0-2.研究指導前の準備:教材・コミュニケーション

(1) 事前準備の重要性


 1) 重要性 始めが肝心!鉄は熱い内に打て。
 2) 必要性
  @滑り出しは難しい 研究の基礎ができていない人は基礎を身に着ける能力(学習能力)に乏しい
 ・研究の”必要性”・”重要性”を認識できない
 ・能力の”身に着け方”を知らない
  →説明してもなかなか理解してもらえない。
  →なかなか理解してもらえない相手には研究指導の初期段階用に十分な準備が必要。
  →重要性を納得してもらえるように重要と考える根拠を伝える。
  A今後の影響大 研究指導の初期段階の影響は大きい
中期段階・後期段階の理解度・研究の進展度に影響する。
そのため分岐点(Turning point, Junction)に成り得る。
 3) 進み方の場合分け
  @好循環 研究の基礎をしっかり学ぶ
失敗が続かない(簡単な失敗を防げる。失敗を分析できるようになる。)
→やる気が持続する。
→研究が進む
  A悪循環 研究の基礎をしっかり学ばない
失敗が続くようになる(改善なしに繰り返す)。
→やる気がなくなる。
→研究が進まない
  B理想的な展開
コミュニケーションを取る。
信頼関係を構築する(学生を大切にすることが重要)。
→プロジェクトを説明する。
→修了に必要な達成度・心構え・自立が必要なことを伝える。
→教材を渡す。予習・復習を促す。
→研究の基礎をしっかり学ぶ。
  (考えてない場合には、二回目の実験で考えていないことを理解させる)
→失敗が続かない(簡単な失敗を防げる。失敗を分析できるようになる。)
→やる気が持続する。
→研究が進む。
→一通り学術論文の発表までやってみる。
→自分の考えた研究テーマで研究してみる。

(2) プロジェクト設計


 1) プロジェクト プロジェクト設計、プレゼン資料
  @目的 ・プロジェクトの全体像を説明するため。
重要性を説明するため。
 口頭で伝えるだけでは学生は理解しきれない。
 重要性を理解できると研究に打ち込んでも良いなと思えるようになる。
  (重要でもないことに自分の時間を使おうとは思わない)
  A必要性 学生はどのようなことを研究するのかを知りたがっている。
  B内容 研究費申請書を手本にする。
 2) 教科書 教科書を選んでおく。
マルチアンビル実験は、
 ・Keppler and Frost (2005)(バイロイト大学なので)。
 ・Ito (2007)。
 3) 学術論文 お手本になる学術論文・参考論文を選んでおく。
  @選定基準 しっかりした内容のもの。
 判断基準が書いてあるもの。
読みやすい物。
  A例 硬度測定は、Karato et al. (1990)、Evans & Goetze (1979)。
 4) 研究指導内容の整理 指導教員として伝えなくてはいけないことと、他の人に任せても良いことを切り分ける。
 5) 研究活動のプロセス分け インプット(Input)
 データ取得
アウトプット(Output)
 データ評価

(3) テキスト、マニュアル、ウェブサイト


 1) 方針
  @方針 マニュアルの改善・更新。
少しずつ付け足していく。ステップ・バイ・ステップ。
(余裕ができてきたら)気を付けるべきポイントも書く。
印刷物に書いておいて指指す。
(言葉(英語)では伝わりづらい)
 2) 必要性
   @一から (そもそも)相手が概念・単語を知らない・聞いたこともない。
   A英語 相手が英語に慣れていない(初めて長期で国外に出てきたなど)
 ・専門用語の英語単語を知らない
   B対策 単語を言っても通じる訳がない(予習を期待してはいけない)。
 →これは○○と呼びますと言う必要がある。
 →スペルを見せる必要がある。
 3) 利点
   その場 ・相手が理解しやすい
・説明に漏れがなくなる(説明が漏れても補助してくれる)
  説明を忘れることがある。
・お互いに疲れない
  言葉(英語)だけで同じ内容を説明するととても疲れる。
  伝わらないと余計に疲れる。
・説明が速く終わる(同じ時間で多く説明できる)。
複数人を対象にした説明がしやすい
   事前 予習(自学・自習)を促す。
 →教材に書いてあることを調べて理解することとの宿題を出す。
 →意識の高い学生は現場での指導の前に「読んできます」と言う。◎。
   事後 【相手】
 復習(自学・自習)を促す。
  →教材に書いてあることを調べて理解することとの宿題を出す。
  →意識の高い学生は「後で復習しておきます」と言う。◎。
 レポート作成の拠り所となる。
【自分】
 質問に応じて少しづつ内容を付け足す。
 4) ウェブサイト 復習・自己学習に役立つ。
 学生がセメスターレポート・学術論文を書く際に拠り所になる。
進学先・受け入れ先
 大学院の進学先、博士研究員の勤務先・受け入れ先を選ぶ際の資料になる。
自分の研究の情報発信にもなる。
 5) 参考図書 任せる技術(小倉広、武器を与える、196-201ページ)

(4) コミュニケーション


 1) 目的  
  @環境への慣れ 初めは緊張している。
 【参考図書】
  ・自分の頭で考えて動く部下の育て方(篠原信、最初の1か月は「憶える」ではなく「慣れ」、138-139ページ)
  A信頼関係の構築  【参考図書】
  ・自分の頭で考えて動く部下の育て方(篠原信、上司は話ベタで構わない、140-147ページ)
  ・任せる技術(小倉広、無理難題が言える関係をつくる、100-106ページ)
 2) 前提 学生の中には教員を怖がっている人がいる。
 3) やること
  @挨拶 自分から挨拶する。
学生・博士研究員(ポスドク)さんが挨拶するのを待たない。
  A自己紹介    初めて会ったら自己紹介する。
  B歓迎会 早めに歓迎会を開く(歓迎会を通して他の人とも仲良くなる)。
訪問者・短期滞在者の歓迎会・送別会に参加する・開く(他の人とも仲良くなる)。
  C食事会 飲み会・バーベキューなどをする。
金曜日の夕方にビールを飲んで帰る。今週もお疲れさまでした〜。
 4) 話のネタ
  @出身 地図があると便利。
日本の文化。
  A住んだことがある街 宇和島市、松山市、仙台市(宮城県)、コネチカット州(アメリカ合衆国)、バイロイト(ドイツ)。
  B行ったことがある国・街 武漢に行ったことがある。
ハンブルク(DESY)、グルノーブル(ESRF)。
   スポーツ 野球、大相撲、サッカー
   漢字・漢文 中国人の人には印象がいい。話のネタになる。漢文を中学・高校で習うなど。
ためになる漢文を教えておく。