $\alpha'(t)$ は、

\begin{displaymath}
\alpha'(t)=(a_i,b_i,c_i) \ \ \mbox{for} \ \ t_i < t < t_{i+1}
\end{displaymath} (382)

となる。

従って、点 $p$$q$ との間の曲線の長さは、

\begin{displaymath}
s_{\alpha}(p,q)= \sum_{i=0}^k \sqrt{a_i^2+b_i^2+c_i^2}
\end{displaymath} (383)

で近似できる。これは、曲線を折れ線近似してその長さを計算することに対応す る。

最短軌道長は、ジャンプエッジに対しては敏感であるが、ルーフエッジに対してはそ れほど敏感ではない。そこで、それを補うものとして、法線ベクトルの最短軌道に沿っ た平均的な変化の大きさ(平均法線変化)を考える。例えば、点 $p$ と点 $q$ の最 短軌道に沿った法線ベクトルの変化は、

\begin{displaymath}
d_A(p,q) = \frac{1}{(t_q-t_p)} \int_{t_p}^{t_q} \vert\cos^{-1}(<N(t_p),N(t)>)\vert dt
\end{displaymath} (384)

で測れる。ここで、 $N(t_p)$ は、点 $t_p$ での法線ベクトルである。

最短軌道に沿って法線ベクトルが変化しないならば、この平均法線変化 $d_A(p,q)$$0$ となる。もし、2点がルーフエッジの反対側にあるなら、この値は大きくな ることが期待できる。また、これは、観測方向に依存しない量である。上式 (8.37) の離散近似は、

\begin{displaymath}
d_A(p,q)= \frac{1}{k} \sum_{i=1}^{k} \vert\cos^{-1}(<N(t_0),N(t_i)>)\vert
\end{displaymath} (385)

で与えられる。



Takio Kurita 平成14年7月3日