上の娘が、なんやら深刻そうな顔をしておる。
こういうときに、話を聞いてやるのが親の役目だと思う。
そして、私はその信念のままに行動した。
上の娘の悩みは、意外にも自分自身のものではなく、下の娘、つまり本人からの間柄で言うと妹に関することだった。
上の娘は、妹の行く末を考えると不憫でならないという。
で、妹の、どの部分が、どのように、どのくらい不憫なのか聞いてみた。
すると、上の娘はぼくとつと、
「昨夜、妹が、真剣に調べ物をしているので、何を調べているのか気になり、問いただすと、
『世界最大のゴキブリ』
について調べていた」
と言う。
何が悪いんじゃ?
その通りのことをそのまま伝えてやると、「父親、大丈夫か?」と言った感じで、
「あのね、妹は中一女子なの。普通の中一女子は、世界最大のゴキブリには、まったく興味なんて持たないの。実際、私は中一のころはおろか、今まで一度さえ、世界最大のゴキブリの事なんか考えたことないし、調べようとも思わなかった。妹は、変わっている。このまま普通じゃない道に進んでしまうかも……」
と思い悩んでいたのである。
それは、仕方ないんだよ。だって、半分、父親の遺伝子が混ざっているんだから。私は、中一時代に、カッパやら、その他もろもろのしょうもないことを、全力でつぎ込んできたのだから。
で、下の娘の秘密、興味を知った私は、マレーシアで事故的に手に入れた、ゴキブリ(Rhabdoblatta属)の写真を彼女に見せてやることにした。まさか、ゴキブリのフォルダが使われる時があろうとは!!
で、下の娘はそれに、食いつくように見入る……わけでもなく、少し見た後、冷たく、
「私が求めているのは、こいつじゃないね」
と、胸に七つの傷を持つ男を捜す南斗水鳥拳のレイ、見たいの口ぶりで言うだけだった。
もっと、喜んでくれると思ったのに。
彼女が何を探しているのか、気になってしまった。
アディオス