2−3.学生さんの初めての実験・試料分析

(1) 基本


 1) 責任 自分の研究・仕事に責任を持つべきであることを言う。
 (You should be responsible for your research.)
 2) 掃除
  @よくある事例 掃除をしない。使い方がキタナイ
  A対策 自動工作機(Modeling Machine)や旋盤(Lathe)の使用記録をノートに残すようにする。
どこまで掃除をしないといけないかを明らかに説明する。
セラミクスや金属の粉(Powder)・破片(Fragment)は機器・卓上にないようにする。
 3) 片付け
  @よくある事例 使ったものは所定の場所に戻す(Return it after use)。
使ったままにしない。
ケーブル。
 4) 専門用語
  @よくある事例 専門用語を覚えていないために会話が成り立たない。
  A対策 専門用語を覚えるように言う。

(2) 高圧実験


 1) パーツ製作
  @よくある事例 (うまく)出来ませんと言い出す。
  A自分の心構え 改善の仕方(完成度の高め方)を教えるのが仕事。
  B原因 最初から完全なものは作れない。
 →練習・改善が必要である。
  C対策 練習をするように言う。
自分の手を自分で鍛えるように(Train your hands (by yourself))
  D具体策 必要なパーツの3倍パーツを作る。
→その中でどのようにバーツ製作方法を改善するかを考える
→実行する
→評価する
インプット−アウトプット(行動とその結果)の関係をよく考える。
出来たパーツの評価を伝える。 →改善の必要性、方向性が分かる。
良く出来ている。思ったよりも良い。
ダメ。
  E周りの人のやり方を
   取り入れる
周りの人にコツを聞いてみる。
見学させてもらう。
良いかどうかの判断基準を聞く。
 2) セル組み
マニュアルに基づいて説明する。
実験失敗に繋がる注意点強調する。
思い込みが間違いであったことを指摘する。
 3) 実験
  @方針 実験失敗に繋がる注意点強調する。
ケーブルを引っ張らないように気をつける。
  A質問 目標温度(電力)保持中に以下のことを聞いてみる。
 ・周りの人に注意深いと言われるか。
  【模範解答】
   (研究・仕事では少なくとも)注意深いと言われる。
 ・カプセル作り、試料詰めは難しくなかったか。
  【模範解答】
   気を付けつつ三回作り直して、作り直すごとに出来あがったものの形が良くなった。
 ・実験セルアセンブリーを組んだ後に電極は落ちなかったか。
  【模範解答】
   注意深く実験セルアセンブリーを動かして確認し、電極が外側のパーツから取れずに落ちなかった。
 ・他に実験セルアセンブリーを組んだときに気を付けた点は何か。
失敗したら励ます(経験を得ることが重要)

(3) 試料回収・観察


 1) 試料回収 実体鏡の周りを片付け、ごみがないように掃除する。
回収セルアセンブリー・試料を実体鏡下で注意深く観察する。
回収セルアセンブリー・試料の写真を撮る。論より証拠。
 (実体鏡の接眼レンズを通してデジタルカメラ・スマートフォンで撮る)
 (写真からだけでも有用な情報を得ることができる)
 2) 試料・セルアセンブリー
   断面観察
回収試料をエポキシ樹脂に埋めて試料中心を通る断面を出す。
試料断面を研磨する。
実体鏡下で試料中にの違いがないかを観察する。
 (無色(Mg2SiO4)や無色に近い試料でも白く見えるかどうかで粒径の違いが分かる)
 ((Mg0.9,Fe0.1)2SiO4ではウォズリアイトになると濃い緑青になる)
 ((Mg0.9,Fe0.1)2SiO4ではリングウッダイトになると高酸素分圧下で濃い青になる)
研磨した試料断面の写真を撮る。
 (光の反射を抑えたい場合には、エタノール・水につける)

(4) 試料分析の準備


 1) 情報収集
  @学術論文 研究テーマに近い学術論文を読む。
「何」がデータとして必要かを見つける。
 ・測定条件の項目とその値をまとめる。
   ・走査型電子顕微鏡:検出器、加速電圧、電流値、倍率
 ・試料分析の際に注意したことをまとめる。
データが根拠として「どのように」使われているかを見つける。
  A教科書 身の回りの人が教科書をもっていないか聞いてみる。
図書館に行ってみる。
  Bウェブサイト キーワード検索する。
  Cマニュアル 簡易マニュアルを探す。簡易マニュアルを読む。簡易マニュアルの理解に努める。
マニュアルを探す。マニュアルを読む。マニュアルの理解に努める。
 2) より良い測定のために 分析前に当たりを付ける。
 測定に必要な精度はどのくらいか。
 予想される誤差を最終的な物性値に伝播させたときにどうなるか。
より良い測定をするためのポイントは何かを考える。
必要なデータの質を考える。
データの質の上げ方を考える。

(5) 相同定


 1) 顕微ラマン分光法 試料径・厚さが1 mm 以下の試料の場合。
試料の微小領域ごとの相を同定することができる。
回収試料が相図の二領域にまたがる場合に見つけやすい。
 2) 結果の解釈 回収試料が相図の二領域にまたがる場合には(測温ができていれば)圧力を決めることができる。
圧力(プレス荷重)が一定の場合で測温していない場合には温度を決定することができる。
相境界に温度依存性がある場合には試料中の温度分布(温度勾配の大きさ)を評価することができる。
 (ヒーター付近に高温相が現れるはずである)
ある一定圧力における相転移ループの温度幅と相図の二領域にまたがる試料の領域の関係を調べる。
 (試料全体で相転移ループ内の相が見られる場合、試料中の温度勾配は相転移ループの温度幅よりも小さい)