シンガポール空港で12時間ですか…
旅程を組んだ時から知っておったし、それを受け入れての旅程であった。「12時間もあれば、シンガポール観光だってできるかもしれない」なんてのんきなことを考えていたのだが、インドネシア出国前日に激しくおなかを壊し、今はとても観光する気分なんかではないのである。
で、12時間シンガポール・チャンギ空港に缶詰になる覚悟を決めたのではあるものの、焦燥感・悲壮感と言ったものは全くない。なぜならば、私は生意気にも空港内のラウンジ利用の資格所有者なのである。さすが教授!さすが、HSC(ハイパーサイエンスクリエイター)!まぁ、ラウンジでゆっくりしてれば、12時間くらいすぐ経つに違いないと思っていたのである。
で、痛いお腹をさすりながら、インドネシアの空港で飛行機を待っている最中に大変なことに気が付いた。ラウンジの会員証を持ち忘れたのである。今までは空港ラウンジなんて使ったことがなく、まぁ宝の持ち腐れ状態で、持ち歩かなければならないほど大切なものという認識が全く欠けていたのである。私の会員証は機内預け荷物の中にあり、預け荷物とは福岡空港まで再開できない。
ああ、困った。人生に数度でしかないであろうラウンジを使うチャンスなのに、会員証を忘れては入れないとは…どうしてもあきらめることができない私は、機内に案内されてから、客室乗務員に事の顛末を説明し、荷物を取り戻せないか相談してみた。すると、「シンガポールの空港で、シンガポールエアラインのカウンターで聞いてみればよい」と以外にもポジティブな回答を得ることができたではないですか!「聞いてみるもんだなあ」と、涙ぐんでうれしんでいると彼は、「ただ、期待しないほうがいいよ。預けちまった荷物取り出すのは大変だからね」と忠告してくれた。どうやら彼は「上げてから落とすタイプの人」であったらしい。
で、シンガポール・チャンギ空港に着くや否や、言われた通りカウンターで窮状を相談すると、「わかりました。お取りいたしましょう。そのかわり、一度シンガポールに入国し、入国審査の後にあるバケージクレイムで荷物を受け取ってくださいね。荷物はロスタンファインドで受け取れます」とアレンジしてくれた。問題は何も無い。なにせ、私はもてあますほどの時間(12時間)を持っているのだから。
ロスタンファインドでは、荷物を紛失した先客のいかつく、大きなインド人系の輩が、やや心配そう、かついらいらした感じで、事務員の対応を受けていた。彼の対応に結構手間取っていたのだけれども、15分と待たずに私の順番がまわって来た(その間に順番抜かしをしようとしたうら美しい女性が現れたのだが、事務員は、あいつ(私)の方が先!と毅然とした態度で彼女を退け、「ああ、まともな人が相手をしてくれるのだなぁ」、と安心したのであった)。
で、彼女に事の顛末を知らせると、
「○○番カルーセルから荷物が出てくるけん、そこで荷物を取りんさいや。ほいでもって荷物とともに、ここに戻ってきんさいね。15分から20分くらいじゃけぇ、たいしたことないけぇ」
と指示を与えてくれた。
意外に早いじゃないの、と鼻歌を痛いながら、彼女の言う通りのカルーセルで待ってるんだけど、20分どころか、1時間たっても荷物が出てこない。「こりゃあまいったなぁ」、と思っていると、私の対応をしてくれた彼女もなかなか現れない私を気にしてくれたのだろう、何度も私のところに来て、
「いましがた電話し直したけぇ。荷物はもうすぐ来るさいね」
と励ましてくれる(こういう面倒見がいいというか、アフターケアを頼まなくてもしてくれる人は海外であまり見たことはありません)。まぁ、毎度、彼女のこの読みも大きく外れるのだが…。結局待つこと2時間で荷物と対面でき、無事会員証に再開できたのであった。
さて、私が手にした会員証は絶大なパワーを持っていた。なんと、とある日本食レストラン(の指定されたメニュー)が無料でいただけるのである(後で判明したのだが、決して”無料”ではない! 32アメリカドル、後からチャージされます)。私は、牛肉生姜焼き定食なるものをごちそうしていただいた。
その後、空港ラウンジに入ったのであるが、驚いたことにラウンジには3時間しか滞在できないという。12時間滞在し続ける当初の予定は端から破たんしていたのだ。が、「もう荷物の引き取りで3時間位経っちゃってるし、まぁ、ラウンジで3時間も潰せるならば」と、とあるラウンジに入った。
さて、このラウンジであるが、セルフサービスでビールやワイン、ウイスキーやらの各種お酒が飲めるだけでなく、ソバやパン系のスナック類が食べ放題であり、食事の方だけでもホテルの朝食ビュッフェくらいの勢いがある。ただ、先ほどの牛肉生姜焼き定食で完全に腹痛をぶり返した私は、もう何も食べる気がしないので、今回は、スナック、ドリンクはスキップだ。
スナック・ドリンクを愉しめないとしても、シャワー室もあるし、インターネットはつなぎ放題なので、まぁ、十二分に、いやそれ以上に空港ラウンジを3時間堪能することができたのであった。空港ラウンジさいこー!
ただ、一つだけ忠告することが許されるならば、
「鞄の中に大切なものを入れたまま預け荷物にするものではない!」
アディオス