ツメガエル胚を使った新しいトランスジェニックレポーター実験系と三次元イメージング解析系を開発しました。
進化発生ゲノミクス研究グループの大学院生の坂口裕介さんと井川が筆頭著者の論文がDevelopment Growth & Differentiation誌に掲載されました。ツメガエルは発生研究に重要なモデル動物です。しかし、その胚は卵黄を多量に含み不透明なため、蛍光タンパク質等を用いた3次元イメージング解析は、胚の表面構造や培養組織片、胚発生が終了した後の幼生(オタマジャクシ)に限られてきました。本研究ではこの問題を解決するため、まず熱耐性を持つヒト胎盤型アルカリホスファターゼ(PLAP)を組織特異的なプロモーターを用いて目的組織で発現させ、熱処理により内在のアルカリホスファターゼを失活させた後、アルカリホスファターゼの基質を反応させて目的組織を染色する方法を確立しました。次にこの方法で処理した胚の連続切片を自動撮影し、コンピューター上で標的組織の立体像を3次元構築することに成功しました(Correlative Light Microscopy and Block-face Imaging (CoMBI) method)。以上の「PLAP-CoMBI法」は、ツメガエル胚において、従来の蛍光タンパク質を用いる方法では成し得なかった3Dデジタルイメージングを可能にするものです。
(論文の裏話)
この研究のきっかけは私と荻野さんが着任直後に出席した研究会(第3回次世代両生類研究会 2017年8月24 – 25日開催)でCoMBIを使った研究 (Sutrisno et al. 2022) を目にしたことでした。私は血管まできれいに再構築された三次元画像にただただ圧倒されましたが、前任校でPLAPを使ったレポーター系を開発していた荻野さんは瞬時に、新しいことができると思いついたようでした。また、偶然にも私が趣味と実益(水槽の温度監視など)を兼ねてマイコンのプログラミングを始めていたので、CoMBIで用いる自動撮影装置のシステムはすぐに理解できました。そのため、広島に戻ってすぐにCoMBIの原著論文 (Tajika et al., 2017) を読んで独力で作り始め、三か月後の11月後半には完成させていました。その後、動物学会でCoMBI開発者の多鹿さんとの偶発的な出会いと交流をはさみつつ、時間はかかりましたが荻野先生が中心となってデータをまとめあげて今回の論文発表に至りました。
Sakagami, K., Igawa, T., Saikawa, K., Sakaguchi, Y., Hossain, N., Kato, C., Kinemori, K., Suzuki, N., Suzuki, M., Kawaguchi, A., Ochi, H., Tajika, Y., & Ogino, H. (2024). Development of a heat-stable alkaline phosphatase reporter system for cis-regulatory analysis and its application to 3D digital imaging of Xenopus embryonic tissues. Development, growth & differentiation, 66: 256-265. 10.1111/dgd.12919.